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映画レビュー!『呪餐 悪魔の奴隷』「ホラー王」ジョコ・アンワル監督最新作!

2023.02.15 07:19

Copyright (C) 2022 Rapi Films


謎の集団に付きまとわれた家族が、逃れられない運命と向き合う姿を描いたインドネシア・ホラー、『呪餐(じゅさん) 悪魔の奴隷』


1980年代に「イスラム教圏で最も怖いホラー映画」として話題を呼んだ作品『夜霧のジョギジョギモンスター』(邦題)を、インドネシアのジョコ・アンワル監督が現代版としてリメイク、2017年に『悪魔の奴隷』のタイトルで作品を発表しました。『呪餐 悪魔の奴隷』はこの続編で、前作に続いてジョコ・アンワルが監督・脚本を手がけました。

主人公の女性リニを、アンワル監督作品『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』に出演、さらに前作でも主演を努めたタラ・バスロが務めています。

ホラージャンルとしては近年、注目を集めているアジアンホラー製作者の中でも、そのクオリティーの高さで特に注目を集め、「ホラー王」の呼び名も高いアンワル監督。その代表作ともいえる『悪魔の奴隷』の続編ともあって、まさにホラーファン待望の作品でもあります。


 今回は本国インドネシアでの歴代興行収入第三位に輝いたこの注目作品を紹介します。


【STORY】

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とある一軒家で生活していたリニ(タラ・バスロ)の一家は、ある日母と祖母が相次いで亡くなり、奇妙な事件の後には末弟も行方不明に。そして彼女らは一軒家を離れ、4年後にジャカルタ北部の高層アパートに移り住んできました。

一方、そのころ巷(ちまた)ではこの数年で2000人もの犠牲者を出した連続殺人事件が人々を恐怖に陥れていました。

ある日リニたちの住むアパートで、不審なエレベーターの事故により多くの住人が命を落とす事件が発生します。

やがてその死体の運び出しもままならぬ状態のまま局地的大嵐がアパートを襲来、建物には不穏な空気が蔓延する中で下層は浸水し、リニたちは建物に完全に閉じ込められてしまいます。

そして、彼女らの恐怖の一夜が始まるのでした…


【ここに注目】

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「邪悪な存在に付きまとわれ、連続して奇怪な事件に遭遇する人たち。そして最後にはそんな奇妙な出来事の謎が解き明かされる」

過去には『ポルターガイスト』『エクソシスト』『オーメン』などの、「ホラー映画の金字塔」に輝くほどの名作には、どこかこのようなシーケンスが当てはまる傾向があったように見受けられます。

ホラー映画の傾向としては、68年に発表された『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』、いわゆる「ゾンビ」と呼ばれるモンスターの登場以降に、"その恐怖の対象が現れた原因はわからないが、そんなことは真理の二の次。それが現れたことで人々はどのような恐怖に陥れられるか”という骨子の物語がホラー作品として多く排出されてきました。

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近年、世界的にも注目を集めているアジアンホラーは、どちらかというと前者の伝統的な流れを汲んでいる空気も感じられます。本作の原作はもともと80年代に発表された作品でもあり、時期的には上記の作品上映時期にかなり近く、ある意味この傾向に沿った作風、正統的な作品となっていると見てもよいでしょう。

韓国のナ・ホンジン監督作品『哭声/コクソン』、昨年日本でも公開された、ナ・ホンジン監督プロデュースによるタイ・韓国合作映画『女神の継承』など、新しい感覚を取り入れつつも、ストーリーの屋台骨に伝統的な道筋の組み立て方を行う作品が多く発表されている傾向もあります。

こうした流れからは、これから次々とヒット作を生むだろうと期待されるアジアより、ホラーというジャンル面で新たな潮流を作ろうとする意気込みのようなものも感じられます。

前作に続く本作にはジョコ・アンワル監督ならではの映像観、世界観が見られる一方で、そのストレートな作風からはまさにこの潮流が明確に示されているといえるでしょう。


【あわせてここも見どころ!】

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記事の場面画像からも感じられると思いますが、基本的には非常に暗い雰囲気で色褪せた感の映像で全編が統一されており、このような特性からもアンワル監督独特の映像観を感じることができるでしょう。

作品としては近年の作品に見られるようなスピード感、疾走感をおぼえるほどのテンポも感じられず、グロテスクな描写もほとんどが"チラリズム”をおぼえさせるほどの少なさ、直接映像で訴えるような恐怖映像は、実はほとんどありません。

しかし、これこそがこだわりを深く感じさせる傾向とも見られます。

物語に紡がれた緻密な伏線、そしてそれをたどる道筋に蔓延する緊張感。この作風は本作のみならず前作から一貫して表現されてきているようでもあります。

また2018年に発表されたホラー短編オムニバス『フォークロア』でアンワル監督が手掛けた『母の愛』という作品にも、どこか共通する空気をおぼえるところ。映像で恐怖を感じさせるだけでなく、物語も恐怖感を煽る重要な要素として複雑に絡み、見るものにジワジワと恐怖感をおぼえさせていく。

一貫した作風を貫きながらも、本作は前作よりパワーアップしたスケール感もうかがえ、ホラー映画の本来の楽しみ方を十二分に満喫できるでしょう。


【作品情報】



『呪餐 悪魔の奴隷』

監督:ジョコ・アンワル

出演:タラ・バスロ、エンディ・アルフィアン、ネイサー・アヌズ、ブロント・パララエ

原題:Pengabdi Setan 2: Komuni/2022 年/インドネシア/カラー/119 分/

配給:アルバトロス・フィルム

公式サイト:https://jusan-movie.jp/