エミッタ接地回路 その2
下記の記事でエミッタ接地増幅回路その1で紹介したエミッタ接地増幅回路ですが
もう少し、回路動作を深く見ていきたいと思います。
通常エミッタ接地回路の各部の電位はトランジスタのエミッタが最も低く、
ついでベース、そしてコレクタです。
電位が逆転。でも少しくらいなら大丈夫
図2aは比較的信号振幅の低いときの波形で、エミッタ、コレクタ、ベース電位は図に示すようにセオリーどおりです。
ところが、図2bのように、振幅が大きくなるとベースとコレクタの電位が逆転する区間がり、ありなんだか気持ち悪く感じます。
図2a 比較的信号振幅の小さいときのトランジスタ各部の波形
図2b 比較的信号振幅の大きいときのトランジスタ各部の波形
しかし増幅動作は出来ているようです。なぜこの状態でも増幅できていたのかについて、
私なりの仮説を述べます。
バンド図による仮説
なぜそれでも増幅していたのかは、バンド図で考えると理解できると思います。
図3は増幅動作中のトランジスタのバンド図です。
電流は一部がベースに流れていますが(再結合電流)、大部分がコレクタから
エミッタに流れています。
図3 増幅動作中のトランジスタのバンド図
電子の流れはエミッタからコレクタへ流れているので、左から右に流れています。
ベースP型とエミッタN型のバンドの高さがそろったときにかかっている電圧は約0.6Vです。
エミッタからコレクタへはそれよりも大きな電圧がかかっています。
図4はトランジスタがカットオフしているときのハンド図です。
ベースエミッタ間の障壁0.6Vがあるため、電子は容易にコレクタへはいけません。
図4 トランジスタがカットオフしているときのハンド図
そして図5は今回のエミッタ接地回路でコレクタ電圧がベース電圧よりも低くなった
(今回の回路では0.2V程度)状態のバンド図です。
図5 ベース電位とコレクタ電位が逆転したときのバンド図
トランジスタはベースが薄く作ってありエミッタからベースへ向かっていた電子は
一部を除くきベースを通り過ぎてしまい、コレクタに到達します。
ベースコレクタ間の電位はコレクタのほうが高いものの、
エミッタに比べればまだ0.4Vほど高いので、勢いで何とかコレクタに電子はキャッチされます。
こうして、この時点でもまだ、ベース電流<コレクタ電流の状態が続いており。
増幅作用が実現されていると考えています。