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本屋でんすけ にゃわら版

“にゃわら版”は誰のもの?

2018.05.04 03:00

何かをつくりはじめた人、将来自分のつくったもので何かをしたい人、是非読んでください。


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私が描いているフリーペーパー『本屋でんすけ にゃわら版 』の権利を巡ってはグチャグチャしたものになった。


退職が3/31と決まっていたので (これまでの経緯はコチラ↓)、

身辺整理として学内に設置されているサイネージに使ってる私が描いたでんすけと建物のHPのにゃわら版のページを削除してほしいと書店が入っている建物の大家にお願いをした。

私の感覚としては、持ち物を持って帰るのと同じ感覚だった。


その後、『著作権は建物にある。あのフリーペーパーもツイッターも法人でやってるのにスタッフがひとり辞めるだけで削除しろとは会社としてどういうことなのか!』という大家のお局様の怒りの電話を新店長がもらったらしい。


気付いた人いますか?

フリーペーパー、法人でやってません。

にゃわら版のツイッターも私の個人アカウントです。

そして建物は絵が描けません。

ツッコミどころ満載な主張に対して新店長は『著作権は国に法的にとっているのか?書類はあるのか? 特許庁かなんかから書類をもらってこないと何もできない。僕には判断できないから本部の法務部に相談する』と言っていて酷すぎて絶望した。

特許と著作権って違うでしょう?


でもあんなに堂々と言われると人間、不安になってくるもの。

そんな時に私ににわか仕込みの知識を授けてくれたのも本でした。


もうこんな状況で本をオススメしてる私を笑ってほしいんだけど、 池村聡著『はじめての著作権法』日経文庫 900円+税 オススメです(笑)


……今までのことを踏まえてコレを読むと、『著作権は創作者が創作と同時に自動発生するもので、文化庁への届け出や登録、登録免許税の支払いは一切必要ない』って書いてあるわけ。

コレは私の休日に作ったものだから職務著作にも該当しない(場合にもよるらしい)。

そんで私はにゃわら版の著作権を持っていて、著作権は切れてないし譲渡もしていないのでこのまま使われた場合、差し止め請求ができる。


おぉ~、読むべき読むべき~。

法律楽しい~。


この時、大学の法学部の仲良くしてくれてる教授にも相談していて、著作権法といえばこの先生!という方に学校をまたいで聞いてもらっていました。

働く人は読んで欲しい。たまたま書いたPOPがたまたま傑作だったとき、それが勤務中だったら職務著作になるかもしれません。


【著作権法では、職務著作ということで、業務上作成した著作物で、会社名義で公表されるものは、自動的に会社のものになったりすることになっており(著作権法15条)、それは、派遣先との関係でも成立するといわれていますので、その要件を満たせば、何も主張できないことになります。しかし、今回、職務時間外に作成したものであり、職務上作成されたものではないといえるのであれば、職務著作は成立しないことになります。そうすると、著者が著作権を持っていますから、削除請求できるわけですが、いまのサイトにアップすることは、許諾したわけですので、その際に、期限の定めなくアップすることを許諾したことになるのかが法律上は問題になるとのことです。

 詳細は裁判でも起こせば別ですが、さしあたり、①職務上製作したものではない(自分に著作権はある)、②現在の店舗に勤務する関係で、いわばボランタリーに(善意で)アップすることを承諾したのであり、無期限にアップすることを承諾したものではない、という理屈で、退職後は著作権に基づいて削除することができる、ということになるのだろうとおもいます。

 いずれにしても法的に問題があるのに、無理をしてまでサイトにアップし続ける利益があるとすれば、それは何なのか理解できません。】


まず内容どうのこうのよりアホにもわかる説明なことに感動した。

ありがとうございました!


ここでのポイントが

●にゃわら版はもともと本を学生に読んで欲しいと思ってボランティアで私が勝手にはじめたもの。

●にゃわら版のHPは私と仲良かった人が『もったいないからみんなに見てもらおうよ!』とつくってくれたもので契約書はナシ。

●サイネージににゃわら版のキャラクター“でんすけ”を載せることになったのは『明日までに描いてください。書店のところだけ寂しくなってもいいですか?』と言われて勤務中に描いた。原稿料はなかった。

●建物の名前をにゃわら版に載せて発行してるから建物のものとのことだが、載せてない。

●大学と丸善キャンパスショップ事業部の名前を出して活動しているとのことだが、実際私は要求された時にしか社名は出してない。

もともと店舗も名前も隠して活動していたのに公に発表したのは大家が管理しているツイッター。

●にゃわら版はHPをつくってくれた人が移動になってから、なんか嫌な予感がして描いてない。


正直、本を読んだ時点で“職務著作”になるかもなぁと思うものもある。

でもそれは私が雇われてる丸善キャンパスショップ事業部との間の話で店舗が入ってる建物が権利を主張できるものじゃない。

……というのを新店長に伝えると『この問題は会社と大家の問題だから、もう口出ししないでほしい。法務部に言われたから君にはもうにゃわら版は書きませんという念書を出してもらう』と拒絶された。


なんで?

なんで念書書かなきゃいけないの?

