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散歩する、素晴らしき哉、おいしい生活 vol.4<umihayato>

2018.05.02 03:00


 相も変わらず、まるで自分に義務を課すように。何かに追われる様に映画を見ている。それもこれも数少ない映画友達達がよってたかって「あれ見たこれ見た」報告をしてくるからだ。

 「人と仲良くなって話を理解するためには、ある程度教養を同等にする必要がある。」のだ。だって見てない映画の話されてもわかんないもん。

 三月に入って少し仕事が落ち着いたこともあり1、2月の分を 挽回するように狂ったように 見まくった。 仕事を疎かにして見ていない こと、念を押しておきたい。「納期を守る」というのが僕の仕事のモットーであり、これまで一度たりとも納期をぶっ飛ばしたことが無いのが技量もそこそこの僕の誇りだからだ。

 仕事の合間で擦り切れた時、決まって見るのは「男はつらいよ」である。そこで忘れ去られた人と人との暖かさと、各土地土地の風土の心地よさに身を委ねる。

 何を隠そう、この文章の最後にいつも書いている「今夜はこの辺でお開きということで」という台詞も寅さんのキメである。

 茶の間で人々に囲まれて、寅さんが一人語りを始める時。ファンの間では「寅のアリア」と呼ばれるお馴染みのシーケンスがあり、それの締めとして寅さんがこの台詞を発し輪の中を去る。

 残された人たちは寅さんの話す思い出話、時には空想。その語り口の豊かさに、実際の光景を見たかのごとくその余韻に宙を仰ぎ、涙したりする。

 特に15作「寅次郎相合い傘」で、ヒロインのリリーへの想いを語るシーンは絶品である。「もしも俺にふんだんに銭があったらなぁ。。」という言葉から寅さんには珍しく、全てで48作あるシリーズだが、この15作は是非見てもらいたい。

 他の誰にもない、その人だけの言葉。その人だけが好きな瞬間。その人だけが感じたこと。

 どんなに他愛もないことであってもどんなに馬鹿げた想像であってもそれをその人の声で聞きたいというのが、人と人との幸せだと僕は思う。

 そういうことを、無駄な気遣いもなく乱暴に語ってくれる人が減ったと思う。

 と、これを書いている直前に見終わったのが47作目。

 あと一作で高校生からぽつぽつ見ていた僕の男はつらいよマラソンも、ゴールを迎える。

 余談だが、義理の甥っ子(嫁の兄の息子)一歳半が僕と同じはやとという名前で生まれてきた。その子が大きくなった時、寅さんのような叔父に、満男と寅さんの様な関係になっていますようにと自分に願いつつ、今夜はこの辺でお開きということで。でわ。


文:umihayato