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シナリオの海

Snow Dome

2023.03.06 18:18

永遠の愛など無いと知っているけど

今だけは嘘と本音を閉じ込める

そして溶けない雪を降らそう

まやかしのスノードームに
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【人物紹介】

幸…愛が何かを見失った女性。仕事は割と出来てしまう甘え下手。

  家事は苦手。雪が嫌いで寒い季節はバカを繰り返してしまう。そんな自分が嫌い。


男…自らをペットにして欲しいと頼み込み幸のペットとなって一緒に住む事になる。

  本名、年齢など素性は全て謎。

レオ…男が幸のペットになった時の名前。口は悪いが料理が上手く面倒見が良い。

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『Snow Dome』

作…七海あお

幸…

男/レオ…
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※こちらのキャス画はお相手してくださったREN'sJacksonさんに

お披露目の際にプレゼントしていただきました。

ご使用に際は一言お声がけいただけますと嬉しいです。



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↓ここから台本です

〈幸の部屋︰寝室〉

■下着姿で眠る女、隣には上裸の男がこちらを向いて眠っている


「…っ

 頭、痛っ…え?…誰…」


幸M

人間は成長していく生き物だと言ったやつの舌を今すぐ引っこ抜いてやりたい

だって私は過去の経験から何も学習せず

こうしてまた同じ過ちを繰り返しているのだから


「ああ。起きた?おはよう」


「あっ…あの?

 一応確認なんですけど…

 …私から…誘った感じ…ですよね?」


「うん。帰ろうとしたら寂しいから一緒に寝てって」


「ああやっぱり…

 あの…本当に申し訳ないんですけど

 私、昨日の事なんにも覚えてなくて」


「だろうな。相当酔ってたもん」


「ですよね…

 それに今、彼氏とかセフレとか作る気も正直無くて…

 悪いんですけど、頭痛いし1人になりたいから…出てってもらえませんか?」


「無理」


「えっ?

 いや、無理って言われても…」


「これ昨日Barで話したんだけどさ…

 俺、一緒に住んでた女に浮気されたの。

 しかもあいつ今、部屋に男連れ込んだままで」


「ああ

 それはなんともお気の毒で…」


「そんな部屋に帰れると思うか?」


「同情はしますけど。

 でも…

 それとこれとは関係なく無いですか?」


「部屋、いくつかあるみたいだし住むとこ見つけるまでで良いから

 ここに置いてくれ」


「いや、だから彼氏もセフレも作る気無いって言いましたよね…」


「別にどちらにもなろうと思ってないから。

 俺の事はそうだな…

 ペット…

 そう!ペットだと思ってくれれば良い」


「ペット!?」


「なんか昔ドラマであったろ?

 男を拾ってペットとして飼う女の人の話し…」


「いや、あったけど…

 あれはドラマだからであってこれは現実だし…」


「頼む!

 なるべく早く次の所決めて出ていくから。

 それにお前が望まないなら一切手は出さないって約束する。

 寝るのはリビングにあったソファーか、なんなら床でも構わない!」


「そんな事言われても…」


「ちなみに俺、昨日お前に手は出してないぞ?」


「えっ?そう…なんですか?」


「お前が暑いって勝手に服脱いで

 寂しいから1人にしないでって抱きついて離してくれないから仕方なく」


「……」


「ここに置いてくれるなら…俺の出来ることは何でもする!

 もちろん部屋代も払う」


「何でもって…た、例えば?」


「家事全般。

 洗濯とか掃除とかマッサージとかそれに料理…とか?」


「料理!?

あっ…」


「言ってたもんなぁ料理苦手って…

 これでコンビニ飯やカップラーメン生活から抜け出せるぞ?」


「そ…それはかなり魅力的だけど…」


「ああもうこんな時間か…

 そういえば腹減ったな…ちょっとキッチン借りるぞー」


「えっ?ちょっとそんな勝手に…

 ねぇ!待ってってば…」



◾︎キッチンの冷蔵庫を開ける男

◾︎慌てて追いかける幸



「どれどれ…

 ああ…なるほど

 ほぼエナジードリンクと酒だな…

 料理しないやつの冷蔵庫ってこうなってるのかぁ…」


「あの!

 いくらなんでも初対面で人の冷蔵庫勝手に開けるとかさすがにマナー違反だと思うんですけど?」


「うーん

 この材料で作るとしたら…

 あっ、座って待ってて

 キッチン借りるな~」


「ねぇ!だから勝手に…」


「邪魔。

 とりあえず飯できるまであっちで座って大人しく待ってろ」


「ああ!もう!なんなのよぉ!」



◾︎不機嫌そうに、でも空腹には勝てずに

座って待つ幸

◾︎料理を完成させて持ってくる男



「お待たせ…

 冷蔵庫にあった有り合わせの材料だからあんまり豪華なもん作れなかったけど…」


「……」


「ん?食わねぇのか?」


「い、いただきます…」


「おう!召し上がれ」


「!?

 美味しい…」


「ふっ。食ったな…」


「!?

 なんですか?あ、あなたが食べろって言ったんじゃないですか!」


「いや?