連載だって続いてるし、出版社からの絵の仕事も来てる。

海外文学フェアだってあるのに念書にサインしたら終わりじゃん。


完全に大家のお局様の言ってることもだんだん粗探しみたいになってきていて、これは嫌がらせなのだろうなと思った。

『これは丸善キャンパスショップの従業員と会社の話です』ってひとこと言えばいいのに事なかれ主義すぎて取り合ってもらえない。

そのままその話はうやむやになってモヤモヤしたまま2ヶ月が過ぎた。


★★★


出勤最終週に自分の荷物と仕事を片付けていたら支店長が来て、『あ、にゃわら版のことだけど、 新店長がグズグズしてたからその場で確認書をつくってハンコ捺して(お局様に)提出したよ。先方も納得してたから。まぁ向こうの主張はここ以外でもう描くなってことなんだと思うよ。悔しいかもしれないけど、他の店舗でも今までこうしてきたから理解してほしい』と言われて私は血の気が引いた。

私にその確認書の内容も教えず控えも渡すことなく契約するなんて、法的には何も効力ないかもしれないけど建物の中では別会社の従業員がつくったものでも大家の物なんて発想の人にそんなもの渡したら、退職後の私の活動にまで口を出されかねない。

この日、社会学部の教授が私の職場のグチャグチャを心配して副総長と他の教授、お局様の上司を含めた話し合いの場をつくってくれた。

そこで日頃の店の様子だとか教科書販売のことをお話ししたのだが、『にゃわら版のことも言っておきなよ』と促してくれたおかげでつくったものや実績だけ全部没収されそうなことを伝えたら、お局様の上司は『私はすでに著作権は著者にあるから削除するようにと指示を出しています。すぐに連絡して確認書も破棄させます』と約束してくれた。

やっと『著作権は私にありますし、もう描かないようにという確認書を“大家”が要求してるっておかしくないですか?』と話ができるマトモな人に会えた。

この場をつくってくれた先生には感謝しかない。


★★★


話し合いの翌日、『確認書は破棄させました。会社から連絡があると思います』とお局様の上司からメールが来た。

丸善キャンパスショップ事業部からは連絡は来なかった。本部にはどうでもいい話だし、余計なことをしやがってとしか思ってないだろう。

なにしろベテランスタッフたちが辞めた日に(もちろん私が辞めた日も)新店長すら挨拶に来なかったのだから。


あのあと、お局様は上司に呼ばれてなぜ勝手に確認書の提出を要求したのかという理由を聞かれたそうだ。

しどろもどろで納得できる理由は出て来なかったとのこと。


その面談のあと、お局様が『なんでひとりで会いに行かせたの?! 社員はついて行かなかったの! 大事になってますよ!』とウチのスタッフに言いに来たそうだ。

それもお局様の上司に報告した。ホウレンソウは大事。


★★★ 


私はすごく運がよかった。

会社は何もしてくれなかったが、たくさんの教授が力を貸してくれて無事にでんすけを取り返すことが出来た。

でももしいろんな学部の教授と仲良しじゃなかったらどうなっていたのだろう?

支店長の言っていた『今まで他店でもこうしてた』の“こうされた人たち”はどうなったのだろう?

他人の話でも悔しい。


いろいろやってる最中に『自分のせいで店に迷惑がかかると思わないの?』と同業者に言われたが、なぜ泣き寝入りしなきゃならないの?

やりかたが汚い場合は特に、闘った方がいい。いろんな人に相談した方がいい。


これから何かつくって活動する場合、友達同士でも簡単なものでいいから契約書はつくっておくことをオススメします。

私もまさか予想外の方向からこんなことになるとは思ってなかった。


この1年、店のこととにゃわら版の権利のことでストレスが溜まったらしく、白髪の毛束ができた。

12月には1ヶ月近く37.5度の熱が薬を飲んでも下がらなくて緊急の血液検査をした。

結果、数字だけ見るとこの上ないほどの健康で、ストレスという診断だった。


★★★


退職後、4/12にエプロンを返しに店に行った。

本来なら繁忙期で店も教科書会場もごった返しているはずなのに閑散としていて、明らかにやっつけ仕事の棚を見て悲しくなった。

教科書販売は発注漏れがたくさんあったらしい。

教授たちも何人か店の様子が変わったことに気付いたよ、と先生からメールが来た。

1年ぶりに来てくれた出版社の営業さんから私のスマホに『店に知ってる人がいないんですけど!』と電話もあった。


人が変わると店も変わる。

これからとってもいい店になる!と支店長も言っているのでゼロから頑張るのでしょう。


もう私は新人と同じ給料で他人をフォローしながら働くの疲れました。


★★★ 


私もこれからゆっくり就活する。

今回の店のゴタゴタは自分たちの価値を見つめ直すいいキッカケになったのかもしれないと最近は思う。

次だ次!


その前にでんすけと、出版社の依頼で本屋の店頭が楽しくなるような拡材をつくっている。

もちろん“にゃわら版”も。


これからもちょいちょい全国の本屋の棚にお邪魔することになりそうなので、でんすけを見かけたときは仲良くしてやってください。



追記

⚫︎みなさま、ご意見ありがとうございます。

不買運動の声もありますが、それで人件費削減にと切られるのはアルバイトです。

今回の件はそのアルバイトを大事にしなかった一部の人によって起きたこと。

会社にはもちろん真面目な社員の方もいらっしゃって、その人たちも苦労しています。

そのあたりは冷静に考えて頂きたいです。

どうぞ楽しいお買い物を。

⚫︎先生方からのお叱りは、その気持ちものすごくわかります。

常に直接意見を言える責任者本人がいないのです。

あとでお詫びのお手紙がありました。

大事にとってあります。

⚫︎ご自分の労働環境とかぶる方もいらっしゃると思います、ですが迷惑行為だけはおやめください。

私はそれを望んでいるわけではありません。

⚫︎いま、新しい環境で現場は苦労していると思います。

私たちに出来なかったことを、今いるスタッフの方たちにしてあげてほしいと切に願います。