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紺碧の採掘師2

第9章 02

2023.03.21 12:00

雲海の中の遺跡では、3隻のメンバーが集って昨夜渡された源泉石採掘の要綱を見つつ勉強会を開いていた。

周囲に転がっている岩を持ってきて椅子代わりにし、何人かのメンバーはそれに座っている。

ウィンザー、要綱の冊子を見ながら「スタートする時って5隻それぞれ別の方向に飛ぶ事になるのか…。」

ティーツリー「え。どんな風に…。」

春日「これだな。」と冊子に描かれた地図を指差して「待機場所と飛ぶ方向に各船の登録ナンバーが割り振られてる。レッドは何番だっけ?」

ウィンザー「えっと…」

同封されていたカメラをいじっていたサイタンがカメラの背面を見せて「これだ。」そこにはでかでかとD4のナンバーが印刷されている。サイタンはカメラを見ながら「これどうやって撮るのかわかんねぇ。スイッチどこだよ。」

春日「スマホと同じようなもんでは…。」

ウィンザー「俺が撮りますよ。」

相原「レッドがD4で、他の船は何番?」

春日、一同に向かって「レッドはD4です、他の船は何番?」

アッシュ「ブルーはD3」

楓「シトリンはD5」

春日「…恐らくアンバーは最初だからD1かなぁ。すると黒船がD2かな」

陸、要綱を見つつ「それにしても、この…鉱脈を全部採らないとか、面倒そうな…。」

すると満が「少し残せばいいだけの話だ。それより採掘権についてだが、妖精が審判とは…。」

春日、思わず「妖精が?」

陸「うん。基本的に早い者勝ち採ったもん勝ちだけど、同時に同じ所に来たとか、どちらに採掘権があるか判別できない時には妖精に聞けと。」

春日「へぇ。」と言って近くでコロコロ転がっている丸い妖精を手に取ると「君が審判か!」

楓「まぁフェアではあるわね。」

ジュニパー「ねぇそれよりアタシ、源泉石の等級なんて、わかんないんだけど。」

クォーツも「同じくです。そもそも探知した事ないし…。」

そこへ礼一が「あのー、ちなみにここ、探知感覚ちょっと変になりませんか。」

ジュニパー「あらやっぱり?…昨日は気づかなかったけど、確かに探知感覚が歪むわね。自分の周囲の探知はいいけど離れたとこを探知すると、上手く焦点が合わないみたい。」

礼一「ですよねぇ。凄い不思議な感じがする。」

クォーツ「あと、妖精がちょっと邪魔…。」

礼一「わかるー!頻繁に妖精のイメージが湧いて、集中できなくなる。」

すると目を閉じて探知の練習をしていた綱紀が目を開け「え。そうなんですか。」

礼一「俺はそうだよ。」

クォーツ「今朝、妖精が出てきてからそうなった。」

綱紀「良かった、俺だけじゃなかった…。」と安堵の表情になる。

クォーツ、そんな綱紀を見てしみじみと「…綱紀さん、ホント変わりましたね…。」

ジュニパー「でしょ!カルちゃんの特訓受けたら別人みたいになっちゃって!」

綱紀ちょっと照れ臭そうに「そんな変わったかな…。」

陸「変わったよ!」

コーラル「変わった!」

聖司「凄い変化した…。」

楓も綱紀の方に身を乗り出し、力強く「変わったわよ!一体何があったの?って思うほど!」

綱紀「…特に何がって訳でも…。少し探知が出来るようになっただけで。」

礼一、溜息ついて「俺もカルロスさんに特訓受けたいなぁ…。」

途端にクォーツが「同感です!」

ジュニパー「ねぇ、そしたら皆でカルちゃんに特訓お願いしましょうよ。源泉石の等級とか教えて!って。」

その時、ウィンザーが「あっ」と遠方の上空を指差して「カルセドニー戻って来た。」

ジュニパー「えっ、ちょっと!探知が4人も居てカルセドニーを探知できなかったってどーいう事よ!」

クォーツ「あー…。」

礼一「だって妖精が!」

陸「とにかく行くぞ!」

満「作業開始だ!」


カルセドニーが広場に着陸すると、シトリンのメンバーがバッと貨物室の扉に駆け寄り、陸がインカムに「貨物室、開けてもいいですか!」と聞く。

インカムから駿河の『どうぞ!』という返事が返って来ると共に陸はロックを外して扉を開けると搬出用のタラップを降ろして中のコンテナを台車に積む作業を始める。コンテナが積まれた台車はレッドのメンバーがブルーの船体まで押し運び、そこからブルーのメンバーが自分の船の貨物室にコンテナを運び入れる。