 俺は食わないのかと聞いただけだ

 食べろ。とは一言も言ってない。って事で…良いよな?」


「そんな無茶苦茶な…

 完全にハメられた…」


「ほら、食べ物に罪はねぇんだからさっさと冷め無いうちに食べろよ?」


「食べる!食べれば良いんでしょ!

 ああもう!なんでこんな美味しいのよ…」


「あっ…

 お前今日ずっと家にいる?俺、買い物してきたいんだけど」


「あなたってほんとどんだけマイペースなの。

 分かりました!私にも非はありそうだし…

 ここに住む事を許可します。

 でも、なるべく早く部屋決めて出てってください」


「サンキュ!助かった」


「それと…

 そのお前って呼ばれるのなんかムカつくんですけど…」


「ああ。

 悪ぃ。名前知らねえから…

 あっ!ご主人様って呼べば良いか?執事口調で」


「そんな趣味ありません!

 んっと…私は、倉科(くらしな)です」


「下の名前は?」


「好きじゃないし言いたくありません。別に倉科で良いじゃないですか」


「ふーん。

 じゃあやっぱりご主人様って呼ぼうかな~」


「…幸。

 倉科、幸(くらしな さち)です」


「漢字は?幸せっていう字で幸?」


「はい…」


「良い名前じゃん、幸」


「いきなり呼び捨て…まいっか。

 あなたは?」


「ん?」


「名前…教えてくれないと呼べないじゃないですか…」


「ああ、俺の名前は…幸がつけてよ」


「はぁっ!?」


「ペットってそういうもんだろ?」


「…ほんとにそれで良いんですか?」


「ああ。幸の好きな名前で呼んでよ。その方が愛着が湧くだろ?」


「別に愛着はどうでも良いけど…じゃあ…んーっと。レオ」


「レオ?」


「私ライオンが好きだからなんとなく…」


「レオ…か

 悪くないなっ。よし、決まり!俺は今からレオな。

 あっ、後、お前はご主人様なんだから今から敬語は無し。

 じゃ、買い物行ってくるわ」


「…変なやつ…」



~数時間後~


■買い物を終えて帰ってきたレオ

■レオが買ってきた物を見て困惑する幸


「…えっと~。これは…何?」

レオ

「見てわかんだろ?

 首輪と手錠だ。ちゃんと人間用だから」

「うん!それは分かってるの!

 わざわざ買ってきたみたいだけど…私、こっちの趣味は無いよ?」

レオ

「俺も無いから安心しろ」

「じゃあなんで…」

レオ

「ペットっていったら首輪だろ?

 ほら、幸は飼い主なんだから早くつけて」


幸M

戸惑いながらも真剣な瞳に断りきれず

私は目の前の彼に首輪を付けた


レオ

「サンキュ!幸。

 これから毎日帰ってきたら首輪持ってくるからこうやって俺に付けろよ」

「なんの為に?」

レオ

「ペットだから、俺」


「…まあ、あなたがそれで良いなら良いけど。で、ちなみにその手錠は…」


レオ

「ああ。幸が寝る前に俺の手首とベッド、この手錠で繋いでって」


「部屋も分かれてるんだし何もそこまでしなくても…」


レオ

「幸。俺は幸の何?」


「…ペット?」


レオ

「そっ。だから面倒かもしんないけどこの2つは毎日やって?

 一緒に住む上での最低限のルール。これは守って」


「…わかった」


レオ

「そうだ。

 幸の好きな食べ物と嫌いな食べ物教えといて。料理作る時の参考にする。

 あと俺、たまに仕事で出張行ったりするんだけどそん時は…」


「もちろん仕事は優先してよ。

 あと、誰かの家に泊まるとかそういうのは別に自由にしてくれて良いから

 居なかったらいないんだなぁって思っとくし。

 それに掃除とかごみ捨てとか全部やる必要無いからね。

 確かに多少やってくれたら助かるけど私も出来ない訳じゃないし…

 あと一応…はい。これ」


レオ

「これは…」


「合鍵…

 私も出掛ける事あるし、一緒に住むなら無いと不便でしょ?」


レオ

「ああ、サンキュ。

 じゃあ改めて。これからよろしくな幸」


〈次の日:玄関〉


◾︎幸、無言で帰宅


レオ

「おかえり幸」


「……」


レオ

「おーい。固まってるぞー。どうした?」


「……」


レオ

「幸?」


「家帰ってきて、誰かにおかえりって言われるの、久しぶり過ぎて…」


レオ

「これからは毎日言うから慣れてけよ。

 って事でもう1回練習。幸、おかえり」


「…ただいま」


レオ

「だいぶぎこちないけど。今日はとりあえずいっか。

 ご飯作ってるから先にお風呂入っちゃって」


「うん。ありがとう」


レオ

「……」


「…どうしたの?」


レオ

「いや、別に何でも無い…」


「変なの…

 じゃあ、お言葉に甘えてお風呂入ってきちゃうね」


レオ

「ああ…行ってらっしゃい」



◾︎幸、お風呂からあがって戻ってくる

◾︎レオ、テーブルを挟んで幸の真正面に座る



「うわぁ、ご飯出来てる。

 美味しそう…いただきます」


レオ

「めしあがれ」


「んー。美味しい…

 これ、どこのルー?今度からこれにする」


レオ

「ん?ルーなんて使ってないぞ。

 小麦粉とか色々混ぜてホワイトソースから作った」


「ルー使わなくてもシチューって作れるんだ…知らなかった…

 ねぇ、なんで料理上手いの?」


レオ

「俺一人暮らし長いから」


「そういうもん?

