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紺碧の採掘師2

第7章 03

2023.03.09 12:00

所変わって死然雲海の中で待機中のブルーアゲートとカルセドニー。

ブルー船内の食堂では礼一と歩が向き合って席に着き、お互いスマホを片手にゲームをしている。

礼一、ゲームをやめてテーブルに突っ伏すと「オフラインは、つまらーん…。」

歩「ここ管理波が無いからネット繋がらんしな…。」

礼一「ゲームより外の探検したい。この死然雲海とかいう不思議世界を。」

歩、ちょっと驚いて「そうかな。」

礼一「うん。俺、探知だからそう思うのかも。ここのエネルギーって不思議で、強くなったり弱くなったり。」

歩「…へぇ。」


カルセドニーでは護が船内通路を歩いてブリッジに入ると「あれ。いない。」

通路に戻って『船長部屋』というプレートの付いたドアをノックすると、中から「どうぞ」と返事が。ドアを開けると駿河が本を片手にベッドに寝っ転がっていた。

護「昼寝してた?」

駿河「いや、寝てはいない。本読んでた。」と手に持った本を見せる。

護「ああそれ有翼種の…イェソドの航空法のやつ。」

駿河「うん。いつかイェソドの船の免許取りたいからさ。ところで何か用?」

護「別に。ブリッジ行ったら誰も居ないからここかなって。黒船まだかなぁ。」

駿河「そろそろ来てもいい筈だけど。ちょっとブルーと一緒にこっちがカッ飛びすぎたかな。」

護「それともまた向こうで何かありましたかね。」と言いつつドアを開けたまま、狭い船室に入って来る。

駿河「かもなぁ。」

護「ところで船長!本日分の稼ぎがパァです。このロスは管理様に請求しても」

駿河「それより船体です。カルさんの傷をだな!」

すると部屋の入り口から「黒船が来たぞ。管理を引き連れて。」

護は振り向き、入り口に立つカルロスに「管理も…?」

駿河、ベッドから起き上がると「どこまで付いて来る気なのか。…ここで皆で話し合いでもする?」

護「えぇ…。めんどくさ…。」

カルロス「来るならイェソドまで来いって感じだな。どうせ街の中には入れんし。」

護「『壁』あるし、警備ガッチリしてるから。」

駿河「ならこっちはとっとと出発しますか。」

そこでカルロスがふと「おや?」

護「どうしたん。」

カルロス「シトリンの探知が上総を妨害し始めたぞ。つまり管理はイェソドに行きたくないんだな本当は。」

駿河「だろーな。」

カルロス「まぁジュニパーさんに負けるようじゃ上総もまだまだって事で。こっちは気にせず出発しよう。」

護「スパルタ…。」



黒船のブリッジでは。

上総が辟易した顔で「船長、なんか俺、探知妨害されてるんですけど…。」

ネイビー「って事は、やっぱ管理さんイェソド行きたくないのね。」

総司「誰に妨害されてる?」

上総「シトリン。」

総司「シトリンか…」

上総「以前、カルロスさんが苦手だって言ってたのが良く分かる。この探知妨害は嫌だなぁ…あ!」と言って「ブルーとカルセドニーが動いた!先に進んでる!」

総司「出発したか。」

上総「俺が探知妨害されてるの知ってて出発するとか…カルロスさん!くっそー…。」と言って探知のエネルギーを上げる。上総の身体の周囲が若干淡い青色に光る。

ネイビー「師匠の愛だわね。」

上総「お?後ろからレッド来た。もうすぐレーダーに出るよ。凄い速さ。」

ネイビー、レーダーを見て「出た。速いわね!…船長問題、解決したのかな。」

総司「…管理に言われてカッ飛んで来たんじゃない事を祈ろう。」

上総「俺、この状態でクォーツにも探知妨害されたらマジでヤバイんですが。」

ネイビー「カルロスさんの弟子でしょ!」

上総「そりゃそうだけど…。」

後方から飛んできたレッドは管理の船をどんどん追い越しシトリンを越えて黒船の真上に来る。

総司「なんだなんだ上に来たぞ。」

ネイビー「また突撃して来るのかな…。」と言って「え。」と驚く。

上総も「え。」と驚く。

レッドは黒船を追い越して前に出て、先導するように先を飛ぶ。

上総「おー…。俺の仕事無くなったー…。」

ネイビー「って!そこの君!」

上総「あいつ俺が探知妨害されてるの知って前に出たんだな。さすがクォーツ!」

総司「…進路を探知しなくていいならシトリンをガチで妨害出来るのでは?上総君」

上総、総司を見て「なるほ!」と言うと「仕返しします!」エネルギーをバンと上げる。


シトリンのブリッジではジュニパーが難しい顔をして「ちょっと…やぁねぇ黒船の子が本気出してきたわ。妨害が相殺されちゃう。」と唸る。

綱紀は、そんなジュニパーを眺めつつ(上総、ジュニパーと互角に渡り合えるようになったのか…。SSFの人工種の中で、俺だけどんどんダメな奴になっていく…。)と暗い顔で俯いて(もう嫌だ…ここから逃げたい、あいつのように…。でも俺は、逃げる度胸すら無い…。)

