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大学受験予備校  弘道塾

AIと教育-AIは教育者か。

2023.03.06 14:23

最近某大手個別指導塾のCMでよく見るんです。AI教材がどうとか短期間で間に合うとか。

教育のAI活用は2019年くらいから盛り上がってきました。有名なのは予備校と組んでいるatama+でしょうか。

当初から今に至るまで自分の中では「AIはそんなに万能なのか?」と思っており、2023年現在でもあまり変わりません。

その辺に関する答えの1つは↓に詳しく出ているのでそちらを参照ください。本記事ではAIに関することを論じるのは本筋ではないため割愛します。


教育と絡めて自分が気になっているのは以下2点

1.AIは教育者の代わりになるのか?

2.AIを利用すると大学に合格する可能性が高まるのか?

それぞれ私見を書いてみます。


まずは1.から。そもそも予備校/学習塾業界がAIを取り入れるようになった理由は「人手(講師・スタッフ)不足」が原因です。

2019年より前から塾・予備校は「ブラックバイト/職場」とさんざん叩かれて、アルバイト/正社員の雇用が極めて難しくなっていました。人がとりにくくなった際に考えた手法として「人間でなく機械(=AI)に管理させる」という発想に至ったところが何社かあったというのが発端です。

その後コロナ禍においてなんとなく市民権を得て今に至るという流れになっています。

つまりAIは人の代わりに勉強を管理する役割が求められていたのです。だから基本的に塾のAIは「ココができたらコッチ」「コレの次はコチラをやりましょう」といったツールになっています。

ここで自分はこう思うんです。「そもそも人間は、そんなに毎日きちんと勉強できるのか?」「与えられるものを与えられるままに-言い換えれば無味乾燥に-問題を処理し続けることはできるのか?」

もちろんできる人はいるでしょう。しかしながらそれは相当少人数であることは自分の経験則的に言えば明らかであると断言できます。

そもそも教育者というのは、そういった無味乾燥な勉強というものに豊かな(は言い過ぎかもしれませんが)味わいを加えるために存在するのです。そして日本における教育の本質は「師弟同行」です。AIとともに歩むことで勉強が続けられるのかは甚だ疑問です。

AIを採用している塾はきっとこう言うでしょう「そういうときは先生に相談するんだよ」と。それができないから予備校や塾に通ってるんですよ。普通は。自分だったらもう一つ加えて「だったら最初から先生と一緒にやればいいじゃん」と言って差し上げたい。もちろんAI導入の発端が人手不足なので、そんなことできないのは知っていますが。

そもそもAIの得意分野は「答えがあるものに対する問いかけ」ですので、生徒の悩みや学力向上といった「答えのない問い」は専門分野ではありません。よってAIは教育者の代わりにはなりえないのです。


続いて2.のほう。コチラがAIの得意分野に見えるようで「膨大なデータから問題の正否を分析して自分の〇×から解くべき問題を効率よく発見していく」という感じの説明が大体されています。

うーん、突っ込みどころ満載なのですが自分が考える怪しい点は2か所。

1.所謂ビッグデータ分析は有効なのか?

2.効率よく勉強すると大学に合格できるのか?

1.に関しては多分2019年の少し前に「将棋でソフトに人間が完敗した」あたりから「ビッグデータ分析というのは(なんかよくわからんが)スゴい」というイメージが先行していた結果と思われます。

ちなみにビッグデータ分析と愛想が良いのは「画像診断」で、実際将棋のソフトでも特定のコマの位置で形勢の良し悪しを判断する手法が用いられています(三角法とかなんとか言われています)

2016年に東大のスパコン「ワトソン君」が診断の難しい白血病をわずか10分で見抜いたなんて話はまさに「画像診断」とビッグデータ分析の組み合わせが相性良いことの証左です。

閑話休題、つまり何が言いたいかといえば、先ほども述べましたがAIには得意分野があって、ビッグデータ分析は画像診断とセット利用が良い結果を生むということです。

問題の〇×は画像にすることはできませんし、そもそも解答には「△」もあります。そういったものにAIが有効であるかは、現時点では両手を挙げて賛成はできないというのが結論です。

効率が良いかというのがそもそも怪しい中での話ですが2.について。効率の良い勉強というものは経験則からいうと「百害あって一利なし」です。

世間一般でプロと呼ばれる人はそのほとんどが基礎基本を大事にしますし、日々実践しています。そしてそれはどう見ても「効率は良くない」でしょう。イチローのような超一流の選手が日々バットを振っている姿が「効率が良い」とは普通は思いません。「バットの振り方」は効率が良いかもしれませんが「バットを振る作業」は効率が良いものではないでしょう。イチローに限らずプロはいろいろな理由で基礎基本を大切にします。どちらかというとプロという言葉より職人という言葉のほうがしっくりくるかもしれません。

そして受験勉強というものも職人の世界です。少なくとも理系教科は職人芸がものをいう世界です。実際自分の教え子で目標の大学に進学した生徒の中に効率の良い勉強を目指していた生徒はいません。結果的に効率よい勉強をしていた可能性はありますが。

勉強において大事なことは「効率」ではなく「濃密」つまり密度の濃さです。これを獲得するのは「師弟同行」にほかなりません。師とともに単に答えを教わるのではなく討議を重ねることによって解き方が身について離れなくなります。こうすることで勉強ができるようになり志望校に合格できます。


ながながと書き連ねましたが、大事なことは「行きたい大学に合格すること」です。その目標が果たせる大学を見つけられるように本記事が一助になれば幸いです。



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