 こんな美味しい料理食べられるなんて私としてはありがた過ぎるんだけど…

 あの…さ、私も出来ない訳じゃないから

 毎日じゃなくて良いからね?

 ほんとに…あの、無理し過ぎないでね?」


レオ

「幸は飼い主なんだから俺に気なんて使わなくて良いんだよ」


「いや、本来なら飼い主の私がご飯作ってあげるのが普通っていうか…」


レオ

(笑)

「そこは別にこだわんなくてもいいだろ

 俺は料理作んの嫌いじゃないし、1食作んのも2食作んのもそんな変わんないから適当に作っとく。

 まあ、そうだな…そんなに言うなら…

 たまには、よく出来ましたって頭でも撫でてもらおうかなぁ」


「よく出来ました。レオは本当に良い子だね。美味しいご飯作ってくれてありがとう」


レオ

「!?

 本当にするなよ!ただの冗談だ…」


「えっ?そうだったの?」


レオ

(ため息)

「幸…

 お前ってこうなんか危なっかしいんだよなぁ…」


「ん?危なっかしい…

 初めて言われたかも…」


レオ

「マジか?

 今ん所俺の中では危なっかしさ100%だな」


「ペットの癖に生意気」


レオ

「あっ、そうだ。食べ終わってからで良いから首輪付けて」


「別にそんなの良いのに…」


レオ

「幸…ルールだろ」


「…わかった」


レオ

「あー。あと寝る前に手錠も忘れんなよ」


「うん。わかったよ…レオ」



幸M

こうして私は男性をペットとして飼う事になった

数日はぎこちなかったものの

ペットのレオとの生活は思いの外とても心地良く

いつの間にかレオがいる生活が私にとっては当たり前になっていった



〈数週間後︰リビング〉

◾︎缶の中のお酒を一気に飲み干す幸


「あぁぁぁ!

 もう!ムカつく!

 言われなくたって分かってるわよ!

 どうせ私は可愛く無いわよ!

 ってか…もう可愛いとか言われる様なそんな歳じゃないっつうの!」


レオ

「た、ただいま~」


「あっ!レオだぁ~おかえり~」


レオ

「ずいぶん出来上がってんなぁ…」


「良いでしょ?

 あたしにだって飲みたい日ぐらいあるんです~」


レオ

「はいはい。気持ちは分かるけど、でもさすがに今日は飲み過ぎだからここでストップな」


「ああ!ちょっと~返してよ~」


レオ

「顔、鏡で見てみ?首まで真っ赤だぞ?

 それ以上飲んだら後でしんどくなるの自分だろ?幸強く無いんだから。

 今、水持ってくる」


「え?水なんて別に良いよ〜」



■水を取りにいくレオ

■冷蔵庫からペットボトルの水を持って戻ってくる。それを幸に渡す



レオ

「はい。これ飲んで」


「……」


レオ

「飲まないなら口移しで飲ませるけど?」


「え!?」



◾︎慌てて水を飲み、むせる幸



レオ

「ちょっ、大丈夫か?

 ったく…世話のかかる飼い主様だなぁほんとに。

 これじゃどっちがペットなんだかわかんねぇだろ」


◾︎幸の背中をさするレオ



「ねえ…レオ」


レオ

「ん?なんだ?」


「ん…

 ううん。なんでも無い」


レオ

「…幸。何?言いかけて辞められると気になるから言って」


「気にしないで、ほんとになんでも無いの」


レオ

「言って」


「…あの、さ…

 もしも嫌じゃなかったらなんだけどお願いがあって…あ、ほんとに嫌じゃなかったらなんだけど」


レオ

「何?そんな難しいこと?」


「いや、難しいって言うか…」


レオ

「幸から俺に何かお願いしてくるなんて初めてじゃん。とりあえず言ってみ?」


「レオの髪の毛、撫でたい」


レオ

「えっ?」


「なんかほら!

