カジカとゴギ
2023.02.09 23:02
"カサゴ"の由来の記事でも触れたが(詳しくは"カサゴ"をご覧下さい)、「痘痕(あばた)」もしくはその地方名を語源とする魚は、カサゴだけではない。
カサゴと同じような…頭部に小さなトゲやコブがたくさんあったり斑状の模様によってデコボコガサガサマダラ顔をしている川の魚を「痘痕魚」にしている例があるようだ。
カジカはカジカ科カジカ属の淡水魚で、タイプの違いがある。
大卵型は綺麗な水質の河川上流部に住む河川陸封型。中卵型は北海道と本州日本海側に生息する川と海を行き来する両側回遊性のタイプ。小卵型は本州四国の太平洋側の河川で両側回遊性を持つ。琵琶湖で湖沼陸封型であるウツセミカジカは小卵型と同種であるとされる。
非常に美味であるとされて郷土料理が多い。
別名として有名なのは「ゴリ」である。
そして「カブ」など。またハゼ科のドンコと混同された非常に多くの地方名が存在する。

さて魚のカジカの語源として"カエルのカジカ"と見た目が似ていて混同したという俗説がある。
カエルの方は「河鹿」と書いて、とても特徴的な鳴き声から鹿に喩えた名前だが、カエルとサカナが似ているので取り違えてしまったという説だ。
『日本釈名』に「河鹿なり、山河にある魚也、夜なきて其音たかし」とあるのが根拠だ。
いやそんな…いくらなんでも蛙と魚を見間違えるかな…確かに模様や色は似ているかもだが…しかし魚が鳴くのはあり得ない。
日本釈名が単純に文字を間違えただけのような気がする。

カジカの語源は、その地方名ゴリやカブから推察するに、やはり痘痕の地方名「カジ・ガジ・ガシ」に由来したと思われる。
カサゴの関西地方名「ガシラ」と同じである。
「ゴ・カブ」も痘痕の地方名である。
「あばたの川魚」という意味でカジカであり、ゴリ・カブだろう。
「ゴリ押し」という言回しはよく知られていると思う。
語源は「魚の"ゴリ"が細い川を大群で遡上する時、押し合いへし合い我先にと進む様」だそうだ。
または川の石で堰を作り水口に籠罠を仕掛けて川上からカジカを追い込む「ゴリ押し漁」というものもあるらしい。
このゴリがカジカなのかヨシノボリなのかドンコなのか不明だが漢字で書くと"鮴押し"で鮴が使われる。
この場合鮴はメバルではなく"メバルカサゴソイ類"という意味なんだろう。
おそらく昔の人は語源を理解していて、カジカは「川のカサゴ」と思われたはずだ。
だからカジカの痘痕由来説はかなり信頼できる。