楓「それよりレッドが前に出たのはどういう事?進路妨害には見えないんだけど。」

そこへトゥルルルと電話が掛かって来る。楓は受話器を取り「はいシトリンの楓です。…えっちょっと待って、臨時にって、船長に何かあったの?」

ウィンザー『諸事情ありまして、代理です。シトリンもイェソドに行きませんか!』

楓「そう言われても…管理が。」

ウィンザー『だってもうシトリンだけなんですよ、他の船は皆、管理と関係なくイェソドに行く事にしたんです。』

楓「…えっ…。レッドも?」

ウィンザー『はい。ですからシトリンも一緒にどうですか、と。』

楓「どう…って…。」

ウィンザー『では、失礼します。』と通話を切る。

楓「えっ、あの!…切れちゃった…。」と言って受話器を置くと「レッドがイェソドに行くって…。」

ジュニパー「ええ!じゃあアタシの妨害、意味ないじゃない!」

楓「もしウチの船だけ残ったら、管理の集中砲火浴びそうよね…。もう何がどうなってるのよ!」

そこへリリリリと緊急電話のコールが鳴る。

楓「…あー…。もうー!どうしよう!」と困ったように叫ぶと「無視する訳にもいかないし…!」と言って受話器を取り「はいシトリンです。」と言い「…あの、申し訳ありません、本船はイェソドに行く事にします。…それでは、失礼します!」と言い電話を切ると、大きな溜息をついて「副長、レッドの横に並んで!」

コルド「…い、行くのか本当に?」

楓「だってしょうがないじゃない!ブルーもレッドも行っちゃったもの!むしろ行かない決断する方が、怖いんです!」

コルド「それは分かるがー…。」

シトリンは速度を上げ、黒船を追い越しレッドと並ぶ。


黒船のブリッジでは。

総司「何があったか知らないけど、シトリンもイェソドへ行くようだ。」

上総「そして俺の仕事は完全に無くなった。」

総司「いやカルセドニーの動向を見るという仕事が」

上総「ああ!」

総司「何なら後ろの管理船団を妨害するっていうのも」

上総「そんなの俺一人で無理だし!そもそも目視できるし!」

総司「まぁなー。」と言い「しかしどこまで付いて来る気かね。管理さんは。イェソドまで来るのかな。」

ネイビー「またターさんがビックリするわねぇ…。突然こんな船団連れて来て!って」

総司「まぁなぁ。」

上総「あれ。カルセドニー止まってる。雲海の中で。」

総司「…後続待ちか。」



死然雲海の中に一時停止していたカルセドニーとブルーアゲートは、少し先の古い遺跡の中の拓けた場所に移動し、着陸する。

カルセドニーのブリッジではカルロスが探知して「…結局シトリンも来るのか…。」と呟く。

操縦席の駿河は腕組みして「それはいいとして、管理も…」

カルロス「来てる。船団が黒船にピッタリと。」

駿河「流石に管理船団を連れて行ったらターさんが激怒する…。3隻増えただけでも驚くのに。」

護「俺のドンブラコからカルさんが来てアンバーが来て黒船が来て、更に3隻と管理船団?」

カルロス「どこまで規模がデカくなるのか。」

護「ふと思ったんだけど。3隻ってイェソドで何すんの?鉱石採掘?」

カルロス「それ以外に何があるんだ。」

護「鉱石採掘だけなら警備のレトラさんに言えば許されるかなぁ。街に行くのはダメだろうけど。」

駿河「全隻でイェソド鉱石ガンガン採るのかぁ。凄い採掘量だ。」

護「管理さんも本部も大喜びで万歳三唱では。」

駿河「すると、…何で管理が黒船について来る?」

護「管理したいから。保護者なんですよ。」

駿河「ちょっと武藤に聞いてみよう。」と言って操縦席の電話の受話器を取らずにブルーの番号を押す。するとスピーカーから相手の声が流れて来る。

武藤『はいブルー武藤です。』

駿河、耳に着けたインカムに「駿河です。ちと聞きたいんだけど、3隻って何でイェソドに行こうとしてたの?」

武藤『知らん。』

駿河「ってオイ。」

武藤『…基本的には黒船の採掘量が落ちたから他の船を黒船の代わりにイェソド行かせるって話だー。んで黒船に有翼種に交渉させるから3隻は付いていけと。…で、有翼種の審査受けて認められた船が鉱石採掘できるみたいな。』

