『恋するロボット』の物語
2022年12月27日立川GREEN SPRINGSで、郵便屋さんのロボットと町のみなさんが一緒に作り上げた物語。ロボットの日記全編を公開! presented by ほころびオーケストラ
SCENE01
あ、電話が鳴ってる!
ハイハイ、こちらはロボット電報サービスです。
ピーという発信音の後に届けたいメッセージをお伝えください。
郵便屋のボクは町のみんなにメッセージを届けるのがお仕事です。素敵なメッセージをお届けしま……あ、ロボット文字化けしちゃった!(ナット・レンチ)
最近何をやっても上手くいかない(顔)
“思い出シアター”であのコとの出会いをエンドレスリピートで仕事も手につかない。
おまけに胸の中のハートが真っ赤っかになっちゃった。
これって故障? って聞いたら男の子が「病気!」だって。
えー心臓の病気?!って思ったけどよくよく考えたらボクはロボット。病気なんてしない。どうやらボクは「恋」をしたらしい。
これからどうなっちゃうんだろ??
SCENE02
ハイハイ ロボット電報です。メッセージをお伝えください。
「恋しいです」か。ボクもあのコにそんな言葉を伝えられたらなぁ。
町の子どもたちが遊びに来てくれた。お兄ちゃんはそろばんを習っていて、妹ちゃんは将来英語を勉強したいんだって! ウクレレで英語の歌を歌ったり、子どもたちと会話を楽しんだ。
そしたらあのコが通りかかって…何を話したらいいかわかんなくなって大あわて。
恋しい気持を伝えたくて胸のハートを見せようとしたら、間違えてハトを出しちゃった(はと・ため息)
あ、手紙配達に行かなくちゃ!
SCENE03
昨日はあのコと上手に話せなかった。失敗のメモリーって何度もリピートしちゃうよネ。。
そうだ、ボクには取扱説明書があるのだ。上手なお話の仕方を調べよう、って何も書いてない!
みんなはどんなお話する? みんなの事おしえてってたずねたら、子どもたちが「いちごが好き!」とか「ファッションをほめるといいよ」とか実用的なことまで教えてくれた。
いいネいいネ、どんどん書いてよ! ボクはルンルンで仕事に行ってきまーす!
SCENE04
今日もお仕事行ってきました!
お手紙の配達先のあおいちゃんって女の子を探したんだけど、全然見つからなかったー。町の子たちもみんな手伝ってくれたんだけどね。
そしたらあおいちゃんは、山形に引っ越しちゃったお友だちなんだって。
ごめんね山形はボクのかんかつ外。。「いつかお手紙渡せたらいいね」ってお返ししたよ。
オフィスに帰ったらびっくり! 子どもたちが取扱説明書を埋めてくれた!
どれどれ……
しゅみの話をする、あのコと手あそびする、好きなごはんの話……なるほどー!
これであのコとたくさんお話出来そう! ボクはうれしくてひとりでロボットミュージカルを始めちゃった。~恋ってなんてステキなの♪~
SCENE05
いつのまにかオフィスの周りは町の子どもたちでいっぱい!
ロポストには子どもたちからボク宛てのメッセージが入ってた。「一緒にあそぼ」「恋をあきらめないで」「♡♡♡」などなど。たくさん読んでたら元気がわいてきた。
ロボット電報サービスには働いているお父さんに「お仕事がんばって」ってメッセージの依頼が! 水のある大きな階段まで届けてって言われたけど場所がわからなかった。そしたら女の子が「私がつれていってあげる!」だって! 子どもたちと一緒に依頼主を探したよ。
ルンルンでオフィスの掃除をしていたら、あの子がプレゼントを置いていった。「大切な人へ」だって。「え、もしかしてボクに??」舞い上がっていたんだけど宛先がボクじゃない。
あのコの大事な人ってダレ?? ボクが落ち込んでいると、男の子が「みんなでプレゼントを作ってあのコに渡そう!」って提案してくれた。
ごめんネ、ボクはそんな気持ちになれずトボトボ家に帰ったんだ。
SCENE06
それからしばらくふさぎ込んで、久しぶりにオフィスに行くと、大変!
子どもたちが「お手紙たくさん入ってるよ!」としきりに声を上げている。
「仕事を休んでごめんなさい」ボクはみんなに謝った。「ウジウジ悩むのはもうやめた!」
ボクはあのコをデートに誘うことにした。一歩一歩、ふるえる足を前に進めてあのコに電話――留守電だった。「折り返しお電話ください」
待ってるときは胸が苦しい。子どもたちがオフィスを遊び場にしたり、いたずら電話をかけてきたり。恋の歌を歌おうとしたら止められたりで「もう、じゃましないでよー!」なんて言っちゃった。
そしたら男の子が息を切らしてやってきて「ダメだ、あのコどこにもいねぇよ!」だって。一生懸命探してきてくれたんだね。
池のほとりで集まって「Moon River」を歌ったよ。一人じゃないっていいね。
SCENE07
いつの間にかロボット電報もお手紙も、子どもたちがボクとお話する手段になっていた。ボクのオフィスもみんなが自由に出入りしてくれてにぎやかだ。
「ねえねえそれより聞いて!」あのコとデートの約束をしました! 夢にまで見たデートです。え、ロボットは夢を見るのかって? 見るんです。恋だってするんです。例えばそれがエラーだったとしても。
さて、そんなことよりデートってどうしたらいいの? こんな格好でデートに行っていいの?
困っていたらニコニコしたお姉さんが「そのままのアナタでいいんだよ」って言ってくれた。
隣のお姉さんは青い素敵なマフラーを貸してくれた。みんなおしゃれな服を着てていいなぁ。そうだ! ボクは白いコートを引っぱり出して、みんなに色を塗ってもらうことにした。
うんうんいい感じ! あ、それからプレゼントはどうしたらいいの?!
準備が大変! そう言えば男の子がみんなでプレゼントを作ったらいいと言っていたなぁ。。。
SCENE08
さぁ待ちに待ったデートの日! みんなのおかげでおしゃれはバッチリ。
「みなさん今まで見守ってくれてありがとう」ボクは感謝を伝えたよ。
始めから見守ってくれていた人たちは流石にもういなかったけど、代わりばんこにボクのことを応援してくれた。
ボクがあのコへのプレゼントに選んだのは、毎日水をやって育てたバラの花。
「ありがとね」バラを抜いてあのコの元へ向かう。すっかり暗くなっていて待ち合わせ場所の大きなケーキのイルミネーションが輝いていた。「いた、あのコだ」ボクはゆっくりあのコに近づくとあのコがボクに振り向いた。
バラの花を差し出すとあのコは小さくうなずいて、ボクらは歩き出したんだ。