YAMAHA XS1100 1978
YAMAHA XS1100 1978y
(リード)
ヤマハ初の4気筒モデルがXS1100。GX750同様にシャフト・ドライブを採用した初のリッターオーバー・モデルだった。デビュー当時のライバル達は、ホンダのGL1000やCBX1000 、スズキのGS1000E、カワサキのZ1000やZ1R等々蒼々たるメンバーがラインナップされており、XS1100のオーソドックスなスタイリングは遠慮がちなものにも映ってしまった。しかし、ヤマハがこのモデルで世界に仕掛けたのは、最速モデルへの挑戦だった。
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当初は、1000ccを採用したXS1000で計画を進行させていた。が、他社との競合の中で一歩抜きんでた1,100ccへと急遽グレードアップさせることとなった。しかし、結果的にはカワサキのZ1300に先行され、最大級の称号を得るには至らなかった。GX750で3気筒を決定したヤマハが、このXSで4気筒を採用するにあたって、予測した通りのテスト経過をもたらすこととなった。
コンパクトなパワーユニットでない限り、走行性能に著しい劣性を及ぼすこととなる・・と懸念したことが図星となったのだ。テストコースでの開発段階で、走行中にジェネレーター・カバーを損傷し、オイルをまき散らす問題点を露呈することとなった。オイルシールを加え、外側にジェネレーターを配置するといった、乾式に変更せざるを得ない状況にもなった。バイクにとって、バンク角を得ることは必須の条件でもあったのだ。
ホンダがVシリンダーの4気筒を採用したのも、この理由からだった。ヤマハは、ジェネレーターをクランク・ケース・サイドからシリンダー背後に換え、点火系をよりコンパクトにする案を発した。4気筒を採用するにあたり、徹底して解決策を追求していったのだ。それは、GX750で4気筒の採用を拒否したヤマハのポリシーを伺わせることともなった。
しかし、GX750をデビューさせるにあたり、XS1000も同時進行で開発が進められている・・といった経緯もある。250cc×3のシリンダーに、もう一つのシリンダーを加える・と言った計画だった。又、この時期のヤマハは、様々なシリンダー・レイアウトを模索してもいた。Vフォア然り、水平対向の4気筒や6気筒もテストしていた。しかし、GL1000に採用された縦置きクランクのパテントの辟易にもあい、採用は見送られることになった。苦渋の選択ともなった初の4気筒だった。が、パワーユニットは性能的にもトップレベルに仕上がっていた。
一体型の180度クランクに支持された4ピストンは、極端なショートストロークを採用せずに、高回転型へ傾向することを抑えたものとなった。GX750の68.0×68.6→XS1100の71.5×68.6のボア・ストローク比として、ボア・アップのパワーユニットを生みだしたのだった。又、このピストンは、翌年(1979y)にデビューを控えていたXS850(3気筒DOHC)にも採用されており、3気筒と4気筒が同時に開発が行われていた節を伺わせる部分ともなった。
精度の良さを伺わせるタッチが好印象のクラッチ&ミッションは、XS1100でも同様だった。2,000rpm以上を回している限りは、ギクシャクとした繋がりもなく快適な走行感を生みだしてくれる。ハンドリングはやや重く、重量車にありがちな低速走行時のコーナリング中のフロントの切れ込みを省いて、何の不安もなく、高速走行時の直進安定性も高レベルに評価できるものだった。
実測は定かではないが、220km/hオーバーも確実・・と言われたのも、パワーユニットの出来ばかりでなく、車体構成による部分からの影響も多分にあることを強く感じさせてくれる。実際のところ、パワーに関してはライバルに比べ特出した部分が見当たらないのだ。シャフトドライブに関しては、巨大なトルクが起因してかGX750よりも影響は大きく出る。特に、コーナーリング中のアクセルのON/OFFは控えめに行うことを勧める。オーソドックスな外観の印象とは裏腹な高性能エンジンと、高速安定性に関しては群を抜く操縦性能を示してくれたXS1100、これも隠れ名車の一台だ。
XS1100LG 1979
XS1100をベースに、ティアドロップタンク、プルバックタイプのハンドル、段付きシートを装着してアメリカンタイプに仕立てたモデル。全身を凄みのあるブラック塗装とゴールドメッキで着飾った、いわゆるミッドナイトスペシャル仕様もあった。ヤマハらしい品の良さと流麗なスタイリング、大トルクエンジンとシャフトドライブが生み出す頼もしい走りで人気モデルになった。エンジンスペック等はロードタイプのXS1100とまったく同じで、アメリカンのわりにはフットワークが良かったのも特徴だ。
XS1100S 1981y
XS1100(1978y)から発展したXS1100ミッドナイトスペシャル(1979y)をベースに、ヨーロピアンスタイルに仕立てたビッグイレブン。スーパースポーツモデルらしく、パワーユニットにはオイルクーラーを標準装備。駆動にはヤマハお得意のシャフトドライブ機構を採用。基本ユニットやエンジンスペックはミッドナイトスペシャルから変更はないが、テールカウルを持たないシートエンドの処理など、いかにも当時のカスタム風で雰囲気を出している。イキなビキニカウルを装着したスポーツエディションもあった。
XJ1100T 1982y
‘81年の東京モーターショーに展示されたプロトタイプ。XS1100ミッドナイトスペシャルをベースに、三菱重工製ターボユニットを装着。燃料供給システムにはインジェクションを採用する。後のXJ系へと発展する空冷4サイクル並列4気筒エンジンとE.F.I.システム、ターボエンジンのドッキングにより、120psのハイパワーと12.5kg-mのビッグトルクをひねり出していた。液晶表示のメーターパネルやOKモニターなど、各種のコンピュータ制御パーツも装備するなど、モンスターアメリカンして話題を呼んだが、残念ながらショーモデルのみで終わってしまった。