日曜小説 No Exist Man 闇の啓蟄 第三章 月夜の足跡 15
日曜小説 No Exist Man 闇の啓蟄
第三章 月夜の足跡 15
京都国際環境大学の会議室には、古代京都環境研究会発起委員会が開かれていた。当然に、今田陽子もこの会議に参加している。
「さて、またお願いします」
石田清教授は、そのように話した。
「本当に天皇が来るのか」
吉川学は少し腹を立てたように話した。
「いいじゃないですか。中国からも李龍慶首相も来ます。いいじゃないですか。」
徐虎光はそのように吉川の方に話をした。徐が話をすると、吉川は一度大きく深呼吸をして口を閉じた。
今田陽子は、ここに来る前に、菊池綾子から今回の計画をすべて聞いた。青木優子から菊池綾子はすべて聞いた内容をそのまま今田陽子に話をした。青木優子はその後松原に抱かれて泣いていたという。しかし、日本の国の為であると自分に言い聞かせて耐えたというのである。同じ女性である今田陽子は、青木優子の屈辱に塗れたような気持ちがよくわかった。その言葉から、今回の青木のいうことの真実であるというような形になるのではないか。今田陽子は、基本的に青木優子を信用していた。
その言葉の中では、今回のこの京都の展示場に爆弾が仕掛けられるということになっている。そして、中国の要人も殺すということになっているのだ。
「木津大学をメイン会場にして、そこで年を作ります。もう一つは今出川講演をもう一つの会場にします。京都市内に会場がないと、観光などに結びつかないので、京都市内にもう一つの会場を作るということにしました。京都御所の近くにすることで多くの人の注目を集めようということになります。」
京都府職員の町田直樹がそのように言った。横に細川満里奈がいて全ての内容をメモに取っていた。
「会場の件で何か異議のある人は」
山崎瞳が言った。未だにとっては平木の仇である。しかし、そのことは全くおくびにも出さない。山崎瞳が、今回の天皇暗殺計画の首謀者であることもよくわかっている。今田陽子はそのようなことを全く表情に出さない。
「特に異議はありあせん」
今田陽子は、何も話さない事が退屈になったので、なんとなく口を開いた。
「今田さん、政府の予算はどうなっているのでしょうか」
山崎瞳だ。
「はい、予算は申請通りに通る予定です。なお、今回の内容は天皇陛下が開会式にいらっしゃいますので、天皇陛下の参加の費用に関しては宮内庁の予算で行います」
「申請通りですか。」
石田清は、珍しいというような感嘆の声を上げた。
「はい、基本的には天皇陛下が参加される内容に関しては、基本的には全て申請通りに行います。そのうえ海外の要人も参加するので、その内容を陳腐化させるわけにはいきません。その為に、予算は着のン的には申請通りに行うことにしているのです。」
今田陽子はそのまま答えた。
「国家権力ってのはすごいなあ」
吉川は、いかにも国家権力を嫌うという、忌々しい内容で口を開いた。
「予算くらいは何とかします。国もメンツがあるので」
「そうか」
吉川は吐き捨てるように言った。
「吉川さん、そのような反対する意見を話にしていただきたいと思いません」
「そうですよ吉川さん。いいじゃないですか。素晴らしい会になると思います。李首相も多分喜ぶともいます」
徐はそういって吉川の方をポンとたたいた。吉川は、深いそうに徐を見ると、叩かれた場所を、埃を払うように手で自分の肩を払った。
「では、この施設工事の内容を説明します。入札で関西地区の建築会社複数で落札させます。この入札は京都府で行いますのでよろしくお願いいたします。」
「それでよろしいですか」
細川満里奈の説明の後に、町田は話をする。その言葉に誰も異議はなかった。
今田陽子は、まさか細川が平木の仇をすべてここに入れるはずはないと思った。しかし、ここには、左翼主義者の山崎瞳も吉川学もいるし、中国からの徐虎光もいるのである。それを警戒しなければならないのだが、まさか細川満里奈は何もないと感じるのである。
「では、京都府の入札でやります」
「それでお願いします」
「内容は、皆さんのお手元の資料の通りに」
「はい」
会議が終わった後、また女性三人で山崎の部屋に集まった。
「また紅茶を飲めるとは」
「今日はアールグレイよ」
「私は、このためにケーキを買って来たんだけど」
今田陽子は箱を出した。今になってみると山崎瞳の買った食べ物を食べる気にはなれなかった。
「おいしそう」
細川は素直に喜んでいた。
「さて、今回の内容は石田先生がずっと夢に見ていたものなの」
「山崎さんは石田先生についてずっと研究していたものね」
「そうなの」
今田陽子は聞いた。そういえば山崎瞳と石田清の関係はあまり聞いていなかった。
「石田先生は、山崎さんをずっと高く買っていたからね。」
「山崎さんは優秀なんですね」
今田陽子はお茶を飲みながらそう言った。お茶の中に薬が混ざっている可能性もある。しかし、そのようなことを考えて、外に運転手を待たせていた。自分が外に出なければ、様々な人が動くことになる。
「今田さんは、政府の方なのに、なんとなく接しやすいですね」
「そうなの」
細川満里奈は未だに話をする。
「今田さんは、でも、このようにしながら外の運転手を待たせていたり、なかなか消え回診が強いのよ」
「運転手を待たせているのは、緊急の仕事の場合にすぐに移動できるようにするためよ」
「そう。でも大丈夫、今田さんに薬を入れたりはしないわ。ちゃんとすべてを見ていなければならないからね。全てをしっているのは今田さんだけですから。」
山崎瞳は意味ありげにそのように話すと、にっこりと笑って見せた。