わんちゃんとかネコちゃんとか撫でるとさ、セラピー効果あるみたいなさ、

 そんな感じになるのかなって…レオはペットな訳だし、ダメ…かな?」


レオ

「そんなんで癒しになるかはわかんねぇけど、まあ幸が望むなら

 じゃあ、はい。これ、先に首輪付けて」


「えっ?別に今は…」


レオ

「幸?付けないなら触らせない」


「わかった~付ける!つけるからァ」



■首輪を必死につけようとする幸。が、うまくつけられない



レオ

「ふっ。全然付けられてねぇじゃん」


「うるっさいなぁ!酔っててなんか手が上手く動かないんだもん。

 もう!笑ってないで大人しくしてて~」


レオ

「はいはい」


「よ~し!できたァ~。

 じゃあ、レオ~、私のお膝にゴローンてして?」


レオ

「膝枕…」


「ほら早く〜」


レオ

「はいはい…っと…」


「ふふっ。レオの髪の毛、やっぱりふわっふわっ~」


レオ

「……」


「触ってるだけでなんか癒されるなぁ~。 えへへ~。ふわっふわっ

 ふわふわ~。わしゃわしゃ~」


レオ

「あ~もう髪乱れる。ったく…

 まっ今日は良いか。もう幸の好きにしろ~」


「やったぁ~。わしゃわしゃ~。

 ふわっ、ふわっふわっ…」



◾︎幸の手が止まる



レオ

「ん?もう良いのか?」


(ため息)

「そうだよねぇ~。ふわふわって癒されるもんね~。

 結局みんなふわふわでかわいいのが好きだよねぇ~」


レオ

「ん?幸…」


「私だって~、ふわふわのかわいい女の子でいたかった…

 でも私の周り、み~んな弱いんだもん

 私より弱くて…守ってあげないと壊れちゃうから

 だから私は強くなるしか無かったんだもん…

 1人で立てるようにって、男の人に頼らなくても生きていけるようにって仕事いっぱい頑張って…」


レオ

「……」


「休みも睡眠も食事の時間も全部削って 私なりに精一杯頑張って…

 頑張って、頑張って来たのに…そのはずなのに…

 頑張れば頑張るほど女のクセに可愛げが無い~って…

 ねぇ、仕事頑張るのってそんなにいけない事〜?」


レオ

「いや、頑張ってる幸はすっごくカッコイイと思うよ」


「ほんとに~?」


レオ

「おう!俺様が言うんだから間違いない」

「膝枕されて頭撫でながらドヤ顔してもかわいいだけだよ~?レオ」


レオ

「お前なぁ…俺は真剣に言ってるのに…」



◾︎レオの頭を撫でながら



「良い子…良い子ねぇ、レオは。

 本当にとっても優しい子…うちに来てくれて、ありがとう」


レオ

「…幸……幸も…」


「ん?」


レオ

「幸も俺にとって最高の…」


「ん?」


レオ

「最高の…飼い主…だ」


「ありがとう、レオ」


レオ

「よぉし!ストレス解消に今から撃ちまくるか」


「うん!今日は負けないから~」


レオ

「ほぉ?そんな顔真っ赤なのにかぁ?俺様に勝とうなんざ100万年早いわ!」


「出た!レオの俺様発言!あたしだっていつまでもやられっぱなしな訳じゃないんらからね~?」


レオ

「舌回ってねぇし…」


「い、今のは噛んだの!今日こそは絶対に勝つ!」


レオ

「おう!勝負だっ!」


「望む所よ!かかってきなさい!」



~また別のある日~


SE:扉のノック音



「はーい。開いてる~」


レオ

(あくび)

「手錠かけに来ないと思ったら…まだ起きてたのか」


「後輩が体調崩しちゃって、任せてたプレゼン資料が間に合わないからさ…」


レオ

「ここ数日ずっと、うち帰ってきてからも仕事してない?」


「季節の変わり目だから、この時期はどうしてもみんな体調崩しがちになるよね」


レオ

「先週は同僚の穴埋めしてたよな…全部幸が背負う必要無いだろ…」


「体調崩すまで気づかなかったのは私の責任でもあるし。

 無理させちゃってた自覚はあったんだけど自分の事で精一杯でフォローしきれなくて…」


レオ

「…幸」


「誰だって調子悪い時はあるもん。こういう時はね、助け合わないと…

 自分のせいで迷惑かけちゃうって思ったらゆっくり休めないでしょ?」


レオ

(ため息)

「止めても無駄…か」


「あともうちょっとで終わるんだ。そしたら手錠かけに行ってその後はちゃんと寝るから」


レオ

(あくび)

「…今日は手錠は良いや。たぶん俺のが先寝ると思うから、ドアの内鍵かけとく」


「わかった。ごめんね…レオ」



~2時間後~

〈幸の部屋〉



「よぉし!出来たぁ~!

