同棲 ~4~
その後も変わらず支え合いながら
わたし達はつつましく暮らしていた。
その頃には辛い出来事を思い出し涙する事も少なくなり
わたしは少しずつ本来の自分らしさを取り戻しつつあった。
けれどもその自分らしさを取り戻した事により
「なぜ子供を置いてきてしまったんだろう。」と言う自責の念にさいなまれ
涙するようになっていった。
あの頃のわたしは前夫によるいじめを受け続け
自分の人格を全否定されてきたため自信を失い
この世に不必要な人間と真に思い込んでいた。
子供を1人で育てられる自信などあるはずも無く
癌が転移して早死にするだろうなどと思い
わたしが引き取れば子供が不幸になり可哀想だとさえ思い込んでしまっていた。
離婚の時子供と会う事を特に制限されなかったので
わたしが会おうと思えば子供とは自由に会う事が出来た。
そしてわたしは精神的にかなり安定して来た頃
初めて子供をマンションに連れて行った。
それを期に頻繁に子供と会うようになり
子供が寂しくならないように心がけた。
彼には「子供に会いたい 子供と一緒に暮らしたい」と
わたしは日々伝えていた。
部屋に連れて行くのは彼が居ない時が多かったが、
ある日彼がいる時に連れて行き
彼は初めて子供と対面した。
「こんにちは。・・・お兄さん背が高いんですね。」
子供の彼への第一声だった。
「こんにちは。」と
小さな声で彼も言った。
この頃彼はまだ22歳になったばかりで
小学生の子供とどう接したらいいのか戸惑っているようだった。
ご飯は冷凍ばっかりだよ
と言う子供に心が痛み
その日から時間がある時は必ずご飯を食べさせた。
「やっぱりお母さんの作ったご飯は美味しい!」
子供はそう言って嬉しそうにたくさん食べてくれた。
わたしは子供と会える事が嬉しく
部屋に連れてくると母親らしく世話を焼き
子供をとてもかわいがった。
彼は後にその時のわたしの様子についてこう言った。
「あんなに明るく楽しそうに笑うチョコミントさんを初めて見た。
嬉しそうに子供をかわいがる姿を見て俺も嬉しかった。
俺も子供が欲しくなっちゃったよ。」
この2年後
わたし達は本当に子供を授かる事になるのだが、
この時はまさか2人にこんな未来が待っているなんて
わたし達には知る由も無かった。
続く・・・