恋愛 ~5~
前夫と離婚する2年ほど前にわたしは病気に罹り
手術をしていた。
癌だった。
早期発見だったがまだ30代という若さの癌だったため
わたしは転移などが心配だった。
もちろん5年間は定期的に検診を受けなければならなかった。
それでも前夫には相変わらずの仕打ちを受けており
離婚する頃にはわたしは心身ともに生きる気力を失っていた。
そしてその病気の事があり
離婚の時わたしは子供を引き取る事が出来なかった。
その後 ロフトのあるワンルームの小さな部屋にわたしは1人で住んでいた。
ロフトに寝具と部屋にはテーブルがひとつ、
キッチンには電子レンジに四角く小さな冷蔵庫 電気ポットに携帯電話
それだけがわたしの持ち物だった。
仕事が休みの日は部屋のカーテンも開けず
1日のほとんどをロフトで過ごした。
そんな生活を始めた頃
わたしは彼に出逢った。
出逢いから1年程過ぎたある日
彼が車で部屋まで迎えに来てくれた事がきっかけとなり
わたしは初めて彼を部屋に入れた。
テーブルがぽつんとひとつ。
それだけの部屋に彼はさぞかし驚いた事だろう。
そしてこんな生活をしている事情を
わたしはポツリポツリと彼に打ち明けた。
その日から彼は仕事が休みの日
必ず逢いに来てくれるようになった。
余りにも生活感の無い部屋で
細々と暮らしていたわたしが心配だったのだろう、
テレビやソファーなどを運んでくれたり
ただ静かにわたしの傍にいてくれた。
わたしは前夫にされた仕打ちを
何かの拍子に突然思い出し涙が止まらなくなることが度々あった。
今まではひとりでただ泣き続けたが
彼が居るときは彼に話を聞いてもらう事で心がだいぶ軽くなった。
彼はわたしが泣き止むと
「離婚出来て良かったね。」と
必ず慰めてくれた。
それでも今までの過去の全てを払拭する事は難しく
わたし心の回復はなかなか訪れなかった。
続く・・・