見事な連携プレーでカルセドニーのコンテナ搬出作業が終わり、貨物室の扉を閉めて再びカルセドニーは採掘場へと飛び立つ。

ブルーの貨物室でコンテナ搬入作業をしていた満は、一番最後に来たコンテナの蓋を開けて中の鉱石を見ると、「おお…。」と驚き周囲のメンバーに「皆、見てみろ。」

アッシュ「なんですか。」と言いつつ鉱石を見て「…うぉ!」と衝撃を受ける。

マリン「昨日見た。凄い鉱石だった!」

進一も来て「すげー!」

満「…黒船とアンバーめ、こんなものを採っていたとは…。」

アッシュ「俺らが採ってたのと差がありすぎでは!」

満「これはシトリンやレッドがどんだけ頑張ろうと追いつけない領域ではないか!…この差を知っていながら管理は3隻をイェソドに行かせてくれなかった。…なぜだ…。」

進一「あんまり採られると困るとか?」

満「ううむ…。」と悩んで「わからん。わからんが、…我々もこんな素晴らしい鉱石を採ってみたい…!」

アッシュ「何とかしてイェソドで採掘を…!」

満「…勝つしかないな。」

アッシュ達「!」

進一(かっ…監督…!)

満は一同に凄んで「源泉石バトル、勝つしかないな!」

アッシュ達は「合点承知!」とガッツポーズをしながら(監督の覇気が復活した!新たなステージの始まりだ!)と心の中で祝砲を撃つ。



再び鉱石採掘場に到着するカルセドニー。

すぐに護が貨物室の扉を開けるとタラップを降ろして鉱石コンテナ搬入作業を始める。

ジェッソ「白船に積むぞー!」

護「ついに白船になった。」

ジェッソ「カルセドニーは長い!」

護「カル船でもいいよー!」

カルロス「ダメだ!」

さっきコンテナを運んでいたレンブラント達が今度は採掘作業をし、ジェッソ達がコンテナを船に積む作業をする。

そして再びカルセドニーの貨物室が満杯になる。

護「白船、締めます!」

護は貨物室の扉を閉めてロックをかけると「飛ぶぞ離れろー!」と言いつつジェッソと共に船体から離れるとインカムに「船長、飛んでOKだよ!いってらっしゃーい!」

駿河『行ってきます!』

上昇するカルセドニー。メンバー達は採掘を続け、今度は黒船にコンテナを積み始める。

メリッサ、作業しながら笑って「…大変だけど楽しい。もし管理に4隻分採れとか言われたら激怒案件だけど!」

レンブラント「何の為に仕事をするのかって、マジ大事だよな。」

メリッサ「ねー!」

しばらく作業をしているとカルセドニーが戻って来て着陸する。護が貨物室を開け再度カルセドニーにコンテナを積み始める。満載になると扉を閉めて駿河にOKを出して船を出発させる。