駿河「はぁ。」

護「なんか勝手に決めてるなぁ。」

カルロス「いつもの事だ。」

武藤『ここからどーなるのか知らんけど、とりあえず俺は普通に仕事出来て、管理様に文句言われなかったらそれでオッケーだ。』

駿河「…管理様に文句は言われるかも…。」

武藤『せめて鉱石ガッツリ採って帰るわい。』

駿河「んー…。」と言い「まぁわかった。切るよ。」と通信を切る。

そこへカルロスが「皆さん吉報です。管理の船団が黒船から離れ始めた。」

護「良かった良かった。」

駿河「何はともあれ皆、鉱石採掘して戻ればいいんだよな?管理はほっといて。」

護「多分?」

カルロス「管理は単に仕切りたいだけでは。…そろそろ黒船が通信可能な距離に来る。」

駿河「んじゃ黒船にも聞いてみるか。」と言い操縦席の電話のボタンに手を伸ばすと、今度は黒船の番号を押して暫し待つ。「まだ遠いか。…繋がるかな?」

少しして、スピーカーから相手の声が流れて来る。

総司『はい黒船の総司です。』

駿河「駿河です。…今、イェソドに向かってる船はイェソド鉱石採掘が目的なんですよね?」

総司『…そうとも言えるし違うとも言える。』

駿河「違う?…すると何で他船をイェソドに連れて行くのかと。ブルーに聞いたら黒船の代わりに…ってそういえば何で黒船の採掘量って落ちたんですか。」

総司『落ちたんじゃなくて意図的に落としたんですよ。あまりに管理がウザイんで。』

駿河「はぁ。」

総司『で、管理は黒船の代わりに3隻の中から1隻を選んでイェソドに行かせようとした、その選考方法が有翼種の審査で。源泉石を採れと。』と言った瞬間

護と駿河が同時に「源泉石?」と叫ぶ

護、思わず「何で管理が源泉石?」

総司『なんかアンバーが有翼種の船団採掘の選考に参加するんでそれを3隻にも受けろと。その選考課題が』

途端に護が「なんだとう!」

駿河「ここに超絶にショックを受けている人が。」

護「それ元々はカルセドニーがぁぁぁ!俺が参加したくて頑張ってきたのに!」

総司『そうなんですか。…で、管理がウチの船に3隻をイェソドに連れて行って有翼種に参加交渉をしろと言うんで嫌ですと断ったらこういう事態になりました。』

護「ってかアンバーは!」

総司『アンバーは本日はお休みです。』

カルロス「多分、アンバーに頼めと言ったら何が何でも黒船が連れて行けと管理にゴリ押しされたに一票。」

護「なるほ!」

駿河「しかし何で管理が選考の事を知ってる…剣菱さんが言ったのかなぁ…。」

カルロス「アンバーのメンバーがどっかで話してたのを管理が小耳に挟んだとか。」

駿河「かもなー。」と言い「しかしそうすると、ここから一体どうしたら?」

総司『わかりません!ウチの船は本日普通に仕事しようとしたら管理に邪魔されただけなので。』

駿河「ウチの船もそうなんですが。…まぁ全員そうだと思うけど。」

総司『ただ個人的にはその船団採掘の選考には興味ありますけどね。カルセドニーとアンバーが参加するのなら。』

護「…まぁ黒船は話に乗って来るだろうなーとは思ってましたよ。アンバー頑張れ。」

カルロス「穣が喜ぶ…。」

駿河「…何なら管理さんの計画通りに全隻エントリーしたら、選ばれた船は堂々とイェソドに行ける事にはなる。…というか、黒船とアンバーは何がどうでも勝手に行くんで他の3隻なんだよ。もし本当にイェソドで採掘したかったら選考頑張ってね!という。」

総司『おお。』

駿河「ちなみにウチの船は小型船、黒船とアンバーは大型船の枠なので、黒船はアンバーと戦って下さい。」

総司『横でウチの採掘監督が幸せそうな顔をしています。上総は安堵の表情です。』

駿河「そりゃどんだけカルさんが凄くても同じ枠だったら護さんが死ぬ…。何はともあれ、3隻にこの話をしないと。」

既に黒船とレッド、シトリンは、ブルーとカルセドニーの上空に到着し、その場で待機している。

総司『ではここで一旦着陸して、全員で話し合いしますか。』

駿河「そうしよう。」


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