 あとは誤字脱字が無いかは明日先輩に確認してもらって…

 うわ、もうこんな時間…レオ、さすがに寝てるかなぁ…」


SE:扉を叩く音



「ん?はぁーい」


レオ

「終わったか?」


「レオ。まだ起きてたの!?」


レオ

「ちょっとこっち来れるか?」


「ん?何?」


レオ

「リビングで待ってる」


「えっ?レオ?」



◾︎リビングに移動する2人



レオ

「何か飲みたくなってコーヒーにするか迷ったんだけど、

 この時間に飲んだら眠れなくなりそうだからココアにした。

 作りすぎたから…やる」


「いいの?」


レオ

「ん」


「うわぁ。あったかい…

 いただきます」



◾︎必死にフーフーする幸



レオ

「いや、さすがにフーフーし過ぎじゃね?」


「熱いの飲めないの。すぐ舌やけどしちゃうんだもん…」


レオ

「あー。だからいつもあんなにふーふーしてたのか。

 納得。ふっ。貸してみ…」


「え?」



◾︎幸からカップを取り上げ代わりにフーフーするレオ


「レオ、疲れちゃわない?」


レオ

「俺の方が肺活量あるだろうからな。こんぐらい平気。

 さて、もうさすがに冷めたと思うけど? はいっ」


「ありがとう」



◾︎カップを受け取り恐る恐る飲む幸

◾︎見守るレオ



「はぁ…おいしい。

 あったかい飲み物ってほっとするよね。

 なんかそっと抱きしめられてるみたいなそんな気がする。

 ココアなんて飲んだのいつぶりだろ…」


レオ

「仕事は?終わりそう?」


「うん!今終わった。

 さすがに寝ないと明日プレゼン出来ないからこれ飲んだらもう寝るよ」


レオ

「そっか。頑張る幸はカッコイイし無理しないといけない時があんのは分かるけど…

 無茶だけはすんなよ?

 身体や心が壊れた所で会社は助けてなんてくれねぇからな?」


「うん。そう…だよね。

 気をつける。ありがとうレオ」


レオ

「別に…幸の為じゃなくて、お前が倒れたら俺の住む所無くなるから…」


「うん!

 レオのエサ代も稼がないといけないしね」


レオ

「餌って… せめて飯って言ってくれ」


「ありがとう…レオ」


レオ

「べつに…お前の為じゃねぇし」


「うん。そういう事にしとく(笑)」


レオ

「無理に全部飲まなくて良いから、さっさと寝ろよ」


「はーい。おやすみ、レオ」


レオ

「おやすみ、幸」



■レオ、自分の部屋に戻り内鍵をかける



SE:鍵がかかる音


レオ

(ため息)

「本当に抱きしめてやれたら、良かったのにな…」



~別のある日~

「今日はレオはお泊まりかぁ…

 レオが居ない夜なんて初めてだなぁ…

 あっ!って事は…今日はお酒飲み放題って事だよね?

 やったぁ!

 ほっかほかの炊きたてご飯の上にお客様からいただいた海鮮を乗せてっと。

 ヤバいめっちゃ美味しそう…

 いっただきまーす。

 はぁ…

 ご飯もお酒も美味しい…最高…

 レオのやつ悔しがるだろうなぁ

 さすがに全部食べたら怒るかなぁ…

 あっ、でも生物(なまもの)は動物に与えちゃいけないんだっけ?」


~数時間後~

■周りには数本のお酒が入っていた空き缶が転がっている


「あっれれ~

 なんかサボテンが3つに増えてるぅぅぅぅ

 笑

 っっ!

 あー頭痛い。さすがに飲み過ぎた…かな…

 ん‪”‬ー。レオ~、お水~。

 ん?レオ~?お水持ってきて~。

 ん?あれ?

 って…そうだった、今日は居ないんだった

 はいは~い

 幸は偉いから~自分でちゃんとお水取りに行きますよ~っだぁ笑」



◾︎冷蔵庫から水を取り出しリビングで水を飲む幸



「ぷはぁ…

 ん?ゔっ…ぎもぢわるっ…

 ダメだ。さすがに今日は飲みすぎたァ

 早くベッドで寝ないと…

 うぁー

 なんで~なんかクラクラして全然歩け…無い…

 きゃっ…」



◾︎そのまま転んで床に倒れ寝てしまう幸



~翌日~



レオ

「ただいま~。

 あれ?幸~。居ないのか~?

 今日は休みだって言ってたけど出かけたのかな?

 幸~?出かけたの~?

 …!?

 幸?」



◾︎リビングの床の幸を見つける



レオ

(ため息)

「この大量の缶…

 お前俺がいないからって酒飲みまくったな?

 で、ふらついて転んで倒れてそのまま寝たって所か…

 ったく、どんだけ手がかかるご主人様なんだか…

 おーい。幸~。こんな所で寝たら風邪ひくぞー。幸~。ん?」



◾︎頬を軽く叩いている。触れた幸の肌が熱く慌てておでこに手をあてる


レオ

「 !?

 …あっつ

 なんだこの熱さ…

 えっと…体温計確かここら辺に…

 あった!」



SE:体温を測り終わった音



レオ

「うわっやべっ!

 40度超えてんじゃん!?

 幸!おいしっかりしろ!俺の声聞こえてるか?おい!」


◾︎苦しそうに息をしている幸


「…レ…オ…?」


レオ

「幸!今から病院連れてくからな!

 大丈夫だからな…

 えっと…保険証は…」


「…おかえり…レオ」


レオ

「ただいま。幸…

 悪い。もっと早く帰ってくれば良かった。

 苦しかったな。もう少しの辛抱だからな!」


~数時間後~


「……んっ」


レオ

「気がついたか?」


「ん…レオ…なんか頭冷たい…」


レオ

「ああ。氷まくらだ」


「もしかしてずっとそばにいてくれたの?」


レオ

「病院で点滴打って少しは落ち着いたみたいだけど、まだ熱高かったからな」


「出張で疲れてるのにごめんね」


レオ

「ちょっ…まだ起き上がるな!

