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YAMAHA GX750 1976

2018.05.02 09:28

YAMAHA GX750 1976y 

(リード)

ヤマハが初のマルチ・シリンダーの開発に向かうに当たって検討の課題としたのは「軽量・コンパクト」だった。エンジン幅の拡大を避けてバンク角を稼ぎたかったのと、マスの集中化を図ることで走行性能を高め、スポーツ性能の向上をパワーユニットばかりに依存する傾向を避けようとするのが狙いだった。

(本文)

 GX750が、パワーユニットにDOHC3気筒を採用するにあたって、ヤマハの独創性を更に際だたせる結果となったのは、シャフト・ドライブの登用だった。エンジン・パワーが日増しに高まってくる中にあって、チェーン切れによる事故が起こり始め、耐久性に疑問も生じてきた頃だった。しかし、国内市場では未だ、シャフト・ドライブのスポーツ性と言う部分に若干疑問視する向きもあり、嫌われる傾向にもあった機構だった。このシャフト・ドライブの採用決定の要因となったのは、海外からのオーダーによるものだった。メンテナンスのフリー化と安全面からニーズは高まり、販売面にも多大な影響力を持つと判断されたからだ。

 当初、シャフト・ドライブの制作は、西ドイツの「ゲトラック」に依頼。設備上の準備が整い次第、ヤマハで内製するようになった。事実、GX750の評価は海外で高まった。しかし、当時の国内市場を賑わしていたのはカワサキのZ750fo urが起爆剤として持ち込んだDOHC4気筒のパワーユニット。GX750のデビュー(1977y.5)に先行してデビューした「スズキGS750(1976y.11)」の人気も鰻登りとあっては、3気筒に対するユーザーの反応も、やや拍子抜けしたものとなった。

 モーター・スポーツの登用によるイメージアップも大いに効果を高める二輪にあって、3気筒のパワーユニット同様にシャフト・ドライブの採用にも困惑したに違いない。だが、GX750に与えられた本質を知る機会を得た者であるなら、的を得た矢のようにコンセプトがストレートで明確に方向づけされていることに気づくはずだ。

 750ccと言う量感を求めずコンパクトに徹し、質感の向上を果たしたスタイリングには無駄がなかった。ギア操作ひとつとってもロスのない手応えは心地良かったし、小柄な日本人にジャストフィットするポジションも、750ccクラスにあって新鮮なものだった。

 パワーユニットの出力値は、ライバルと比べ心細い限りではある。が、速さそのものを追い求めるのではなく、常用する範囲での快適性を求めるのであればベストなセッティングと言えるだろう。7,500rpmで始まるレドゾーンをオーバーしても異音を発することなくスムーズに回り続けるパワーユニットには、数値以上に素性の良さを感じさせられる。

 ハンドリングは、ラバー・マウントされた影響を受けてか硬質感がなく、ギャップに対して不安定さを示す。又、160km/hを越す高速走行時にフロントが浮く様な軽さを顕し、直進安定性にも影響を及ぼす傾向がみられる。これは、サスペンションのセッティングで改善できるとも思える。が、リア・サスのスプリングをあまりハードにセッティングすると、シャフトドライブ特有のスタート時のリアのしゃくり上げがダイレクトに感じられるようになる。逆にソフトな状態にすると、減速時の沈み込みが気になり、慣れぬままでの印象では、余り心地よいものとは言い難い。リア・ショックのダンパーの効果を高めたものに換えれば、かなり操縦性が向上するものと期待もした。

 ブレーキは、フロントに226mmφのダブル・ローターに、シングル・ピストンのフローティング・タイプのキャリパーがセット。リアもディスクとしたトリプル・ディスクとなっている。やや堅めのレバー・タッチだが、常に安定した制動力が保たれていた。

 1980年、最終モデルとなるGX750がマイナーチェンジをおこなっている。キャスト・ホイールやチューブレス・タイヤと外観上をグラフィックと共に一新する。が、何故か僅かばかりの1psの出力と0.1kg-mのトルク値ダウンさせている。ツアラーとして、徹底した車体構成が示されたGX750。その優秀な操縦性が評価され、ヨーロッパにおいてヤマハのヒット作としての成果も納めた。しかし、存在感にやや気迫が感じられなかったのを唯一の欠点として、本国においては正当な評価が実ることはなかった。

GX750 1977y

  ‘77年モデルでは、燃焼室形状の変更を施した新設計のパワーユニットに転換、エキゾーストパイプも従来の3into1から3into2に交換されている。点火系の改良(フルトラ化)も加え、出力の向上が図られ、従来よりも7psアップの67ps/8、000rpmとハイレベルなポテンシャルを身につけている。ただ、この出力向上により、シャフトドライブ機構に起因する固有のトルクリアクションを生み、特異なフィーリングをやや強める結果となる。ハロゲンヘッドライト、グラブバーの新設、装備の充実の他、3タイプのハンドルを用意していた。