ディープ・パープル「嵐の使者」【F's GARDEN -Handle With Care- Vol.4】
音楽業界ブログリレー「F's GARDEN -Handle With Care-」「野中なのか」さんからバトンを受け継いだ「やまやま」です。ワーナーミュージックのカタログという膨大なタイトルから自分が好きなバンドやアルバムを皆様に紹介できればと思います。
元々メタルやハードロック中心に聴いてきたので取り上げるタイトルに偏りがあるとは思いますが・・・
<F's GARDEN -Handle With Care- 第四回:やまやま>
今だから聴いてほしい
ディープ・パープルを代表する「問題作」
ディープ・パープルが10月に「The Long Goodbye Tour」という意味深なツアータイトルで来日します。ロックバンドのラストツアーに関しては何年も前からいまだにツアー続行中のバンドや途中で撤回したバンド、引退ツアーを2年間近く行った後すぐに引退撤回してまだ現役で活躍しているオジー・オズボーンというケースも多数あるのでどうしても話半分にしか思えませんが、そういって本当に引退して見られなくなるケースもあるので見れるときに見ておいた方が良いかなと思います。おそらくSmoke On The WaterやHighway Starといったディープ・パープルの名刺代わりの代表曲は演奏するでしょうから一度も見たことのない方は是非足を運んでみたらいかがでしょう?
現在のメンバーは
イアン・ギラン(ボーカル)
スティーブ・モーズ(ギター)
ロジャー・グローバー(ベース)
イアン・ペイス(ドラム)
ドン・エイリー(キーボード)
2002年からメンバーチェンジもなく、ボーカリストのイアン・ギランの声も70歳を越えたとは思えないほどのパワフルさを保っています!
と書いておきながら今から紹介するアルバムは今回の来日メンバーが一人しか参加してない作品です。しかも「問題作」!!
発売中
¥1,400+税/WPCR-80221
ディープ・パープルはファミリーツリーが出来るほどメンバーの入れ替えが激しいバンドですが、この作品はデイヴィッド・カヴァデールとグレン・ヒューズという名ボーカリスト2人を擁した第3期のアルバムです。
このアルバムを紹介する前に第3期ディープ・パープルについてちょっと説明すると、ロックギタリストを志す者が必ず最初にコピーするSmoke On The WaterやHighway Star、最近でも缶コーヒーのCMソングに使われていたBlack Nightといったバンドの代表曲を数々生み出した黄金期と言われる第2期ディープ・パープル。しかしブルーズの要素を加えたいギタリストのリッチー・ブラックモアとあくまで今までのスタイルこだわるボーカリストのイアン・ギランが対立し、最終的にイアン・ギランが1973年に脱退してしまいます。
そごで新ボーカリストとして白羽の矢が立ったのが当時ブルージーな声で名声を得て、リッチーが頭に描いていた理想のボーカリストでもあったポール・ロジャース、しかし彼は勧誘を断りバッド・カンパニーを結成します。
バンドはオーディションを行い、まだ無名のボーカリストでしかなかったデイヴィッド・カヴァデールを迎え入れます。イアン・ギランと同時に脱退したベーシスト、ロジャー・グローバーの後任には当時トラピーズというファンク色の強いハードロックバンドで活動していたベース兼ボーカルのグレン・ヒューズを引き抜きます。
ツインボーカルという新しい形になったディープ・パープルは1974年に「紫の炎」という大名盤を発表し、そのツアー後に発表されたアルバムが今回紹介する「嵐の使者」です。
「嵐の使者」は1974年12月に発売された9枚目のオリジナルアルバムです。
メンバーは
デイヴィッド・カヴァデール(ボーカル)
リッチー・ブラックモア(ギター)
グレン・ヒューズ(ベース/ボーカル)
イアン・ペイス(ドラム)
ジョン・ロード(キーボード)
前作「紫の炎」は従来のディープ・パープルが持っていたハードロックサウンドとリッチーがやりたがっていたブルーズの要素、そして新メンバーの2人が奏でるツインボーカルという新機軸がうまく機能した作品でしたが、「嵐の使者」にはさらに新たなソウル、ファンクといった音楽の要素が組み込まれます。この新要素が「問題作」を生み出します。
