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フィリピンって・・・怖い?

2018.04.30 02:56

オンライン英会話で 我々がお世話になっている講師の多くが住んでいるフィリピンとは、いったい どんな国なのだろうか。

近年 経済成長著しいフィリピンであるが、まだまだ 日本人のフィリピンに対する一般的なイメージは「治安が悪い」「ジャパゆきさんの国」「テロが多い」・・・等々、おおよそネガティブなものである。


治安に関しては、永らく 貧困による 窃盗・強盗が日常茶飯事となっていて、それに加えて 麻薬常習者が多いことと、アルカイダ系 反政府イスラム過激派 アブサヤフによるテロ活動が各地で起きてきた のも事実であり、決して安全な国とは言えないであろう。


「治安は その国の裕福度と反比例する」と言われるが、フィリピンのホームレス生活困窮者は非常に多く、街のあちこちに 学校へ行けない子供の乞食を頻繁に見かける。そんな子供たちが ゴミの山で 毎日 裸足で金目のものを漁っていた トンドの スモーキーマウンテンは、ある意味 世界的にも有名であった。

また、全国的に麻薬が蔓延し、ギャングから一般市民まで 多くの麻薬常習者が蔓延り、夜は 現地の人でも あまり出歩けないほどであった。麻薬常習者による犯罪も頻繁で、麻薬による異常な興奮状態で 銃や刃物を持って暴れまわる事件が 後を絶たない。


そんな中で、ミンダナオ島のダバオ市の検察官を務めていたロドリゴ・ドゥテルテが、1988年 ダバオ市長に就任し、当時 フィリピンの中でも 「最悪の治安都市」と言われたダバオ市の治安回復に乗り出した。

彼は 市長就任の際に「ダバオを東南アジアで 一番安全な街にする」と宣言した。

彼は 汚職や賄賂の温床であった 警察の地位と権限を強め、青少年の夜間外出禁止や、街頭でのアルコール飲料飲酒禁止など、軽犯罪を取り締まる条例を矢継ぎ早に通過させ、監視カメラを増やし、自ら大型バイクに乗って、重武装の車列を率いてパトロールをしてみせるなど、犯罪防止に力を入れた。


ドゥテルテの執政下では、フィリピン国内でも最悪の部類だったダバオ市の治安は、劇的な回復をして 経済は活況を呈し、人口は1999年の112万人から 2008年の144万人へと大きく増加した。

ダバオ市観光局は、タクシーのボッタクリや乗車拒否、犯罪発生率を劇的に軽減させることに成功したダバオ市を「東南アジアで最も平和な都市」と称している。

しかし一方で、ドゥテルテの容認の下で「ダバオ・デス・スクワッド (Davao death squads、ダバオ死の部隊)」と呼ばれる組織が、犯罪者を 超法規的措置によって殺害してきたとされ、人権団体や アムネスティ・インターナショナルが批判している。

ドゥテルテは「フィリピンのトランプ」との異名をもっている。アメリカのトランプと同様に、過激な暴言を繰り返しているからだ。

それでもドゥテルテの国内での人気は絶大で、彼は1988年から1998年までの3期、2001年から2010年までの3期、2013年から2016年までの1期と、長期にわたってダバオ市長を務め、後の 2016年の大統領選挙に担ぎ出され 圧倒的な国民支持の基、ついにフィリピンの大統領に就任した。


大統領就任後、彼は 選挙戦で公約していた 「汚職の摘発」「麻薬の使用・取引の撲滅」「経済の活性」に乗り出した。


それまで フィリピンが経済成長できない理由の1つとされていたのが、政府内の「汚職の蔓延」であった。担当職員が 業者や一般市民から 公然と賄賂を要求するだけでなく、上級職員は 役所や国家の予算そのものを着服し、計画されていた公共事業が 頓挫しまくりであった。


普通に運転しているバイクや車の運転手を 警官が呼び止め、難癖をつけては 賄賂を要求したり、市役所へ各種証明書を申請に行けば 法外な手数料を請求され、払えないと 数週間 待たされる、など。正に 他の国では考えられないことが、この国では当たり前であった。


金持ちが税金を払わずに滞納し、差し押さえた高級車を 税務署の幹部が転売して 私腹を肥やす・・・こうしたことが当たり前であったが、つい先日も 差し押さえた高級車を何十台も一列に並べ、ドゥテルテ大統領が自ら立ち会って ブルトーザーで潰していくパフォーマンスを演じている。


就任して2年、「汚職は絶対に許さない」を徹底しているのだ。

どこかの国の総理大臣にも 見習ってほしいものである。


「麻薬の撲滅」にも 凄まじい施策が展開され、国際的に物議を醸した。


警察によれば、大統領就任から6か月で 麻薬関連の容疑者6,216人が射殺された。

また 数千人の麻薬密売業者を収監、麻薬常用者100万人が 要治療者として登録されたと発表した。

どの刑務所も 定員の5~6倍の囚人で溢れかえっている。


人権監視団体は、これらの犠牲者の多くは おとり警察官や 警察が雇った自警団員によって殺害された と考えているが、警察はこうした告発を否定している。

欧米諸国や人権団体、外国メディアは「超法規的殺人」を強く非難してきたが、フィリピン国内では大きな扱いにはならなかった。支持率8割を誇るドゥテルテの人気に加え、麻薬汚染の深刻さを身近に知る国民が、この間の一定の治安改善を感じてきたことが批判をかき消してきた。


いずれにせよ 100万人の麻薬常習者が 自ら出頭して出て、麻薬取引が激減していることと、非難しているのは 外国人だけで、国民の8割が それを絶賛していることが 紛れもない事実である。


そして これらの実績は もう1つの公約「経済の活性」にも 大きく結びつくのである。

先週、フィリピンの BPO(Business Process Outsourcing)と呼ばれるアウトソーシング従事者が、全就業人口の56%にも達してきていて 近年 急増していることを お伝えした。

このBPOビジネス、多くは 海外資本で成り立っていて 海外企業の投資によるものである。

悪名高い「従来の治安の悪さ」を返上して、外国資本を呼び込み易くすることが 「経済の活性」に大きく貢献すると ドゥテルテ大統領は考えている。

そして 実際に ここ2年のBPO事業者の数は 大きな伸びを示し、全就業人数の過半数を超えた。正に 治安の改善が GDPの飛躍に貢献しているのである。



ここまで書くと 今後のフィリピンには大きな問題は無いように思えるが、どうであろうか。


大統領が変わって2年、今のところ 新政権は順調に推移しており 今後に大きな成果を期待させるが、ドゥテルテは既に73歳である。

彼のようなリーダーは この国ではかつて実在しなかったが、彼は 今後 何年間、大統領職を続けられるのか。

また ドゥテルテの 次の大統領が、どのような政策を採るのか。


まだまだ 予断を許さないフィリピンである。