ジェッソ「ここで10分休憩!その後、向こうの壁に発破かけて崩す!」と現在採っている場所の奥の壁を指差す。

地面に座ったり自分の水筒の水を飲んだりするメンバー達。そこへ妖精が近づいて来る。

昴、ふと妖精を見て「…なんか不思議そうな顔してる。」

メリッサも妖精を見て「…ん?」と言うと、妖精を抱き上げて笑い、「この子に面白いって言われた!」と妖精の頭を撫でて「何が面白いのよー!…ええ? よく動くから?」

オーカー「ところで今のでブルーの終わり?」

夏樹「多分?」

オーカー「次からレッドの分か。」

カルロス「しかし凄い速さでカルセドニーの貨物室が満杯になるな。流石というか何というか。」

護「この間、アンバーに手伝ってもらった時より早え…。」

レンブラント「そりゃー黒船ですから!」

護「なんか悔しいぞ。俺ももっとがんばろ!」


10分後。再び昴が発破をかけて鉱石層を崩すとまた採掘作業が始まる。採った鉱石は黒船に積む。

突然、カルロスが「お。」と何かに気づくと作業の手を止めて一同に「皆、アンバーが来るぞ!」

ジェッソ達「!」

昴「手伝いに来るのか。」

カルロス「いや、3隻の所に向かっている。…向こうで事情を聞いたら来るかも。」

ジェッソ「なるほど。」

一同は作業を再開する。暫くしてカルセドニーが戻って来る。着陸した船体に護が近づき貨物室の扉を開けつつインカムに「船長、ブルーは積み終わった?」

駿河『ブルーは終わった。次はレッドだ。』

護、一同に「ブルー終了、次レッド!」

駿河『ちなみにアンバーが向こうに来たよ。でもこっちには来ない。』

護「えっ。なんで?」

駿河『…穣さんが、黒船が死んだら助けに行ってやる、と言っておりました。』

護「…。」暫し黙ると黒船の一同の方に向かって「皆さん!アンバーからの伝言をお伝えします!」と言うと大きく息を吸って「黒船が死んだら助けに行ってやる、と!」

ジェッソ「ほほう!」

レンブラント「流石だ。」

昴「なんてこった!」

メリッサ「意地でも死なないわ。」

そこでジェッソが突然ハッ!と何かに気づくと「アンバー、あいつら採らなくていいから運搬船になってくれれば一回で済むぞ!」

一同「!」

カルロス「そうかカルセドニーが何度も往復しなくても!アンバーに積めば一回で済む!」

ジェッソ、インカムに「駿河船長!次に向こうに行ったらアンバー連れてきて下さい。運搬船させます!穣とか採掘メンバー要らんから船体が欲しい!」

その言葉に一同、ドッと笑う。

駿河も笑いつつ『了解です!』

一同はカルセドニーの貨物室を満杯にすると船を発進させる。そして黒船に積みながら採掘作業を続ける。


数十分後。採掘場に2隻の船がやってくる。

カルロス「…マジで船が、来た。」

ジェッソのインカムに駿河から通信が入る『ジェッソ監督、どのように着陸したらいいですか?』

ジェッソ「真ん中に黒船を挟んでカルセドニーが左、アンバーを右に。」

駿河『了解!』

指示通りにカルセドニーとアンバーが着陸すると、護たちはアンバーの船体の下に駆け寄る。

採掘口のタラップが降りて、上から操縦士のセルリアンが降りて来る。

護「アレ?」と驚いて「三等のセルリアン君。なんで?」

セルリアン、一同を見て「船体だけ欲しいと言われたので、必要最低限のクルーだけで来ました。採掘メンバーは誰も居ません!」

途端に一同爆笑。

レンブラント「居ないって、船室とかにも居ないの?」

セルリアン「はい!」

護「マジで船だけ来た!」

セルリアン「うちの採掘監督から伝言です!船内汚すなキレイに積めよ、傷とか付けたら損害賠償、だそうです!」

ジェッソ「傷はつけないがラクガキはしたい。」

護「なにゆえ…。」

レンブラント「ま、積みましょうか!」

一同はコンテナをアンバーの貨物室に積み始める。

ジェッソ、採掘作業をしつつ「何かアンバーにお土産を残したいな。」

夏樹「土産?」

ジェッソ「うん。」と言い暫し作業を続けていたが、「あ。ちょっとトイレに行って来る。」と言いシャベルを置いて黒船の方に走って行く。

夏樹「いってらっさい。」

少ししてジェッソが戻って来ると、一同に「皆、アンバーを出したら昼飯だ、頑張れ!」

一同「はい!」


一同黙々と作業を続けてやっとアンバーの貨物室を満載にする。

積載作業を見守っていたセルリアンは、レンブラントに「そろそろ積み終わりますね。」

レンブラント「うん。」と言うと貨物室の電気を消し、「よーし貨物室閉めるぞ!」と言って扉に手を掛ける。

その途端、ジェッソが「ちょっと待て!」と言うと腰のポーチからハンカチとセロテープを出し、貨物室の扉を開けてすぐ見えるコンテナの前面に、そのハンカチを広げてセロテープで張り付ける。