1曲目から順に聴いていくとタイトルトラックの「STORMBRINGER / 嵐の使者」はBPMこそ従来のディープ・パープルのアルバムのオープニングを飾ってきた楽曲より遅いがグルーヴ重視の普通にかっこいいハードロック、2曲目の「LOVE DON'T MEAN A THING / 愛は何よりも強く」はバッド・カンパニーの「ロック・ステディー」を思い起こされるブルーズ基調のロックと前作より地味だが別段叩かれる要素もないです。
が、3曲目の「HOLY MAN / 聖人」 この曲でアルバムの世界観が一変します。現在でもボーカリストとして評価の非常に高いグレン・ヒューズがソロで歌う名バラードなのですが、ハードロックという範疇で言うとちょっと外れる楽曲になっています。
そして、次の「HOLD ON / ホールド・オン」。この曲もソウル、ファンクの要素の入った楽曲で後日リッチーはこの曲が嫌で親指1本でギターをプレイしたとインタビューで公言するほどの楽曲です。本当に親指1本で弾いたかどうか真偽の程は不明ですが・・・
このアルバムからディープ・パープルの作曲者クレジットは個人名表記になっているのですが、「HOLY MAN / 聖人」と「HOLD ON / ホールド・オン」には当然リッチーの名前は入っていません。
5曲目の「LADY DOUBLE DEALER / 嵐の女」はリッチーとデイヴィッド・カヴァデールが作曲したド直球のハードロックですが、6曲目の「YOU CAN'T DO IT RIGHT(WITH THE ONE YOU LOVE) / ユー・キャント・ドゥー・イット・ライト」は珍しいリッチーのギターカッティングが入っているハードだけどコード進行やコーラスの入れ方など随所にソウルやファンクの要素が入っている楽曲です。7曲目の「HIGH BALL SHOOTER / ハイ・ボール・シューター」、8曲目の「THE GYPSY / ジプシー」と前作からの延長線上にあるハードロックの佳曲が続いたあとリッチーの物悲しいギターとデイヴィッド・カヴァデールのポール・ロジャースばりの渋い声が印象的な名バラード「SOLDIER OF FORTUNE / 幸運な兵士」でラストを飾ります。
このアルバムのツアーを最後にリッチーはバンドから去り、彼のビジョンを具現化出来るバンド「レインボー」を結成します。
リッチー在籍最後のアルバム、そのリッチー自身がアルバム発売当初から酷評していたことで評判の悪い作品ですが、個々の楽曲だけを聴いたらいろいろなパターンの楽曲が存在していて、他のアルバムより飽きずに聴けます。
普段ハードロックを聴かない人や、ハードロックに悪印象を持っている人にはぜひ「HOLY MAN / 聖人」だけでも聴いてもらいたいです。
「HOLY MAN / 聖人」は現在でもグレン・ヒューズはライブでレパートリーに加えてますし、「SOLDIER OF FORTUNE / 幸運な兵士」はデイヴィッド・カヴァデールがディープ・パープル解散後に結成するホワイトスネイクでも披露しています。
2015年にデイヴィッド・カヴァデールは自身のバンド、ホワイトスネイクで「ザ・パープル・アルバム」という自分が在籍した時代のディープ・パープルの楽曲をセルフカバーしたアルバムを発表し、ツアーに出ます。
そのツアーではもちろん「嵐の使者」からの楽曲もプレイしていて、現在の音として蘇っています。そのツアーの模様をまとめた「The Purple Tour Live」が今年発売されているので是非聞いてみてください。
Whitesnake "The Gypsy" (Official Video) - The Purple Tour 2015
やまやま
とある音楽配信の会社の中で編成や営業などの仕事をしてます。
中学の頃にメタルに出会ってからまさかこの年まで聴いてるとは思いませんでした。
このブログでちょっとでも普段聴かない音楽に興味を持ったり、昔聴いてた音楽を思い出すなんて事があれば嬉しいです。