ZIPANG-7 TOKIO 2020デザイン・色彩実践講座 7−2 日本の未来は「いき と いろけ」にあり【寄稿文】林 英光
色気は生物の幸せな仕草にあり、粋はその形と色彩と空間にある
「座って立って、起きて半畳、寝て一畳」
これは人に必要な、座っても立っても畳半分の空間で、寝ると一畳あれば足りる最小スペース生活空間単位である。この日本人の体の寸法から発した尺貫法の基本は、なんとも簡潔なフレーズであり、そして美しい日本のものづくりの源である。
ヒューマンスケールシステムを復活活用したいと思うが。明治から西洋真似で、そしてさらに敗戦で米軍は罰則50万円の禁止に。美しくない現代環境になって久しい大元である。
平面から立体空間の障子や戸など全ての元であり、細部の部材もこの延長であり、統一整理洗練された、日本が世界に誇る伝統空間デザインの基本であった。
このあたりから日本の美しい未来への、心の文明への道も見えてくるのではと思う。
尺貫法の行き着いたシンプルな粋と色気の空間美
尺貫法の行き着いた 粋と色気の盛りだくさん美空間
新たな日本の時世への挑戦には、人の心のあり方と、今一つは前回の投稿で触れた日本の美の一角を担う基本の人体モジュール尺貫法にある。人が環境を作り、環境は人をつくる。これが取り組みの根本である。そしてそれは内なる美しさに迫るユーモアも含んだ日本の粋と色気でもある。
ほっこりと嬉しいユーモアをのある日本の粋と色気
鴨居の上の小さな造形、庭に近い方の畳に青色のシートが何気なく敷いてあるが、手前の藁色土壁色と遠くが、透明感のある景色に見えて粋と色気が表現され、いい感じの楽しい空間になっている。
白黒グレー自然素材色 風土と伝統 粋と色気で公共環境をつくる
海と大地の土着性の粋と偉人の想いを伝える市民の拠り所 旭市新庁舎 デザイン筆者
市庁舎というと箱物の典型であり、四角くて陸屋根の硬いものが多く、あえてこの庁舎は太平洋からの風になびき、ふるさと旭の360度の視界の展望が合併前の市民の心を一つになりることを目指し、夜もあかりが全域からの灯しびである。
また庁舎全体のデザインコンセプトの原点は、世界の農協の祖と言われる、地元の偉人大原幽学師の思想による。
内部オフィス空間も、見通しよく、ゆったりとした大きなカーブと白黒グレーの入り口ホール環境は、外国からの住民にも分かりやすいインフォーメーションを赤でシンボルに、旭市の風土と伝統を表わした。旭のオレンジ赤と、伝説の椿海の椿の花の紅赤、豊かな緑の田園、太平洋の海と空の青、未来を目指す知性の江戸紫と天空の色に、庁舎階層のテーマカラーを空間の柱に据えた、ワンポイントの「イロケ」機能表現でもある。
白黒グレー自然素材色の粋と色気の新庁舎正面入り口ホール。
世界の未来デザインも 粋と色気の混在で平和に
色気は、生物の幸せな時に見られる何気ない仕草、「見返り美人」の粋でもある。
天空大地海の風情に、あるいはペットや小鳥や、草木のそよぐ日常の姿にもある。自然界のあらゆる事象と生命の喜びと幸せの、ふとした自然な表現である。
それは物事の初めにも終わりにも、花盛りの春にも、うば桜にも、わくら葉、廃屋にも、命のターミナル期にも、その一瞬に存在する美は、最も崇高で大切な美である。
それだけではない、人工物の典型のバイクとシンプルな工場のデザインの白黒グレー環境は、なぜか和洋折衷の色気と粋が新しい。
世界のモダンデザインも日本の粋と色気で美しい 国道19号 松本
粋と色気の優しい伝統を もっと現代に活かそう
粋と色気の和の伝統モダンは 各地にあるので参考にしよう。安全機能色ともに一層機能的で美しい環境が出来る。長野
物質文明から脱皮し、心の文明の未来環境こそ、シンプルな色彩と自然素材を多様することが大切である。
産業革命以前の和の目指した日本人の人生の終活は、埴生の宿、いおり、茶室、庭園の自然の美、その中の心の宇宙であった。これが平和を愛でる心の糧であったろう。
美は、綺麗、素敵、魅力的など様々な表現はあるが、まだそれらは受け身での、他人事のような響きがある。粋と色気は、五感で肉体で生身が脳が感情で実感する「色に出にけり」で、受け身だけでは無いべたな品の良い親近感がある。