レンブラント「…なんですかコレ!」

ジェッソ「穣への土産だ!」

大きな四角いハンカチにはデカデカと『黒船参上!』という手書きの文字の横に妖精の適当な絵が書いてある。

レンブラント「…このショボい妖精の絵、笑う…。何でハンカチに?」

ジェッソ「大きな紙が見当たらなかった。」

セルリアン「ちなみに搬出作業はブルーが」

ジェッソ「なにい!」ショック

その驚きぶりにレンブラントが爆笑する。

セルリアン「アンバーから降ろすのはブルーで、運ぶのがシトリンで、船に積むのがレッドだと…。」

ジェッソ、セルリアンに「何とか最初に穣に貨物室を開けさせてくれ。これは黒船からの伝言だと!」

セルリアン「はぁ、分かりました。タラップ降ろす前にまず穣さんを呼びます。」

ジェッソ「頼む!」

レンブラント笑いながら「…でもどう考えても穣と一緒にブルーのメンバー来るだろ…。」

ジェッソ「…まぁ、…いいさ…。」


アンバーは上昇して3隻の元へと飛んでいく。

ジェッソ達は昼食の為に黒船の船内へ。護やカルロス、駿河も一緒に中に入る。

駿河「久々に黒船でご飯だ。」

カルロス「だなー。」

食堂に入って配膳カウンターの横でカップにお茶を淹れていると、キッチンの方からフフッと笑い声がして「何だか懐かしい光景…。」という声。

駿河、トレーを取ってその上にお茶を乗せつつ「久々にジュリアさんのご飯を食べに来ました。」

ジュリア「嬉しいな。今日は皆が好きな鳥の唐揚げにしました。」と言いつつ駿河と、隣のカルロスのトレーに唐揚げの乗った皿を置きつつ「もりもり食べて頑張って。…2人ともゴハンは普通盛りよね。」と言って茶碗にご飯をよそう。そこへカルロスの隣の護が「俺は大盛りを頂いても宜しいでしょうか。」

カルロス「アンバーの癖に!」

駿河「アンバーはダメ。」

護「ええ!」

ジュリア笑って「じゃあ中盛りにしてあげよう。」


配膳カウンターの前のテーブルではジェッソとレンブラント、そしてその向かいに昴と夏樹が座って既に昼食を食べ始めている。カルロス達はその奥のテーブルに行き駿河とカルロスが並んで席に着いて護は駿河の正面の席に着く。

護「いただきまっす!」と言うとゴハンを食べ始める。

駿河も食事を始めつつ「わざわざテーブル一つ空けてくれたな。」

カルロス「まぁ我々は他に食べる場所が無いので、今は。」

そこへ食堂の入り口に総司が顔を出して中を覗くと「あ、空いてる」と呟き中に入ってカウンターの方へ歩いて行く。

駿河、ちょっと総司の方を見てからゴハンを食べつつ「しかし今日は何時にジャスパーに戻る事になるんだろうか。」

カルロス「夕方だな。そこから集積所が前代未聞の大混雑だ。」

駿河「ウチの船は別枠だからとっとと降ろして街で夕飯かな。」

そんな話をしていると、総司が昼食のトレーを持ってやって来て護の隣の席に着き「…なんか懐かしい光景ですね。」

駿河笑って「皆、言う。…つい数ヶ月前の事なのに。」

総司「それはそうですが。」

駿河「なんか随分と管理さんに虐められたようで。」

総司「俺?…虐められてはいませんが。」

すると隣のテーブルのジェッソが総司を指差して「かなり、やられてました。」

駿河「そうなのか。」

昴も「相当ぶっ壊れてた。」

総司「いやいや。」

昴「だって甲板で一人で叫んでたし。」

ジェッソ「えっ」と同時に

総司も驚いて昴の方を見ると「ちょい待った。いつ…。」

レンブラント「叫んでた?」

昴「あのクソ管理ぃー、負けるものかぁーって。」

ジェッソ「ほー!」

総司、顔を真っ赤にして「何で知ってる!」

昴「たまたま。誰かが上に行ったから、アレ? 何で雲海で甲板に?と思って。」

総司ガックリして「ハッチ閉めてたのに…。」

昴「ちょっと開けた。船長すげーと思った。おっかないからコッソリ閉めて逃げた。」

総司「見られてたとはー…。」

カルロス「…総司君を壊すとは、管理の破壊力も相当だな…。」

ジェッソ「だって殆ど毎日遅刻ですから。事務所で管理に捕まって。」

総司、溜息つくと「そりゃね…雲海で怒鳴ってストレス発散したくもなりますよ。」

すると駿河が笑って「流石だ。俺、そんな事できなかったしなー。」

総司「何を言ってるんですか、貴方の忍耐力も相当ですよ。」

駿河「まぁ俺は人間だからさ。人間より人工種の方が風当たりは強いよな。でも総司君なら耐えるだろうなーと思ってた!」

総司「まぁ耐えてますけどね!…しかし昨日、貴方が突然甲板に現れたのはビックリしましたよ。どうやって来たんですか」

駿河「ん?…必死に逃亡してたら武藤がブルーで助っ人に来てくれたんで、ブルーに操縦士を借りて、俺は護さんと上から右翼にダイビングを。」

総司「流石、俺はそんな事できないなー!」

カルロス「…似た者船長だ…。」

そこでふと、駿河が「あっ、そういえば思い出した。カルさん、探知の特訓をして欲しいって。」

カルロス「誰が?」

駿河「ジュニパーさんが!」

途端にカルロスが物凄い辟易顔になって「…なんで…。」

駿河「3隻の探知全員、源泉石の等級なんぞワカランからカルちゃんに教えて欲しいってジュニパーさんが!」

カルロス「はぁー…。」とカックリする。

総司、そんなカルロスの顔を見て「…貴方のそんな表情、初めて見ました。随分面白くなりましたね!」

駿河「だろ?」