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空想都市一番街

エッセイ「灰色の夜」

2023.03.09 10:43

「青い目のステラ」を聴きながら狭い浴槽に半分だけ貼った湯に浸かる。


頭には快感と幸福と、無と不幸せと、ゆるい希死念慮が膜のように張り付いている。鬱陶しいようで、どうでもいいようで。


目を閉じる。このまま死んでも別にいいなぁ、と思ったりもする。それは結構本気でもあり、戯言でもあり。


恵まれているのに孤独な気持ちになるのは、あまり人と本気で共感出来たことがないからだな、とふと気づく。


難しいことを考えるのは損だな、と、亡くなった同僚のことを思い出すと私は思うのだった。

あの人は共感だとか云々いちいち考えてなんかなかった。ただ、「仲のいい友達」がいて、それで心地が良さそうだった。


私もそう出来たら、きっともっと幸福なんだろうと思う。


共感や、興味関心を持たれたい、と思うのは、それが足りなかったからだ。


今までの人生で満たしたことのない部分なのだ。


だからそんなことばっかり考えてしまうのだろう。


私は、小さな声で風呂で歌った。

部屋にいる相方には筒抜けだろう。


でもなんでもいいや。


求めなければ全てがあるのだ。

そしてそれがたまらなく悲しく虚しいのだった。


おかあさん


ふと思った。


私を見て。



お母さんのようにお姉さんのように、私の話を聞いてくれた元同僚が逝ってもう一年以上たつ。


私もいつか行くのだ。

怖がりだったあの人が辿った道を。


それまで、少しくらいは、求めてもいいよね。


くだらない散文を書き散らしながら夜は過ぎる。


「青い目のステラ」が優しく流れる。