400年の歳月をかけ完成させた世界遺産 「ピサ大聖堂と斜塔」(1063〜14世紀)
(「美の巨人たち」放映番組<2015.12.19>での主な解説より引用)
Piazza dei Miracoli 欧州全体の宗教建造物の中でも、時代を問わず最も美しい作品のひとつといっていい。
敷地内には、遺産である大聖堂、洗礼堂、カンポサント(墓所)、鐘楼(斜塔)の4つから構成される。一連の建物は、11世紀半ばにシチリア島パレルモ沖の海戦で、イスラム軍に勝利し、その記念物(モニュメント)として建てられたものだという。
かつて、イタリアの海洋都市国家「コムーネ」の時代に11〜14世紀にかけて建造された「ピサ・奇跡の広場」も、構想から整備・完成まで400年余りの歳月をかけた。
こうした建造物が建てられたのは、当時の都市国家「ピサ」が、1406年フィレンツェに屈するまでの間、国際的な海洋都市として莫大な富と利益を手中にし、建築・芸術といった文化的側面に、惜しげもなく財源を投入できたという背景がある。
(番組を視聴しての私の感想コメント)
建築物に長い歳月をかけるといえば、スペイン・バルセロナで今も建造中のガウディの「サグラダ・ファミリア」が有名である。
京都造形芸術大学・芸術教養学科での私のレポートの中には、「サグラダ・ファミリア」と、京都の洛水庭園「 無鄰菴」を取り上げ、時間軸と空間軸の視点から、その造形手法を比較してみたことがある。
今回の作品「世界遺産 ピサ大聖堂」において、最も興味深かったのは、ロマネスク・ゴシック・イスラム・ビザンティンという、スタイルのアンサンブルともいうべき建築仕様を、国際色豊かに多彩に取り込んでいる点である。
地理的にも、歴史的にも、異文化交流(クロスカルチャー)の視点からみると、とても興味深い建物であり、この建築を生んだ背景や、技法の経緯などにも興味が湧いた。
ピサの斜塔は、中学や高校でも教科書に出てきた記憶があるが、そもそもこの塔は「何故傾いたのか? これから先も倒れずにいられるのか?」といった疑問は、これまでも抱かずにきてしまったのではないか。
主たる理由としては、「粘土質の土壌に問題があった点」。そして、今(2015年)から約23年前の1992年から10年間をかけて、傾き防止の保全工事を敢行したことから、今後300年は倒れずにいられるという点を、番組では紹介していた。
また、この「ピサの斜塔」は、ガリレオ・ガリレイが「落下の法則」実験を行ったことでも有名である。しかしながら、現在の斜度は3.97度で、さきの保全工事により傾きがやや改善された。
傾きあっての観光名所故、技術的には可能であっても、完全には直立にさせなかったという点については、様々な思惑が働いた結果としておこう。
写真: 「美の巨人たち」テレビ東京放映番組より転載(2015.12.19) 同視聴者センターより許諾済。