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ラジオもねえ、コーラもねえ

2018.05.10 11:24

「はあ〜、ラジオもねえ、コーラもねえ」

「いやいや、いくらここがど田舎だっつってもよ逝くゾウよ、コーラくらいはあるべよ」

「ちがうんだべ。これはコミックソングってやつよ。大げさに言わんと面白くなかべ?」


   逝くゾウは壁にかかった時計を見る。午前2時を回っても作業は遅々として進まなかった。


「は〜ラジオもねえ、処女もいねえ」

「処女はおるべ」

「だ〜か〜ら!そういう問題じゃなかべーよ。面白いが面白ぐねーが、そこが重要なの!」

「そういうのを誇大広告って言うんじゃなかろうか」

「だーも!一旦休憩すんべ。寒いったらねえ」


   中古の一軒家の壁をぶちぬいて作った音楽録音所は、ろくな暖房施設がないため、夜は特に冷えた。だが逝くゾウたちは今日中にこの曲を仕上げなければならないのだ。


「おら、こんなふざけた歌詞のために曲作ったわけじゃねーぞ」

「またその話題か!いいか竜二、今はおめえの好きなベートルズだの、ストーンズだのは頭から消しとけ。番組プロデーサーがオラ達に求めてるのは斬新な面白さなの!」

 竜二は納得のいかない顔でタバコをふかした。

「こんなリズムだけの曲だって、作りたくなかったんだ」

「今はこれがナウなの!ヒップホップ!聞かせただろ!ランデーエムシーとか、エヌダブルエーとか!」

「ギターの無いロックなんで、ロックじゃねーべ」

「だから、これはヒップホップ!オールドスクールのヒップホップ!」

 

   逝くゾウは焦っていた。番組プロデーサーとは正午に会うことになっていた。完成した曲を持っていかなければ、テレビ出演のオーディションにすら回してもらえないのだ。

   電車の時間を考えると、作業にかけられる時間はあと4時間しか無い。


   逝くゾウがマイクの前に再び立った。

《おめえは無敵だべ》

  逝くゾウ心の師匠、イージーEが囁いた。

《ストレイト・アウタ・ど田舎根性だべ》

   逝くゾウの中に、最早、迷いは無かった。


「ラジオもねえ!スタバもねえ!トキ○が毎日ぐーるぐる」

「それ、今一番テレビでヤベーやつだべ」

   竜二が呆れ顔で呟く。

「パリピいねえ!オタクいねえ!あ○えは一月一度くる」

「それ、もっとヤベーべ」

「おらこんな村キレーだ〜、こんな村キレーだ〜、東京で処女買うだあ〜」