大きなヴィジョンにも企画もデザイン・設計から実生活にまで役立つ、ハンドメイドに近い、日本のアナログ言語媒体のように思う。
この自然界は文句なしに皆美しく幸せである。その中の人の世界では、言うに言えない悲しみや苦しみもあり、生きる幸せを巡っての争いがある。それも人それぞれの思いや感じ方での儚くも果てしのない大切なことでもある。
そこで具体的に景色、風景において、日常の暮らしに多少でも資する要素を、真面目にもう少し、美しい環境・景観のあり方に準えて提示してみる。
屋根の緩やかな傾斜と道路のカーブ、色調と植栽も良い 鳴海
伝統の建物の素材と色と屋根の緩やかな傾斜と道路のカーブ、そして植栽が見事に呼応調和し、静かに会話を交しているような粋と色気を自然に感じる鳴海の街並み。
現代大流行りの大型モールの動線にもこの手法は採用されている。
今日本の環境には「コモンスペース」が必要である。
現代のAI、自動技術がさらに広がる無縁社会において、孤立し孤独感を深めることは生き物として幸せではないだろう。
それは謡曲にある花見見物の風景のように、人が自然に「貴賤都鄙」の隔てなく、公平に色めく有り様の場、それが人間環境に必要なコモンスペースであろう。
時には天女が持ち場を離れ、吉野山に降り来て、貴公子と桜の木に寄り添い恋をし、天界に帰ることを忘れた話しも、美しい景色にうっとりと流れる時、粋と色気の人工的でも良き環境は、訪れる人、通りがかりの心にも黙って自然の風景のように、良きパワーをくれる。それは行き着くところ、和の究極の美学である「幽玄」であるらしい。
粋と色気を感じる安らぎと賑わいの空間をつくろう
それは仕切りの無いパブリック・オープンスペースでも、歩行動線も有機的で自由でリッチなカフェもギャラリーも垣間見れて夜も賑わう共有空間を。最近繁華街の裏側にも粋と色気を感じるコモン環境を創る人達も自治体もある。 長野善光寺周辺
日本人に大切な多目的な心のコモンスペース 縁側
日当たりの良い縁側はどの家にもあった。民家の内と外をつなぐ、余裕のある、ささやかな粋と色気のある素敵な空間である。日本人が愛し、忘却した身近でまだ心の隅に残る、とても大事な日本人感覚の住環境のコモンスペースが縁側である。とても平易で粋で色気のある縁側は、近所や客がちょっと腰掛ける簡易空間。会話、寛ぎ、手作業など様々な機能満載、人と猫にも優しい陽だまりの最高のコモンスペースである。
街道筋のどこにでもあった庇と縁台も同様な半公共的な役割で。旅人も休んだ人情の設備。それは広がる孤立支援にも、集合住宅、公共施設などにも大いに工夫したい優しい交流の日本の伝統空間である。
海外のコモンスペースは、建物に囲まれたパティオのようなものであったり、自然発生的な空間であっても、コミニティーの感覚が異なるので、モダン建築に取り入れても日本のものとは異なる空間になる。国や民族による粋や色気のちがいも大事である。
心の時代の第一は幼い時から地域や国の伝統に親しみ、誇りを持つこと
くどいようだが、またもや繰り返すが、エコノミストが戦後の焼け野原から日本の未来を、世界第2位の経済大国なるとの予測通りになったが、バブル期は儚い夢に終わり、2050年に日本は世界で最も悲惨な国になると警告して久しい。
政府も識者もビジョンを出せないばかりか、戦前のように軍事予算を増やし、地獄を見た世代も忘れ、またもや戦後まもなくの米軍の朝鮮戦争の特需と、次にベトナム戦争の特需で経済成長した、その夢でもまた期待しているのであろうか。
それに応える私たちの出来る明日の日本のあり方は、前向きに文化の粋と色気を持って暮らして向かえば、案外楽に未来が開ける秘策かもしれないと考えている。
結論:
良い心の作るものは良いパワーを、そうでない場合は負の影響を与える。まさに東京オリンピックのメインスタジアムを、世界的イランの女流建築家の当選案キャンセルから始まり、余り愛されなかったキャラクターに至るまで全てを「粋と色気」で今問いたい。
続く・・・
寄稿文 林 英光
環境ディレクター
愛知県立芸術大学名誉教授
東京藝術大学卒業
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発行元責任者 鎹八咫烏(ZIPANG TOKIO 2020 編集局)
