『Good girl go to heaven,Bad girl go to everywhere(良い女の子は天国へ行けるが、悪い女の子はどこへでも行ける。)』 (ベズ柴崎)
文学フリマに行ってきた。
文学フリマは、プロ・アマがジャンルを問わず小説、ライトノベル、詩集、漫画、評論、雑誌、同人誌など自由なスタイルで「自分にとっての文学」をテーマに800ブース以上出展される、文学の即売会。
不良債権としての文学をどう打破していくかという議論が起こった末、文学版のコミケを目指し大塚英志の呼びかけにより02年に発足し、その後、東浩紀のゼロアカ道場や、一般来場していた又吉直樹と文藝春秋編集者の出会い、「夫のちんぽが入らない」こだまさん商業デビューなどなど、文学・文芸シーン活性の場となる。
過去何度か足を運んでいたが、今回、別件から回してなんとか会場に到着出来たのが閉館の30分前。
目当てのものはなんとか買うことができたが、書店では手に入れられない未知の世界、宝の山が目の前にたくさんありながら、さほどそれらを堀り当てる余裕はなかった。
閉館時、今回は約3600人の来場とアナウンスされていた。
「不良債権」と呼ばれた文学のイベント、一日六時間という開催期間でこれだけの人数が訪れたというのはとても感動的なことだ。
閉館時間を過ぎ、流通センター駅すぐそばのカフェで休憩をしていると四人組の女性が入ってきた。
明らかに文フリ帰りでは無さそうなその女性たちはまだらな香水の香りを振り撒きながら僕の隣の席に座り、大声で会話を始めた。
「野獣系の男は私が落とすから、あのロールキャベツっぽいのは○○ちゃんが狙って」
「・・の社長が、お気に入りの子だけを入れてるLINEグループがあってそれにどうやって入れるかいま策を練ってる」
「来週△△の彼氏とデートするんだけど」
台本かと思うようなそんな調子の会話が途切れることなく続けられ、すっかり聴き込んでしまった。
女性たちの会話を聴きながら、昔、中上健次と村上龍の対談で音楽と文学(と映画)の関係性について語られたものがあったが、なぜかそれを思い出した。
その対談中、二人は小説家であるが、精神は映画監督であり、音楽家であるというようなことが語られていた。(と思う。記憶違いだったらすません。)
カフェの四人の女性たちも、それぞれ何かしら会社務めだったり主婦だったりするのだろうが、映画監督あるいは女優であり、音楽家あるいは歌手であり、ファッションデザイナーあるいはスーパーモデルであり、小説家なのだろう。
そんなことをぼんやりと考えていた。
完全に疲れていた。
19:00の閉店時間まで女性たちのパロール/ラップ/歌声は続けられた。
恋と、欲と、それぞれが小さな罪を重ねることへの喜びに満ちた生きた詩がそこにあった。
そして、文学と言えばAI(人工知能)による文学というのがポコポコと生まれつつあるが、AI文学の作家性、評価とはいったい何をもって判断されるのだろう。
真実のみを代弁し続けてくれるものと、耳当たりのいい言葉を並べ続けてくれるもの、二つのAI文学(あるいはAIニュースメディア)があった場合、人はいったいどちらを支持するのだろう。
AIは、科学的な立場や表現と、非科学的な立場や表現とでは、どちらのほうが人間にとってより有益、有効であると判断するのだろう。
そして、きっと、AIによる文学やニュース、AIによる音楽、ラップ、絵画、映画、漫画、アニメ、ゲームなどもポコポコ生まれてきて、やがて主流にまでなる日は来るのか。
(以前も書いた気もするが、クリステン・スチュワートがAI技術を応用した短編映画と論文を発表し、いま我々が最初期の映画やアニメーションに対して感動と同時に不思議な感覚を覚えるのと同じように、次の世代でもしかしたらクリステンの映画がAI技術の応用作として振り返られたりするのかな、と週に三回くらい想像して興奮し続けている。)
AIは文化に、メディアに、経済に、政治に、どんどん利用され、時に都合の悪い真実へと人類を突き落としてくれるのだろう。
AIが入り込めない余地、聖域、原始的な場所はどこにあるのか。
そして、恋に対してはどのように応用されていくのか。
大して興味も知見もないAIと、文学と恋について小雨を浴びながら考えた日。
その他、Facebookがマッチングサービスを始めた件、イーロン・マスクがwebメディアを始める件、ハリル解任を機にサッカーについて関心が芽生え始めた件などありますが、どれもにわか興味過ぎるためまたの機会に。
(追わない可能性高し。)
4月に入ってから毎日、天気読みを聴いている。
梅雨明け頃までたぶん毎日聴く。
追記。
Tik Tokは、いま最も文学を感じる。
(それはつまり、最も映画を、そして音楽をも感じるということ。)
その速度にまったく追いつけない自分に、とても歯がゆく思うこの頃です。