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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

ベルエポック18-蓄音機の発明

2023.02.07 11:29

1877年12月7日、トーマス・エジソンが蓄音機による音の録音と再生に成功した、このときから「複製芸術」の歴史が始まった。「複製芸術」を論文にしたのは、1936年のワルター・ベンヤミンである。ベンヤミンは、芸術を儀式との関連に注目し、複製芸術は、芸術の儀式への寄生的依存から解き放ったとしている。

これに対して1947年テオドール・アドルノは、アメリカの文化に注目し、「文化産業」という言葉を生む。アドルノによれば、複製芸術とは解放ではなく、むしろ権力の道具であって、大衆に娯楽を与えてそれに熱中させて、批判的な観点を忘れさせると警告している。

現代的エンタメを見ても、ライブなどはまるで儀式である。漫画「聖おにいさん」の中でも、ライブ会場に紛れ込んだイエスとブッダが、新しい宗教だと勘違いしているのは的を得ている。ライブの複製としても、その儀式を同じようにお茶の間で体験するのだから、ベニヤミンは楽観的すぎである。

19世紀に出たサラ・ベルナールのようなスターは、20世紀になって複製芸術に乗って一気に世界的となり、セレブとなった。もはや家庭やPCなどで大衆は夢に酔いしれて現実を忘れ、あこがれとなる。これを新しい宗教といわずして何というだろうか。