アーカイブ リンク記事をご覧ください。
旭市役所 ピアノ空間 天井の高いゆったりとする環境はこれから必要
国も地域も衰退するわが国では、地方分権的自発性が成熟社会の今後のサバイバルに大切である。 その一例として行政の中心である庁舎は、地域の誇りと郷土愛で未来に向けて、前向きに市民目線で取り組むことである。
公共建築においても、わが国の人工景観は白黒グレー自然素材色が揺るぎない最も美しい伝統であり、その上に未来を見据え楽しく賑やかに個性が表現出来れば上々である。 先ずはつい最近竣工した千葉県旭市の新庁舎をそのスタデイとして示したい。
ZIPANG-5 TOKIO 2020 アフターコロナへのお膳立て(2−1)ーSDGsの未来は地域の自発的取り組みにあるー ・・・【寄稿文】林 英光
https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/18125073
旭市 世界の農協の始祖大原幽学の思想が伝わる旧林家縁側
地域の伝説は地域計画や施設づくりの大切な元であり手がかりである。当地の椿の海伝説や義経伝説、武家時代の幕開けに、旭の如くの勢いで京の都に登った旭将軍木曽義仲。その子孫義昌公が江戸期にこの地1万石に封ぜられた縁で「旭」に。
ちなみに筆者の実家の地名西足洗いは弘法大師の足跡の沼である。
世界広しと言えど、地域にはその場所にしかない大切な物事がある。それが地域を元気にするデザインの元である。
ZIPANG-5 TOKIO 2020 アフターコロナへのお膳立て(2−2) ーSDGsの実現は 地域の「共有幻想」にあるー・・・【寄稿文】林 英光
https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/18132279/
高野山真言宗 総本山金剛峯寺 雪の「大門(だいもん)」
高野山の入口にそびえ、一山の総門である大門。
開創当時は現在の地より少し下った九十九折(つづらおり)谷に鳥居を建て、それを総門としていたそうです。
山火事や落雷等で焼失し、現在の建物は1705年に再建されました。五間三戸(さんこ)の二階二層門で、高さは25.1メートルあります。左右には金剛力士像(仁王さま)が安置されています。
この仁王像は東大寺南大門の仁王像に次ぐ我が国二番目の巨像と云われ、江戸中期に活躍した大仏師である運長と康意の作です。正面には「日々の影向(ようごう)を闕(かか)さずして、処々の遺跡を檢知す」という聯(れん)が掲げられています。
この聯は、「お大師さまは毎日御廟から姿を現され、所々を巡ってはわたしたちをお救いくださっている」という意味であり、同行二人信仰を表しています。
また、大門の横手には弁天岳登山口があり、山頂には弘法大師が勧請された嶽弁才天(だけのべんざいてん)がまつられています。
ZIPANG-2 TOKIO 2020「弘法大師 空海の世界遺産高野山真言宗 総本山金剛峯寺」
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ZIPANG-7 TOKIO 2020 (VOL-7)
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ZIPANG-6 TOKIO 2020 (VOL-6)
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ZIPANG-5 TOKIO 2020 (VOL-5)
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ZIPANG-4 TOKIO 2020 (VOL-4)
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ZIPANG-3 TOKIO 2020 (VOL-3)
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ZIPANG-2 TOKIO 2020(VOL-2)
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