引退ブログ 山本 雄大
引退。もう二度と真剣にサッカーをすることはない。目指してきたところには届かなかった。このチームで、このメンバーで、まだまだ練習がしたい。試合がしたい。後輩たちにもっと上の景色を見せたかった...
充実した4年間だった。必死で練習に食らいつき、上手な人たちと恵まれた環境でプレーすることが楽しくて仕方なかった1年目。コロナの影響で半年近く活動できない状況にもがき苦しむも、がむしゃらにサッカーを学びまくった2年目。練習を一人で担当させてもらうようになるも、全く結果を出せず無力さを痛感した3年目。昇格争いの緊張感とワクワク感のなかで、サッカーのためだけに過ごした4年目。しかし、1部には行けなかった。
引退試合となった西工大戦の後、来る日も来る日もこんなことを考え続けていた。そして行き着く先はいつも同じだった。「なぜもっとやらなかったのか。」
これは特別手を抜いていたとか、そういうことではない。むしろ今シーズンは、ピッチ内外問わずやれることを100%やることを特に意識していた。しかし、振り返ればまだやれることはたくさんあった。具体的なことから抽象的なことまで挙げるとキリがないが、総じて目標への本気度がチームとしても個人としてもまだまだ不足していたように感じる。極端すぎる考え方だが、「1部に上がれなかったら殺される」みたいな条件下だったら、もっと死に物狂いでいろんなことに挑戦していたんじゃないかと。こんな状況はまずありえないけれど。
そもそもなぜ1部昇格を目指したのだろうか。今でこそ1部は目指してしかるべきものという雰囲気になっているが、入部時はそうではなかった。とりあえず県リーグに落ちたくない。下位は嫌だ。中位を目指そう。そんな雰囲気だった気がする。その何か後ろ向きな雰囲気が嫌で仕方なくて、どうせやるならもっと高いところを目指したくて、僕は2年の初めごろに1部に行くんだと言い始めた。それが当時の最上級生の晃平さんたちの方針とも合致しており、本格的に1部昇格を目指すようになった。
本気で行けると思っていたかというと、正直なところちょっと厳しいと思っていた。もちろんチームの仲間に対しては「絶対いけるっしょ」というスタンスでいたが、それも自己暗示の延長に近いものがあった。行けると思って目指していないと行けるものも行けない。宝くじだって基本買っても買わなくてもどうせ当たらないのだが、買えばわずかながら当たる確率が出てくる。そう思って頑張っていた。
これは最後の最後まで変わらなかったように思う。4年目のシーズンの勝ちまくっていたときでさえ、今年こそ1部に行けるかもしれないという希望を抱く反面、でもやっぱり厳しいんじゃないかと思っている自分がいた。
「1部を目指すことを目指していた。」情けない限りだが、この表現が自分の4年間の振り返りとしては一番しっくりくる。いつだって自分を突き動かしていたのは、「目標に対して努力しなければならない」という強迫観念のようなものだった。
もとより大学生活にはあらゆる楽しみ方があることを考慮すると、部活動に入ること自体が大きな機会損失になりうることを理解していたため、部活に入るという選択をした以上、部活動で得られる経験や幸福を最大化することこそが自分の大学生活における使命だと考えている節があったことも、この強迫観念を増大させた。
これでも漫然と4年間を過ごすよりは幾分ましだったろう。曲がりなりにも真剣に取り組んでいたことで得られたことはたくさんあったし、充実した日々を過ごすことができた。これは心から言える。しかし、1部昇格という目標の難易度を考えると、こんな生半可な気持ちでは達成できるはずもなかった。100%の基準が低すぎた。だから「もっとやれな」かったのだ。
引退して3か月たった今も、1部昇格を果たしていたらどうだったろうと考えることがある。最高の思い出になっていた。未来のサッカー部にとって貴重な財産になっていた。お世話になった先輩たちや関係者の方々への恩返しになっていた...はじめから1部を目指す理由なんてこのくらいシンプルでよかったのかもしれない。九大が1部にいるって、すごいイケてるじゃないか。学業もサッカーも行為水準でできるところが九州にあるなんて、魅力的じゃないか。
ここからは少し未来の話をして、終わりにしようと思う。
九大サッカー部の未来は明るい。一人一人の技術レベルは上がってきているように思うし、チームとして積み上げてきた戦術的なベースや、ハードワークの部分も、これからもっと良いものになると確信している。組織としても自分がただサッカーをして楽しむだけでなく、チームの目標のために何ができるかという視点をもった部員が増えていると感じている。そしてそれを継続していける仕組みづくりはこの1年間でやってきたつもりだ。
なにより希望を感じるのは、1部昇格という目標がより身近なものになっていることだ。現に尭人は理念のミーティングの際に1部はちょうどいい目標という趣旨の発言をしていたし、凌に至っては昇格を果たせなかったのが悔しいので個人賞なんかいらないと言っていた。兎にも角にも当たり前のように1部を目指すチームになっているのは良いことだと思う。
とはいえ、来季以降は2部のレベルもまたグッと上がるため、より一層の取り組みと、昇格への強い意志が必要だ。思うような結果が出ないと目標に対してブレてしまうこともあるかもしれない。
そんなときに重要なのは、目標に追われないこと。あくまで追いかけてほしい。「このままじゃ昇格できない」ではなく「こっから巻き返せば昇格できる」という感覚。1部昇格という目標は義務ではない。その難易度を考慮すれば、ワクワクしながら目指すべきものだ。もちろん、2部残留というノルマには追われないといけないけれど。
僕が後輩たちや未来のサッカー部員に伝えたいことは、部活をもっと楽しもうということ。ただ苦しいだけの努力は必要ないが、もっと部活やサッカーを楽しくする、充実させるための努力は絶対にするべきだ。うまくなったほうが試合に出れて楽しいんだから練習しよう。勝ったほうが楽しいんだから勝つための努力をしよう。
「心躍る未来を共に」
伝えたいことはこの理念の意味するところと合致する。せっかく良い理念が決まったと思っているので、理念の運用をベースにした組織作りにも期待したい。
このブログをもって、16年間続けてきたサッカーにも、一つの区切りをつけることとする。
最後に。文化祭裏で行ったホーム沖国戦はすごかった。100人を超える方々の手拍子での応援は、無限のエネルギーになった。結果は負けてしまったけれど、あれがなければもっと大敗していたと思う。本当に心が震える体験をできたことに感謝している今でもたまにハリセン眺めてニヤニヤしてます。笑
これは本当の最後。4年間サッカー部の活動を通して関わっていただいたすべての方々に感謝申し上げます。特に金銭的な面で多大なサポートをしていただいたOBやスポーンサー企業の方々には、コロナウイルスの影響もありなかなか直接感謝を伝えられる機会がなかったことを申し訳なく思っています。本当にありがとうございました。