スマイルアート・プロジェクトとは
スマイルアート・プロジェクトとは
人間の目には顔は丸くて、目と鼻と口がついている3つの点が集まった図形を人の顔と見るようにプログラムされている。「シミュラクラ」と呼ばれる現象です。
その完成した「作品」には、思わず「笑み」が噴きこぼれる瞬間があります。「こども」にとって、「顔は丸くて、目と鼻と口がついている」、足は「胴体の下にある棒のようなもの」といったレベルの単純なカテゴリーで見ているのです。これが、アール・ブリュットのデフォルトなのです。アール・ブリュットの優位性は、「こども」がデフォルトであること。「こども」はリアルとイメージの違いなどわからないし、遊びと仕事の違いもわかりません。
不完全な素材形状を不統一なアッセンブリを自由に動かし、組み替える。この性質をふんだんに利用し、生み出されたあの表情やその形象には、奇妙さはもちろんだが、ユ ーモラスな感じも与えられています。作品の数々は概して、「幼稚」で「プリミティブ」なものとして 消費されているようですが、それは作家の意図するところからは微妙にずれているとはいえません。それならば、この奇妙な「小芸術」=コモディティは「不完全」であることの正当性を表象しています。「完全」という概念に対して、直接的には社会的有用性のない「不完全」なオブジェを生み出すという皮肉をきかせたものです。つまり、完全とは不完全を許容することであると主張しています。
これらの作品はアートとコモディティの統合表現として、現代アートの領域にこだわらず、商業ディスプレイやデジタル・サイネージなどのBtoBの領域へ無名の障がい者や高齢者によるアール・ブリュットを持続可能なアーツ・アンド・クラフツとしてアプローチを展開していきます。そしてコスト意識を持って市場展開を図ることにより、障がい者たちの手による、アップサイクルで持続可能な「小芸術」=コモディティを持続可能な事業として取り組んでいきます。疲弊地区に集まって居住する障がい者やスラッカーの雇用を促進し、生活を再生させていく。家電製品を修理して再利用する割合を高め環境問題に寄与する。このリ・コンシャスでアップサイクルなアーツ・アンド・クラフツとは、ショークのアール・ブリュットの見方からすると、スラッカーとプリミティブが合流する点、あるいは区別されない点のことなのです。21世紀の芸術を変えるのは、アカデミーのアート教育を受けたアーチストと言われる人々ではありません。アール・ブリュットの感性により、今まで通りの常識や発想ではなく、何ものにもとらわれず、何かを創造できる無名の人間なのです。