『イスラームから見た「世界史」』
<経緯>
自分が学んできた歴史に疑問を抱いた、それがこの本を手に取ったきっかけです。
日本の教育課程の世界史が、欧米に比重を置いた内容であることに違和感を感じ始めたのはつい最近です。
世界大戦を引き起こしたキリスト国家郡、十字軍を引き起こしたカトリック教会、インカ・マヤ文明を始めとした多くの先住民族を滅ぼした欧州各国、そして75年前の戦争で日本を打ち破った欧州各国。
世界の国々を蹂躙しつくした欧州各国によって、現代の歴史や経済は語られているのです。
私は国粋主義や軍国主義を掲げるつもりではないのですが、今、日本の高校で教えられている世界史がいかに偏ったものであるかを意識するようになりました。
そこで、現代の経済情勢で、日本が属する西側諸国の対抗勢力のひとつに数えられているイスラム教の視点からみた世界史がどんなものが気になったのです。
<内容>
世界史と銘打っていますが、実際は中東史がメインに語られています。
イスラム教が影響力を与えた範囲で考えれば当然のことですが、もっと広い視点でなかったのは少し残念。
この本のすごいところは、小沢千重子氏による日本訳の書き方です。
700頁にわたる膨大な文章ですが、異国の言葉を訳したとは思えないほど、綺麗な日本語になって綴られています。
通常、訳本は日本人に理解しにくい言い回しや過剰な修飾語が多いのですが、とにかく読みやすい作りになっています。
ムハンマドのイスラム教創始が序盤に語られ、正統カリフ・十字軍に対する防衛戦・モンゴル襲来・多くの王朝の分裂など、時代順に語られています。
イスラム教として完成された国家、オスマン帝国に至ってからはいかに欧州に食い物にされて崩壊に至ったか、非常に多くの頁を割いて語られています。
また、イスラエル建国に関しても、イスラム教側の視点で語られていたのは興味深いものでした。
日本の歴史の授業でこの本の視点から語られることはこれらか10年はまずないでしょうが、今と違った視点から歴史をみつめてみたい方や現代情勢の根幹にいつもある宗教対立などを探ってみたい方に、是非読んでいただきたい逸品です。