 横になってろ」


「大げさだな、ほんとにもう大丈夫だって…」


レオ

「幸!寝てろ」


「……」


レオ

「……」


「…レオ…もしかして怒ってる?」


レオ

「帰ってきて幸見つけて、触れたら尋常じゃないぐらい熱くて。

 救急車呼んで病院着いて、お医者さんから大きな病気じゃないって言われてほっとした。

 でも、過労って言われて…

 幸が無理してたの分かってたのになんで止められなかったんだろうって…

 なんで俺、このタイミングで出張だったんだろうってすっげぇ悔しかった…

 幸に何かあったらって思ったら生きた心地しなかったよ。

 良かった…

 ほんとに…無事で良かった…」


「レオ…ごめん」


レオ

「なぁ?

 責任感が強い所も、後輩想いで優しい所も幸の良い所だと思う。けど…

 誰かに渡す半分…いや、欠片でも良いから

 もう少し自分に優しくしてあげてよ…

 頼むから…」


「レオ…」


レオ

「あのさ、ずっと気になってた事聞いて良いか?」


「何?」


レオ

「もし話したくなかったら別に無理にとは言わないけど、ここさ1人暮しにしては結構広いよな?」


「…楽しい話じゃないよ?」


レオ

「いいよ。話してくれるなら聞きたい」


「…結婚する予定だったんだ。

 お互いの両親に挨拶して、式の日取りも決めて、会社には相手が誰かまでは言ってなかったんだけど、

 結婚したら仕事辞めるって話をしてたの」


レオ

「うん」


「私ね、今まであんまり良い恋愛して来てなくて…

 ちょっと強姦紛いな事もされてさ…

 あんまり…好きじゃないんだよね。

 その…Sexがさ」


レオ

「……」


「彼はそれを理解してくれてて、

 私が痛がると途中で止めてくれて、焦らなくて良いって、いつもキスして抱きしめてくれて。

 ああ。こんなにあったかい人もいるんだって。

 身体が繋がらなくても本当に心で繋がってるって思えた。

 彼に抱きしめられると自分の中の足りないものが満たされる様なそんな気持ちになって。

 そうか、これが幸せって事なんだなって。だからプロポーズされた時も、本当に嬉しかった。

 でも、長くは続かなかった…」


レオ

「……」


「彼の誕生日にね、サプライズでお祝いしたくて合鍵使ってクローゼットの中に隠れてたの。

 彼が帰ってきた声がして、扉開けようとしたら女の人が追いかけてきて、彼と女の人がキスしてそのまま…」


レオ

「!?」


「私は目の前で起きてる事が理解出来なくて出ていく事も出来ず、

 自分の旦那になるはずの人が自分じゃない女の人と抱き合っているのを

 ただただ見てる事しか出来なかった」


レオ

「……」


「クローゼットの中で息を殺しながら彼らの行為が終わるのを待って、

 2人が寝たのを確認して部屋を出たの。

 しばらくして会社の社長の娘さんとの結婚の話を聞かされて」


レオ

「!?」


「数日後、話があるって彼に呼ばれて2人でドライブに行ったんだけど

 喧嘩して私、途中で車降りたの。

 その帰りに彼、私を追いかけて来る途中で事故にあってそのまま…

 私だけ助かっちゃった…

 呆気ないよねー、人の命って。

人を不幸にしといて幸なんて名前、ほんと皮肉でしかない」


レオ

「それって、幸のせいって訳じゃ…」


「口止め料?ていうのかな

 関係者の人にもらってさ…この部屋はそのお金で買ったの。

 お金として手元に残しておきたくなかったんだよね…」


レオ

「幸…」


「はい!

これでこの話はおしまい。

もうこんなつまんない話じゃなくてさ、なんか楽しい話しようよ。

それともゲームする?私、今度こそ負けないよ?」


レオ

「なんでそんな他人事みたいなんだよ」


「だってもう過ぎた事だし、起きた事は変えられないし

 いちいちクヨクヨ悩んでたってしょうがないでしょ」


レオ

「過ぎて無いから…

 解決して無いからあんな風になるんだろ…」


「?」


レオ

「俺と初めて会った日の事、覚えてないの?」


「初めて、会った日…」



~幸とレオが出会った日~

〈Bar〉

■幸、酔い潰れカウンターに突っ伏している。隣の男が幸に触れようとする


レオ

「あのっ!俺のツレなんで触らないでもらえますか。

(ため息)

 …ほら、立てる?」


「……?立てる…」


レオ

「おい!寝るな!起きろ!

 ったく…どこが大人で包容力がある女性なんだよ…

 話に聞いてた以上に酒弱いじゃねぇか…

 (ため息)

 マスター、こいつの分も俺が支払います。あっ、これでお願いします。

 あと、タクシー呼んでもらえますか?

