JP0-5 3つの根本原則、逐条解説②c
2つ目の「根本原則」についての解説をさらに続けます。
②一流のJudgeではなく、超一流のJudgeを育成する(その3)
「チーム力を押し上げるのは〝心根の良い人間〟」「心根の悪い人間がチームをダメにする」--。
箱根駅伝で常に優勝候補に挙げられる青山学院大学の原晋監督の信念として伝えられるこの言葉はTICA Asia East RegionのJudge育成においても極めて重要です。
「心根の良いJudge」を育成してこそTICA全体、AE Regionの団体としての信用、信頼、評価が押し上げられるのであって、単にスキルだけ秀でた「心根の悪いJudge」を養成しまってはTICA全体、AE Regionの団体としての信用、信頼、評価をダメにしてしまいます。
原晋監督が著した「フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉」(アスコム刊)によると、監督就任3年目、「育成だけでなく、スカウトの段階から人間性を重視すべきだと思い知らされた」と言います。
「1年目、2年目と思うような成績を残せなかった私は、契約最終年の3年目、人間性を度外視してタイムが良いだけの選手をスカウトすることに決め」たものの、「乱れた生活でチーム内をかき回し」「陸上部は空中分解の危機に陥った」そうです。
こうした経験から「『表現力豊かで、勉強もしっかり取り組める心根のいい選手』という青学陸上競技部のスカウトの基準を確立できた」と述懐しています。
では、「心根」とは何なのでしょうか。
辞書的には「心の奥底。本当の心。真情。本性」を意味しますが、原監督は「自分のことしか考えられない人のことを私は『心根の悪いヤツ』と表現します」と書いています。
TICA全体、Region全体、人間だけでなく猫のことも含めて全体を考えられないようでは「心根の良い」Judgeとは言えず、自分のことだけ、自分の所属クラブ員だけ、自分の懇意にするブリーダー/オーナーだけのことしか考えられないようでは「心根の悪い」Judgeということになります。
原監督はこうした「心根の良い」選手について、次のように語っています。
「高校生の頃は少々タイムが悪くても、自分でちゃんと考えてコツコツと練習に取り組み、自分の言葉を大切にする子のほうが、大学4年間で圧倒的に伸びるということを知るきっかけになりました」「短期的な伸びは小さくても、長い目で見ると組織全体の力を伸ばすことにつながるのです」--。
Judge育成も同じです。
Standardsの知識や解釈、ハンドリングスキルなどはある程度、後から伸ばしたり矯正したりすることはできますが、「心根」はそうはいきません。
そもそもTICAのJudging Programは前者に重点を置くProgramであり、Programに入るメンバーの「心根」を問う仕組みも手続きもありません。
超一流のJudgeを育成するためには「心根」を厳しく問わねばならず、「心根」を厳しく問うた上でJudgeを育成することで、TICA全体、AE Regionの団体としての信用、信頼、評価につながるのです。