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9-GATE Motor cycle maintenance/modefy

連桿比(れんかんひ)って知ってる?

2023.05.31 00:35

ストバイさんの取材を先日受けたので、ちょっと触れておこうかと思います。

この「連桿比」。

じつはエンジンを考える上でとても重要な事なのです。

この「連桿比」(れんかんひと読みます)は、コンロッドの長さの比率の事です。

SRには、400と500がありまして、皆さんご存じかと思いますが、

その排気量の差は、「ストローク」の違いになります。ピストン径は同じφ87です。

つまり、400の方がストローク長が短いと言う事になります。


SR400:87.0×67.2=43.5×43.5×π(=3.14として計算)×67.2/1000

=399.27cc

SR500:87.0×84.0=43.5×43.5×π×84/1000=499.09cc


同じクランクケースを用いて、同じピストン(正確には違うけど)を使って

ショートストロークにするには、クランクピンの位置を変える必要があります。

また、コンロッドも違うものを用いる必要があります。


これはSR400のクランクシャフト。

連桿比とは、このコンロッドの長さとストロークを割った比率の事になります。

連桿比は計算で求めることが出来ます。

計算式は、コンロッド軸間距離÷ストロークの半分=連桿比となります。

では、実際に計測して計算してみたいと思います。


これは500のコンロッド。

400クランクは分解したものが無いので、クランクシャフトに取りついた状態で

コンロッドの端~端の寸法を測定していきます。


クランクピン及びピストンピンの径は同一であると考え、ここでは分解されている500の

コンロッドから寸法を計測していきます。


ちょっと片手で撮影するのが難儀でして、実際には

クランクピン穴径はφ42.0mm

ピストンピン穴径はφ20.0mmとなります。

ちなみに外端~外端での計測ですので、ラフな寸法計測ですが、分解されていない状態からだとこれが限界です。

今回は、これで勘弁してくださいませ。

次に外側のリブ厚みを計測すれば、軸間の寸法が追えます。


ま、今回はあくまでラフな感じで。

本来であれば、マイクロメーターなどを用いて測定する必要があるし、できるなら内~内で測定するのが間違いないです。

何度も言ってしまうのですが、分解されていない400クランクのコンロッドの軸間距離を測定できないため、外で計測していますので、ご了承を。

ここでは、リブの厚みなどは同一であると考えて計算していきます。

 500コンロッド(外~外):186.4=187mmとする。

 400コンロッド(外~外):193.87=194mmとする。

 クランクピン側の厚み:8.35=8.4mmとする。

 ピストンピン側の厚み:5.99=6.0mmとする。

 クランクピン内径を42.0mmとする。

 ピストンピン内径を20.0mmとする。

以上の数値を用いて計算。

500コンロッドの軸間距離=187-(8.4+6.0)-(42.0/2)-(20.0/2)=141.6(mm)

400コンロッドの軸間距離=194-(8.4+6.0)-(42.0/2)-(20.0/2)=148.6(mm)

では連桿比を計算します。

500の連桿比:141.6/(84.0/2)=3.37(だいたい)

400の連桿比:148.6/(67.2/2)=4.42(だいたい)

実際に分解されている500コンロッドの内~内寸法(工作制度が出ているのでこっちではかるべき)で計測したところ、145(mm)でしたので、ちょっと誤差が出ました。

なので、計算上だと(外~外)97.8%の数値に実際なってしまいました。

今度400クランクを分解する機会がありましたら、400のコンロッドのデータも残しておきたいと思います。

どちらのコンロッドも97.8%を用いて数値を修正

141.6×1.024=144.99=145mm

148.6×1.024=152.16=152mmと仮定します。

145/(84.0/2)=3.45

152/(67.2/2)=4.52


一般的なエンジンは3.5前後ですから、500のクランクは一般的なエンジンの連桿比であることが判ります。

対して、400のコンロッドの連桿比はレース用エンジンの様な連桿比であることがわかります。

ちなみにフォーミュラーエンジンなどは5とか言う連桿比になるらしいです。

この連桿比が大きいと、ピストンとコンロッドの作用角が小さくなります。

どういうことかと言いますと、ピストンが上死点から燃焼行程で押し下げられるときに、

クランクシャフトに繋がれているコンロッドは回転運動へ変換するために傾きます。

連桿比が大きいとこのコンロッドの傾きが小さくなるため、ピストンに対するサイドフォースなどが軽減できて、高回転高出力に向いたエンジン特性になる。

500のクランクは一般的な数値であることから、それがダメな訳ではないのですが

400が素晴らしく優秀な連桿比であることがお分かりいただけたかと思います。

バイクではあまり聞きなれない連桿比ですが、

4輪ではメジャーなチューニング方法として、各メーカーさんが取り組んでます。

NISSANではVQエンジン、HONDAならEK9シビックTYPE-Rに搭載されたB-16Bエンジンが有名です。

過去にも記した、平均ピストンスピードの問題、今回の連桿比の問題など

実は400のクランクはレーシングエンジン並みの優秀っぷりだなぁとつくづく感じるわけです。

高回転高出力を狙うのであれば、400クランクをベースにする方が良いのは数値的になんとなくお分かりいただけたかと思いますが、

実は400クランクは500クランクより重いのです。

ロングコンロッド=コンロッド重量増+クランクも重量増

クランクシャフトのお話はまた今度の機会にしたいと思います。

500のクランクに400コンロッドで、アッパーデッキ組んでなんてやるとエンジンが搭載できなくなっちゃうので、ピストンピンハイトが超絶に低いピストンとか造れたら・・・。夢が広がりますね。


それではまた。