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YAMAHA FZ750 1985

2018.05.09 09:02

YAMAHA FZ750 1985y 

(リード)

ライバル他社にくらべて4気筒モデルの投入が遅かったヤマハだが、満を持して発売されたXJ750Eは、そのシルキーなタッチと品のいいスタイル、軽快な走りでなかなかの人気モデルとなった。ただこのXJは、750らしいステータス性や高速スポーツ&ツーリングマシンとしてのこだわり、人目をひくインパクトにはやや心許ないものがあり、クラストップの人気を得るには至らなかった。そこでヤマハは、エンジン、ボディ、シャシー、デザインなど、すべての部分に最新設計を施したマシンを登場させることになる。それがFZ750だ。


(本文)

 もっとも特徴的なのはエンジン。重心を下げ、吸気効率を向上させ、シリンダーヘッド周辺の冷却効果を上げるために採用された、45度という強前傾シリンダーの内部には、世界初の5バルブ燃焼室が採用されていたのである。

 いまでこそ4輪2輪を問わずさまざまな市販エンジンが存在する5バルブヘッドだが、当時のメカファンたちに与えた衝撃は相当なものがあった。吸気を3バルブにすることで低回転から高回転まで最適かつ大量な混合気を吸入することができるうえ、理想とされる球体燃焼室形状に近付いたため単位混合気あたりの燃焼効率も抜群。狭めのバルブ挟み角とフィンの少ない水冷シリンダー、ジェネレーターなど各種ユニットをクランク左右から追い出したスリム構造も採用され、エンジンデザイン的には従来のナナハンからやや逸脱してはいたが、このニューエンジンは手放しの評価をもって迎えられた。

 もともとヤマハのエンジンは、絹のように滑らかに回る優しげなタッチが身上だ。この滑らかなタッチをそのままに、アイドリングから超高回転まで一瞬のもたつきもなく、太いトルクを全域にわたって発生する。そのうえ、ゆっくり走ればじつに扱いやすくジェントルに、いざ回せば目の覚めるようなエキサイティングさを見せてくれるというのだから、評判にならないほうがおかしいだろう。

 スロットルに対する反応も素晴らしくリニアで、右手の微妙な動きに合わせ、750ccの大排気量エンジンがいかようにでも応えてくれる、そんな頼もしさも持ち合せていた。最高出力77ps、最大トルク7.0kg-mと、スペック的にもクラストップに君臨する数値を弾き出しているが、それ以上に乗り味の魅力が光っていた。

 エンジンの前後長が長いため、ボディはやや安定性重視のホイールベースが長いタイプで、ウインドプロテクション効果に優れたカウリングの装備ともあいまって、スポーツツアラー的なたたずまいを見せていた。しかし、その本質は素直で奥の深い、新時代を実感させるオールラウンド指向。実際、ワインディングでは侮れない駿足を発揮したし、市街地ランも器用にこなしてくれた。細身の角パイプフレームは高い剛性としなやかな身のこなしを兼ね備えており、スムーズで腰のしっかりしたサスペンション、前後18インチホイールによるニュートラルな旋回性と安定性の両立、タッチがよくコントローラブルなトリプルディスクブレーキ、どれをとっても品質感が伝わってきて、おとなしいながらじつに頼りがいのある手ごたえだった。

 バイクの完成度は抜群に高かったFZ750だが、唯一、発売時期には恵まれていなかった。というのも、世はまさにレプリカブームの真っ只中で、FZのようなスポーツツアラーに注目するライダーが少なかったのである。そのなかでもFZは大健闘したといえようが、のち1000ccエンジンのFZR1000、完全レプリカのFZR750へとレプリカマシンへ変貌してしまい、比較的短命なバイクに終わってしまった。最近になって再評価され、中古車市場でも値を上げてきていることを見るにつけ、バイクは性能や作りよりブームやイメージで売れる、という現実を最認識させられるような気がする。海外市場では根強い人気を保ち続けていたFZ750も、国内に限っては悲運のバイクだったのである。


FZX750 1986y 

 V-MAXに共通するドラッグイメージのボディに、FZ750と同様の5バルブDOHC4気筒ユニットを搭載。スタイリングはまったく異なるが、画期的なエンジンが与えられていたという点では共通する。’90年のマイナーチェンジモデルでは、吸排気のバルブタイミング変更とキャブセッティングの変更で、中低速域性能をさらに扱いやすいものとしている。ミッションも6速→5速に変更し、これにともなうギアレシオのワイド化で、出力特性にもよりフラットな傾向を与えている。2速~5速のレシオは従来モデルに比べ、高速向けの低レシオとし、余裕のクルージング性能を実現。また、マフラー内部の仕様変更による排気音の低減化で、よりジェントルな印象を強めているのも特徴だ。斬新なデザインとは裏腹に、コンパクトなボディと軽快なハンドリング、肩に力が入らないライディングポジション、トルクフルなエンジンフィーリングなど、扱いやすいロードスポーツとしての側面を持ち合せているためか、いまだに根強いファンの声に支えられている。


FZR750 1987y

  FZ750の5バルブジェネシスエンジンにさらに磨きをかけ、FZR1000と共通のアルミデルタボックスフレームに搭載した、ヤマハ初の本格レプリカ・ナナハンがFZR750だ。パワーユニットは、軽量化とフリクションロスの低減を重点に行い、ピストン、ピストンリング、コンロッドが新設計。往復運動マスで13%の減少が図られたことに加え、従来のダウンドラフトキャブの充填効率の向上をより確かなものにするF.A.I.S.(フラッシュ・エア・インテーク・システム)の採用などもあり、ピックアップの特性向上と一層のシャープな吹け上がりを実現している。車体関係では、フレームの剛性アップにともない、前後サスペンション/ブレーキも一層の強化が図られ、運動性能も飛躍的に進化している。特に前後サスに関しては、非常に高いレベルでのセッティング能力を持たせるなど、レースのベースマシンとしての資質の高さでも、内外から広く注目を集めた。


FZR1000 1989y/FZR1000 1991y

 スポーツツアラー的ないでたちで’87年にデビューしたFZR1000は、’89年のフルモデルチェンジにより、その名にふさわしいレーサーレプリカに生まれ変わった。そして、’91年モデルでは、メインフレームの剛性アップに加え、倒立フロントサスペンションとワークスマシン“YZF”譲りのアルミ製デルタボックスリアアームを採用するなど、運動性能も飛躍的に向上。ニューモデルGTS1000のベースにもなっているジェネシスコンセプトの最大排気量1002ccの5バルブエンジンは35度の前傾で搭載され、エキゾーストには排気デバイスEXUPが装着される。販売される国によっても異なるが、フルパワー仕様においては、145psのモンスターパワーを10000rpmで発揮。デュアルヘッドライトは、ロービーム側にプロジェクター、ハイビーム側にスタンダードタイプを装着。


FZR1000 1991

  ‘87年にビューして以来、FZRシリーズのフラッグシップモデルにふさわしい、威風堂々としたスタイリングと走り、そして充実した装備で人気のビッグモンスター。この年式から飛躍的な剛性アップを図ったアルミ製デルタボックスフレームには、ジェネシスコンセプトの前傾角35度・5バルブ並列4気筒エンジンを搭載。マイコン制御排気デバイスEXUPの採用などにより、全回転域がトルクの塊だ。街乗りでのスロー走行から、オーバー200km/hの高速クルージングまで、場所を選ばず快適な走りを約束する。足まわりはワークスマシン“YZF”譲りのφ41mm倒立フロントサスペンションを装備。積極的な低重心化により、ボディサイズを感じさせない軽快なハンドリングも大きな魅力だ。