 外、雪降ってて電車も止まってるみたいなんで」


「大丈夫!私歩いて帰れるもん!」


レオ

「バカ!外は雪だっつぅの。それに1人で立てもしない奴がよく言うよほんと」


「…雪、嫌い…」


レオ

「って!寝るな!おい、起きろ!」



■幸の部屋に入る2人



「えへへー、お家だぁー!」


レオ

「お邪魔しまーす」


「はい。ここが私のお家で~す。ここまでお見送りご苦労様でした~。

 では、おやすみなさ~い」


レオ

「ちょっと待て!寝るな!ここ玄関だって…

 ああ…ったく」



■レオ、しゃがみこむ幸を何とか立たせて半ば引きずる様に連れていく



レオ

「うわ、部屋の数凄っ…なあ、寝室ここ?」


「ここ~」


レオ

「開けるぞ」


「えへへ~。お布団だァ~あったか~い」


レオ

「うん。なんとか大丈夫そうだな。じゃあ俺は帰るからちゃんと鍵かけて…」


「ごめん…」


レオ

「え?」


「……」


レオ

「えっ?ちょ…えっ?なんで急に泣いて」


「ごめんなさい…」


レオ

「うん。謝るなら離してくれる?

 ってか泣くほどの事じゃないからな?

 俺、別に怒ってな…」


「ごめん……

私のせいで…私だけ助かってごめん…

本当にごめんなさい…

ごめん…」


レオ

「……」



~現在へ~



レオ

「そんでそのまま壊れた様に泣き崩れて。少し落ち着いて帰ろうとしたら、暑いって服脱いで…

 その後行かないでって服掴まれて」


「私が…泣いた…?」


レオ

「うん。泣いてた。ごめんなさいって」


「レオの前で…泣いた…?」


レオ

「泣いてたよ。忘れても過去にもなってないんだって。

ボロボロに泣き崩れるぐらい、お前の中に、ずっと刺さったまま溶けずに残ってんだよ!

その男最低じゃん。なんで幸が謝んの」


「だって、私が途中で怒って降りなかったら…」


レオ

(遮って)

「怒って当然だと思うけど。

 それに、100%事故らなかった保証がどこにある」


「それは…」


レオ

「結果論だろ。そいつが事故にあったのも…それで死んじまったのも」


「…そんな簡単に言わないで」


レオ

「……」


「今さら過去を振り返ったってしょうが無いじゃん。あいつはもうこの世に居ないんだし」


レオ

「幸…」


「ねぇ。ほら早くゲームやろ」


レオ

「幸。逃げても何にも解決しないだろ」


「何も知らない部外者の癖に」


レオ

「えっ?」


「何も知らない部外者の癖に勝手な事言わないで!

 レオはいつかこっから出て行くんでしょ?

 それでどうせ綺麗さっぱり私の事なんか忘れちゃう。

 こんなくだらないペットごっこなんてやったってなんの意味も無い、なんも残らない!

 関係ない赤の他人が土足で面白がって心の中に踏み込んで来ないでよ!」


レオ

「そう…だな。部外者だったな…俺。

 俺はただ、幸があんなボロボロになって自分を責める必要なんか無いのにって、

 そう思っただけだったんだけど…余計なお世話だったな」


「……」


レオ

「確かにこの生活を続けても俺が本物のペットになれる訳じゃないしな。

悪かったな、こんなくだらない事に付き合わせて」


「…違う、私こんな事言いたかったんじゃなくて…」


レオ

「脱げよ」


「えっ…」


レオ

「慰めてやるから脱げ」


「レオ何言って…」


レオ

「そもそもあのBARにいたのだって最初はそれが目的だったんだろ?」


「それは…」


レオ

「誰でも良いなら別に俺でも良いだろ」



◾︎怒りながら幸に強引にキスをする



「…んっ。レオ、やめて…」


■再びキスをしながら幸の服を脱がせようとするレオ


「んっ…レオ、ヤダっ」


■幸、レオにビンタする


レオ

「…レオじゃねぇよ。俺は…男だ」



■レオ、そのまま外に出て行ってしまう

■呆然とドアを見つめる幸



「あんなレオ…私知らない」


〈レオの部屋〉


■鍵が開いており電気が付いていて彼女がいる


レオ

「ただいまー。

あー、お前まだいたんだ。あん時抱かれてた男は?ふーん。あっ、そう。

 今は誰とも付き合ってないって事か。

じゃあ良いよな?今すぐ抱かせろよ」



■彼女にキスをしながら服を脱がせるが目の前の女性が幸じゃない事に手を止める


レオ

「違う…

お前じゃない。悪いけどここ俺ん家だし出てってくんない?

目障りだから今すぐ出てけって言ってんだよ!!!!!」



■彼女、慌てて出ていく



レオ

(舌打ち)

「ああ!何やってんだよ俺は

幸…すっげえ震えてた

あんなのただの八つ当たりだろ…

ペットで良いから置いてくれって言ったのは俺じゃないか…

ああ!もう!

