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行政書士事務所 ALL C's

相続したくない/させたくない不動産

2023.02.28 09:13

かなり久しぶりの投稿になります。

ご無沙汰しておりました、渡部です。


昨年前半は事業復活支援金の手続きに、後半は遺言・相続・生前対策関連の業務に携わっておりました。

遺言・相続・生前対策などの相談中で特にお困りの方が多いと感じられたのが「空き家・空き地」に関することです。


・被相続人の逝去によって空き家になった

・自己が世を去った後に空き家になる

・過去の相続手続きで抜け落ちて名義が残っている

・共有者や相続人の判断能力が欠けている

・長年の放置によって相続人が数十人になっている


また、相続財産に不動産が含まれている場合、相続放棄するとどうなるのかという質問も多いです。

先に列挙したようなケースの場合は特にその確率が高いです。


なので、ここに「相続放棄すると相続財産中の不動産はどうなるのか」を書いておきます。


裁判所で相続放棄の申述が受理されますと申述者は「相続発生時に遡って相続人でない」ことになります。

申述者が相続人でないことになった結果、「後順位相続人に相続権が移る」ことになります。

相続権の順位については詳しく解説している方が数多いらっしゃいますので割愛します。

後順位相続人は先順位相続人が相続放棄した後にしか相続放棄することはできません。

先順位相続人が存在する間は相続権が無いからです。

自己に無い権利を放棄することができないのは理解しやすいと思います。

ここで問題です。


Q 順次相続放棄がなされ、相続人がいなくなった遺産はどうなるか。




答えは「国庫に入る」・・・




ではなく、「財団化する」です。

すぐさま国庫に帰属したりはしません。

そして、「最後に相続放棄した人」には遺産に対する管理義務が残ります。

管理義務の程度は「自己の財産と同程度」です。

ちなみに同順位相続人は同時に相続放棄の申述ができますので、最後に相続権を取得した相続人全員が同時に手続きすると管理義務も全員で持ち合うことができます。

相続財産中の不動産が原因で第三者に対して何らかの損害を与えた場合の責任負担も全員で分かち合えます。

義務を免れるために我先にと相続放棄するのは「調和」の花言葉を持つコスモスの徽章を付けている行政書士としておススメすることができません。

話は戻りますが、その管理義務は家庭裁判所が選任する「相続財産管理人」が就職するまで続きます。


しかし、当然ですが何もせずにただ待っていても審判は出ませんし、相続財産管理人が自然発生することもありません。

相続放棄の手続きをした家庭裁判所に相続財産管理人選任の申立をしてその審判があり相続財産管理人が就職した時点で管理義務は相続財産管理人に移ります。

相続財産管理人は相続財産を管理、清算する人で弁護士や司法書士が選任されます。

最後に相続放棄した者=相続財産の管理義務者=相続財産管理人ですので、家庭裁判所に申し立てて専門家に相続財産管理人を代わってもらうというのが分かりやすいと思います。


専門家に代わってもらう以上、その専門家に対する報酬が発生します。

相続財産管理人への報酬源泉は基本的に遺産財団そのものになりますが、相続放棄される内容なので足りない場合も当然に生じます。

それらを見越して相続財産管理人選任申立時に申立人は報酬に充てるための予納金を裁判所に納める必要があります。

清算後に残った予納金は還付されます。

相続放棄された不動産は最終的に引き受ける者がいなかった場合にようやく国庫に帰属します。

清算が終わるまでの間、選任された相続財産管理人への報酬支払は継続します。


相続放棄における注意点は以下のとおり。

1、後順位相続人に相続権が移る

2、管理義務者は「最後に相続放棄した者」

3、相続財産管理人選任の申立権者は「最後に相続放棄した者」

4、相続財産管理人選任申立時に予納金の納付が必要

5、相続財産管理人が就職してようやく管理義務がなくなる

6、予納金の余剰分は清算後に還付される

7、清算完了まで選任された相続財産管理人への報酬支払が継続する


だいぶ遠い道のりですし、Webや書籍を頼りに勉強し、自力で相続放棄の申述手続きをしても相続財産管理人への報酬で結局出費があります。

相続財産が多額の債務超過であれば費用を払ってでも相続放棄したほうが良いでしょう。

しかし、不動産の維持管理が困難という理由だけで相続放棄するのは得策ではありません。


そんなあなたに朗報です!


今年の4月27日から新しい制度が始まります。

その名も・・・


「相続土地国庫帰属制度」


なんと解り易い制度名でしょうか。

この制度で国庫帰属できるのは「相続によって得た土地」に限られます。

この制度の素晴らしいところは「相続の時期を問わない」ことです。

「相続放置していた土地」も、「相続して放置していた土地」も対象になります。

「相続放棄した土地」は当然対象外です。

ただし、土地上に建物が存在せず、適切に管理された状態で最低20万円の負担金が必要など条件を満たす必要があります。

土地上に建物が存在する場合は解体撤去し、更地にしたあとに申請する必要があります。

適切に管理された状態という条件があるのは、放置しっぱなしで荒れ放題の土地をいつでも負担金さえ払えば国庫に帰属できるとなれば日本中に荒れ放題の土地を創出する制度になってしまうからです。

また、負担金については10年分の維持管理費相当分となっています。

土地の所在や地目、面積によって負担金の額は変わります。

近隣との争いがある、利用困難(崖地など)、第三者の権利が存在する、利用される予定がある、維持管理に多額の費用がかかるなどの問題がある土地は対象外となります。

負担金があるとはいえ、帰属後は国が維持管理する=税金によって維持管理されることになるので国庫に過大な負担をかけられないということです。

建物が存在する土地が制度の対象外になるのも同じ理由からです。


相続土地国庫帰属制度の詳しい内容や細かい条件は法務省のHPに掲載されています。

負担金額計算式や却下事由、不承認事由も掲載されています。

「相続土地国庫帰属制度」で検索すれば見つかると思います。

※当職は信用できるサイトであっても他サイトへのリンクは付けないのが吉と考えています。


そして、その申請書類の作成を代行できるのは「弁護士・司法書士・行政書士」に限られます。

申請は必ず本人(相続人)申請で、代理申請は認められず、書類作成の代行のみ可能です。

これは弁護士・司法書士であっても同様です。


相続したくない土地に悩まれる方は是非、ご相談ください。

当事務所はあらゆる相談に対して初回30分間無料で応じています。