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WUNDERKAMMER

叩く者

2018.04.29 02:09

私の彼はエレベーターの管理、修理をしている。

ある日、病院のエレベーターが故障して止まってしまった、と連絡を受けた。すぐに車を飛ばしたが、到着した時には2時間がたっていた。

現場へむかうと、人だかりがしている。中には看護婦が閉じ込められているらしい。

「大丈夫ですかあっ!」

彼が呼びかけると、おびえた女性の声が返ってきた。

「出してください。はやくここから出して!」

がんがん扉を叩く音がする。

「待ってください。今すぐに助けます」

道具を並べ、作業に取り掛かった。

「扉から離れていてください!」

と叫ぶ。

「はやくはやくはやく!」

がんがんがんがんがん!!

「扉から離れて!」

彼はもう一度叫んだ。

がんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがん!!!

扉は狂ったように内側から叩かれている。ちょっと尋常ではない。パニックになっているのだろうか…。

周りの人も不安げに顔を見合わせている。見かねて院長が扉に近寄って、怒鳴った。

「扉から離れなさい!危険だから!」


「離れてます!!」


女の悲鳴のような声が聞こえた。

「暗くてわからないけど…ここ、なにかいるみたいなんです!」

彼はぞっととした。じゃあ、今目の前で扉を殴打しているのはなんだ?

つとめて考えないようにして大急ぎで作業にかかった。

扉を開けたとき、看護婦は壁の隅に縮こまり、しゃがみ込んで泣いていた。彼女いわく、電気が消えた後、何者かが寄り添って立っている気配がしたという。

気配は徐々に増え、彼が来る頃には、エレベーターの中はそいつらで一杯だったそうだ。