一緒に過ごして分かってただろ…

強く見せてるけど平気なフリしてるけど

本当は繊細ですっげぇ寂しがりな人なんだって

俺…ほんと何やってんだよ…」




〈幸の家〉


「分かってた。そうだよ、最初から分かってた。

永遠に続くはずなんかない。こんなペットごっこなんていつか終わるって分かってたじゃない。

なのに…なんでこんな気持ちになるの…」


幸M

あれからもう数ヶ月が経った

こうして過ごしていると

レオと一緒に過ごしていた日々の方が夢だったんじゃないかと思ってしまう

でも…家のいたる所にふとした瞬間、その欠片を見つけてしまうのだ



~回想~



レオ

「サンキュ!幸。

 これから毎日帰ってきたら首輪持ってくるからこうやって俺に付けろよ」


レオ

「あ~もう髪乱れる。ったく…

 まっ今日は良いか。もう幸の好きにしろ~」


レオ

「無理に全部飲まなくて良いから、さっさと寝ろよ」


レオ

「なぁ?

 責任感が強い所も、後輩想いで優しい所も幸の良い所だと思う。けど…

 誰かに渡す半分…いや、欠片でも良いから

 もう少し自分に優しくしてあげてよ…

 頼むから…」


レオ

「おーい。固まってるぞー。どうした?」


「……」


レオ

「幸?」


「家帰ってきて、誰かにおかえりって言われるの、久しぶり過ぎて…」


レオ

「これからは毎日言うから慣れてけよ。

 って事でもう1回練習。幸、おかえり」


~回想終わり~



「…ただいま。ただいま、レオ

 ねえ、レオが帰ってくるのはここでしょ?

 レオのご飯…また食べたいなぁ

 ほんと…この家広すぎだよ…

 レオの言う通り、昔の事だからなんてそんなの精一杯の強がりだよ

 本当は苦しくて寂しくて悔しくて仕方無くて…

 だから馬鹿な事だって分かってても一時の隙間を埋めて欲しくて繰り返してた…

 ねぇ?気づいてた?

 レオが来てからは私、誰とも寝てないよ



 ただ元の生活に戻っただけなのになんでこんなに苦しいの?

 私、おかしくなっちゃったのかな?

 レオ… レオ…



 もしもレオとの日々が全て夢なら…

 せめて覚めないで欲しかった…

 まやかしでも良いから、いっそ永遠に閉じ込めてしまいたかった…」




レオM

幸が求めてるのは

ペットのレオであって

きっと俺じゃない…

彼女の弱さに触れる度に俺はペットで居続ける事が段々苦しくなっていった

ペットじゃなくて人として

この手で抱きしめたい…

包み込みたい、護りたい

独占したいと、そう思う様になってしまった

だからあんな事…



あの家に戻れば俺は人間ではいられない

愛しい人に想いを告げることも叶わない…

それでも…

それでもお前がひとりで泣かずに済むなら

そばに、いられるのなら

俺は…もう一度



~数日後~

<幸の家の扉の前>


■扉の前にいるレオ

■見つけて固まる幸



「寒〜いっ。!?」


レオ

「…こっちはあんま雪降らねぇのな」


「レオ…」


レオ

「これ、やる」


「…わざわざその為に来たの?」


レオ

「…この前は、怖い思いさせて本当悪かった」


「…あれは私もひどいこと言ったし、別に気にして無いよ。荷物取りに来たの?住所教えてくれれば送るよ?そうだ、ここに書いて…」


レオ

「自分の家に帰ってきちゃいけないの?ペットはご主人様の所に帰るもんだろ」


「え?でも、ペットはもう嫌だって…」


レオ

「だって俺がいないと、幸またひとりで泣くだろ?だからさ…

 今はまだペットでも良いから、そばにいさせてよ」


「レオ…」


レオ

「ダメ…か?」


「レオは本当にそれで良いの?」


レオ

「良くなかったらここに居ない」


「……」


レオ

「幸?」


「…一人は…もう嫌だよ」


レオ

「うん」


「戻ってきてくれて、ありがとう」


レオ

「どういたしまして…」




レオM

あの日自分の口からペットでも良いから置いてくれなんて言葉が出るなんて思いもしなかった

でもそれぐらい…この人を1人にしちゃいけないって強く思ったんだ



俺たちが出会ったのは偶然じゃない

いつかその話をする日がきっと来るのだろう

また幸を傷つける事になるかもしれない。それでもそれが、きっと君の為だから



幸M

愛が何かを見失ってしまった私には

ペットと飼い主としての距離が心地好い

ずっとこの関係が永遠に続かない事はわかっている

いつか雪が溶けてしまう様にレオが人間に戻る日が来る事もわかっている

でも今は…許されるなら

この偽物の温もりに甘えていたい



「そのスノードームの中のライオン可愛いいね」


レオ

「好きって言ってたろ?」


「うん(くしゃみ)」


レオ

「ああ、このままだと風邪ひくな…とりあえず中入ろ」


「うん。レオ」


レオ

「ん?」


「おかえり」


レオ

「ただいま」


「お腹すいたぁ。レオ、今日のメニューは何?」


レオ

「ったく、どっちが飼い主なんだか笑

 あっ、そうだ手洗いとうがいしたら」

 あれ、忘れるなよ」


「うん、あれね」



レオM

愛しい君のために

今だけは嘘と本音を閉じ込める

そして溶けない雪(あい)を降らそう

まやかしのスノードームに

END