妹の日記
妹は霊感が強い。
霊的な何かが私に近づくと、私をパシッと叩き追い払ってくれたりする。
これからお話しするものは、そんな私たち姉妹に起こった実話です。
どうぞ最後までお付き合いください。
※以下妹の日記より抜粋。
-----8/3日 金
6月に×が死んだけどどうでもいいわ。
姉が泣いているけど、なんとなく予想はついてたし、あたしは友の死に歓喜している。
(※×は、さばさばしてとっつきやすい女の子です)
誰にでも好かれてるけど、裏がありそうだって思う。
どこがって、表情は普通に話していても、相手に対し殺気が半端でないもん。
そんな×とつるむようになってからというもの、姉の下痢が続いている。
直接本人に聞いても「うるさい!」とのことなので、あくまで憶測。
あと~もういっこ。
×が姉に対する殺気、物凄い。
憎い相手のことを殺したいって思ったら、まず顔が歪むでしょう?
そういう時って、心もぐにゃ~っとなってるんだよ。で、反動で顔も歪む。
ふつーの妬みやウッザイ奴程度ならここで終わるけど、×はそれを超越してた。
姉と話すとき終始満面の笑み。
3人でテニスした帰り、聞こえるか聞こえないかの声量で、
「ころしたいころしたいころしたい」って呟きながら姉を見つめて後ろを歩いてたこともあった。
でも実害が出ないので放置してたら、夢に×が出てきた。
夢では、姉(OL)が仕事場に向かう電車とか仕事中の光景を×が見つめていて、
段々距離を縮めながら、あたしをニヤニヤ見つめてくる。
最初はなんだこれ?ってな感じで、姉の下痢との関連性を追及しようとしたんだ けど、めんどくさくなって止めた。
一週間に1,2回見るか、もしくは何も見ず、という感じだったけど回数が増えて、現実では×が笑わなくなった。
×は夢の中で「も (フフッ)い、いんだ(ハハハフ・・ッ)」って笑ってた。現実では笑わないのに。
姉はというと、下痢が治りいつもどおりなので放置・・したのがいけなかった。
姉は気が狂ってしまったのだ。
同じ言葉「ぱ」とか「ぺ+げぇ」の濁音を高速で連呼しながら、真夜中に泣きだすようになった。
あたしに「もおいいよおねえ?ね??xcvbんm、.ちゅ@おr」とか叫びだす。
両手両足バタバタして。壊れたラジカセみたいに。
(・・・・私にその記憶はありません。その間ぽっかりと時間が抜けたみたいに。
思い出せないというより、その時間を過ごした気がしないのです)
なんとも奇妙なので×に連絡をとった。
姉とまったく同じ言葉を連呼しながら、言葉ひとつの合間合間に「ご」「め」「ん」を呟いてた。
きっと、×はもう一人居た。
たまに言動がおかしかった。
話していて急に真顔になったり、この世の物でない気がした。
それは気のせいじゃなかった。
電話の数日後、×は姉の入院する病院の最寄の交差点に飛び込んだ。
司法解剖した結果、私が姉にあげた手袋を飲み込んで死んでいたという。
×の両親が姉の見舞いの際に「あなたのことが一番好きだと話していたの」と言って、
×のつけていたキーホルダーを置いていった。
中身には毛髪と赤に塗れた綿が入っていた。
母方の祖父にそれを渡し、×の四十九日が過ぎた時から姉がゆっくりゆっくりと戻っていった。
まったく世話の焼ける姉である。
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ここで日記は終わってます。
私は妹になにやら助けられたようです。