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YAMAHA OW-01(FZR750R) 1989

2018.05.10 08:49

YAMAHA OW-01(FZR750R) 1989y

(リード)

当時のヤマハは、おとなしく紳士的で、品のいいバイクを作るメーカー、というイメージが定着していた(現在でもそのイメージは残っているが)。もちろん、このイメージをスポーツ心の欠如と受け取ってしまうのは大間違いである。というのも、ヤマハはロードレース、モトクロス、トライアルをはじめ、レース活動には世界でも1~2を争うほど積極的に参加しており、モータースポーツに関する造詣がじつに深いメーカーだからだ。つまりそこには、ロードゴーイングモデルにはそれに最適な性格があり、レースフィールドからのテクノロジーをそのまま無加工にフィードバックするべきではない、という真面目な考え方があったのではないかと推測される。

(本文)

 実際、あのバイク界をひっくり返した初期型RZシリーズを見ても、目を見張るような速さとスポーツ性能は携えながら、じつに乗りやすく洗練されたフィールだった。とはいえ、元来のモータースポーツ好きの血は隠しようもない。レプリカブームが勃発し、各社がこぞってサーキットから飛び出したようなモデルを登場させるなか、ヤマハのレプリカは文句なしにクラストップの戦闘力を誇っていたし、市販車改造のプロダクションレースでも大活躍していた。 

 FZR750R、通称OW-01は、そんなヤマハレプリカの頂点と表現できる、コンペティティブきわまりないモデルであった。ベースとなったのは、ワークスレーサーのYZF750。鈴鹿8時間耐久2年連続制覇の偉業を筆頭に、あらゆるサーキットでその強さを見せつけてきた最先端のレーシングマシンを、そのまま市販車としてセッティングしたわけだ。ただしこのモデルは、いわゆる究極レプリカとして大量販売を目論むために作られたのではなく、あくまでレース参戦のためのベースマシンとして開発されている。そのため、価格はなんと200万円。各パーツには市販車らしからぬ高品質のものがおごられ、設計自体もワンオフに近いこだわりと速さの追求が行なわれている。

 つまりOW-01は、プロダクションモデルとしての体裁をととのえるために、一般の人でもいちおう買うことは可能ですよ、というモデルなのだ。もちろんこれは、仕方なく発売した、ということではまったくない。レースに全情熱をかたむけるプライベーターたちに贈られた、メーカーからのビッグなプレゼントなのである。

 水冷4スト4気筒20バルブエンジンは、そのルーツこそFZ750に端を発するユニットながら、すべての部分が新設計されてポテンシャルを大幅に向上させている。内部構造を見ても、徹底してレーシーかつ、チューニングアップに耐え得るだけのしっかりした設計になっており、各パーツのバランス取りや組み付け精度、微妙な製造誤差の追放など、地味ながら大切な部分もまったくないがしろにされていない。さらに、超高価なチタンコンロッドを採用するなど、常識外れともいうべき高級パーツをふんだんに採り入れている。

 車体回りも完全にサーキット用のディメンションで、街乗りなどではその性能をほとんど活かせないほど。公道走行車としての自主規制から、最高出力こそ77psに抑えられてはいるものの、マフラーを交換して各部をリセッティングし、保安部品を外しただけで、そのままレースに参加できるほどのポテンシャルと速さを持っていた。その後、プロダクション規定の変更などと絡みながら、1993年には後継モデル・YZF750 SPへと発展する。

 より高回転型になったエンジンや旋回性重視のディメンション、極太のアルミフレームに強靱な足回りなど、最新ワークスレーサーのノウハウを惜しみなく投入し、レースファンの間で再び熱狂的な歓迎を受ける。価格のほうも125万円と大幅に低減され、ストリートでも究極の速さを求めたいライダーたちのあこがれのマシンともなっている。


YZF750R/YZF750SP 1993y

 ワークスマシンと同じ“YZF”がネーミングに与えられた同モデルは、スーパーバイクレースやTT-F1のベースマシンとして人気のFZR750R(OW-01/1989y)の後継モデルとして登場。YZF750Rは一般ユース向けに、YZF750SPはスーパーバイクレース向けモディファイ時のハイポテンシャルを備えるスポーツプロダクション仕様という2バリエーションでの登場だ。パワーユニットはFZR750Rに採用の水冷DOHC並列4気筒5バルブエンジンをベースに、ワークスマシンYZF750の仕様をダイレクトに継承。性能面にかかわるパーツ類は全て新設計とした他、燃焼室のコンパクト化、吸排気バルブはさみ角変更、ポート及び吸気通路形状の見直しなどにより、いっそうの高性能化を実現。マシンの軽量化を図るため、フレームには、軽量・高剛性で定評のアルミ製デルタボックスタイプを採用。エンジンの搭載位置をはじめとする各寸法に関してもワークスマシンYZF750と同様のディメンションが与えられる。また、ハンドリングやコーナリング性能に大きく影響を及ぼすキャスター角の見直しやショートホイールベース化(1445mm→1420mm)により、旋回性能の向上を実現。最高出力12 5馬力というハイパワーに対応して、フロントには対向6ポットキャリパーのブレーキシステムを採用。強力なストッピングパワーを約束する。異彩を放つデュアルヘッドライトのフェアリングはクラス最小の空力値(Cd.a値0.293)を達成。194kgの乾燥重量(SPは191kg)もクラス最軽量として話題を呼んだ。YZF750SPでは、強制開閉のφ39mmVMキャブレターの採用をはじめ、3次元マップ制御イグナイターユニット、クロスミッション、FRPシングルシートといった専用パーツが標準で装備される。