映画『イニシェリン島の精霊』鑑賞。
第95回アカデミー賞の有力候補と言われる『イニシェリン島の精霊』鑑賞してきました。『スリービルボード』のマーティン・マクドナー監督&脚本です。『スリービルボード』のジェットコースター的な展開が面白かったことを覚えています。
あらすじはこちらの予告編でどうぞ。
小さな島のなかで、長年親友だったのに、ある日突然「お前のことが嫌いになった」と告げられたら? 「それってどういうこと?」ってなりますよね。相手に理由を聞いてみたところ、「死ぬまで残りの人生の暇つぶしのなかで、音楽家がするように、人々の心に残るような作品を作りたい」と言うことが理由だったようです。言われた方は、ただのいい人で、「いい人だって心に残る。両親はいい人だし、妹もいい人だし、自分の心に残っている!」と反論します。ここまでは口論のような展開だったのですが、突然サスペンスに?!きた!『スリービルボード』的展開! 曇り空の島と、まだ電気も通っていない1920年代の設定だったため、眠気がここで吹っ飛びました。
「今度、話しかけてきたら、指を1本ずつ切っていくぞ!」と。コワッ。そこまでして、今までの親友と絶縁したいのかと…。だけど、言われた方は相変わらずいい人で、「まさか~」みたいな感じで、「最近どう?作曲うまくいってる?」なんて、また話しかけちゃうんですね。
しかしある日、妹と家にいるときに、ドアに鳥が当たったかのようなズドンと音がして、外にでてみると、ドアに血が。そう。指がドアに投げつけられたのです?! わっ。本当にやったかと、またさらに怖くなりました。そんなとき、島で一番バカだと思っている友達に言われた言葉に刺激され、いい人だから、そのまま鵜呑みにしてしまったようで、また相手の家を訪ねるのです。もう、自分はNEW ME になったからと、意気揚々と。なんだか、このあたり恋愛映画のようにも見れます。(笑)
近づいてこないでオーラー全開の人のところに、また近づこうとする相手に対して、最大の復讐がきてしまいました。しかし同時に思いがけない悲劇もおきます。そのことについて牧師に懺悔しますが、それよりも指を切断するという自傷行為をした方が罪深いと、言われてしまいます。
そしてついに、いい人がブチ切れてしまうのです。一番恐ろしいことが起きてしまいました…。結末は劇場で。
この映画は、本当にいろいろな解釈ができるのだなと、鑑賞後にレビューや解説動画をいくつか視聴しまして気づけるところがいっぱいありました。舞台は、島の中だけなのに、言葉以外に読み取れるものがいっぱい存在しているのです。だから1回見ただけでは、全体の物語は理解できても、背景や脇役たちの言葉が物語っているサインなどは見逃してしまいます。そして大きなテーマとして、「内戦」が挙げられるようです。同じ島の中で仲のよかった親友が喧嘩をしている=まさに内戦を物語っています。
また、ただいい人で生きているだけの人生なのか? そんな良心的なことよりも、いかに世の中に作品を残していくか?の方が価値があると思う生き方なのか? ということも問われてきます。
もしかしたら、二人の男性は同性愛的な要素もあったのではないか? という、牧師からの男性愛への問い掛けからも推測できたりします。私的には、「自分を痛めつけることが、一番罪深い」と牧師が言った言葉が印象に残りました。
かつて友人だった2人の確執がどこまで続くのか、恐ろしいほどエスカレートしていく過程と意外な結末が楽しめた映画でした。