【2023春特集】1:環境省に聞く土壌・地下水汚染対策制度の今後の展望
環境省水・大気環境局参事官(土壌・地下水・地盤環境担当)・堀内洋氏インタビュー
※電子専門紙「Geo Value」2023年新年号より一部抜粋
土壌環境を巡る状況を見ると、改正土壌汚染対策法の全面施行から3年半以上が過ぎた状況下、次期改正に向けた関心が高まるほか、有機フッ素化合物であるPFOS等の新たな課題への対応など様々な動きが出始めてきています。土壌汚染対策の基本となる土壌汚染対策法の改正に向けた考えや、新たな課題に対する方向性等についてECO SEED(代表・名古屋悟)では業界向け電子専門紙「Geo Value」2023年新年号で環境省水・大気環境局の堀内洋参事官を取材し、掲載しています。ここでは、そのインタビューを一部抜粋し、紹介します。
※写真:環境省が入る合同庁舎5号館(撮影:ECO SEED)
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◆制定から20周年を超えた土壌汚染対策法◆
――土壌汚染対策法は制定20周年を迎え、記念誌の発行等も行われました。改正法全面施行から3年半強の状況、法施行の状況に関する所感を。
「土壌汚染対策法は、法制定から20周年を迎えました。法の施行・運用は、関係者の皆様の御理解、御協力の上に成り立っており、この場をお借りして篤く御礼申し上げます。
改正法は2019年4月に完全施行されてから3年半以上が経過しています。法に基づく調査契機の拡大に伴い、調査件数は増加傾向を維持しており、土壌汚染が見つかった場合は、適切な措置や管理が行われています。自治体のご尽力もあり、概ね順調に施行されているものと考えています。
今後とも、自治体だけでなく、関係事業者あるいは土地の所有者を含めた一般の方に対しても改正法、各種ガイドライン等について丁寧な周知を継続していくことが重要と認識しており、力を入れています。
直近では、その一環として、改正法の全面施行に合わせて2019年3月に改訂・公表していた『土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第3版)』について、内容の充実等の観点から、2022年8月に再度の改訂・公表を行いました。
また、長年課題となっている中小事業者等への法の調査契機等の周知のため、2022年12月に周知用のチラシ等を作成し、地方自治体に共有しました。今後、こうした資料を地方自治体で活用いただき、法に基づく汚染土壌に対する適切な対策が一層推進されることを期待しています」
◆次期改正への視点…更なる合理的なリスク管理の推進、十分な技量持った人材の確保、脱炭素化・手続のデジタル化等◆
――次期改正に向けた準備も始まっているかと思いますが、土対法改正に向けた論点となりうるのはどのような点になりますか。
「現時点で法の施行状況を集計・公表しているのは、2020年度までの実績となります。環境省では現在、地方自治体の御協力をいただき、2021年度の施行状況の確認を進めるとともに、改正法の全面施行後に認識されている課題等についても、実態の把握を進めようとしております。
現行制度の点検は、これから方法等を含めて検討していくこととなりますが、法全体として、これまでの2度(2009年、2017年)の改正や省令等の改正を通して、制定当初に比べて制度の複雑化が進んでおり、関係者にとって制度自体を理解するハードルが高くなってきている、あるいは、都道府県等においても各種手続に伴う事務負担が大きくなる場合があるといった声は伺っています。
一例として、一定規模以上の土地の形質の変更を行う際の事前届出について、従前は土地の所有者等の同意書添付が必要とされておりましたが、共有地等において土地の所有者が非常に多数となる場合等では、事業者や自治体の大きな負担となることが明らかとなってきました。そのため、環境省では2022年3月に省令改正を行い、同意書の添付を必須とせず、『登記事項証明書その他の当該土地の所有者等の所在が明らかとなる書面』を添付するよう見直しを行いました。今後も必要に応じ、このような制度の合理化等を図っていくことも必要だと考えています。
法制定から20年が経過し、人口減少社会の本格的な到来、脱炭素社会を目指した取組の推進等、土地の利用等を取り巻く社会的な状況も大きく変化しつつあります。土壌汚染対策法との関係では、指定調査機関への設置が義務付けられている技術管理者について、近年、国家試験への受験者数等が減少傾向にあり、十分な技量をもった人材を継続的に確保していくことが重要となってきています。また、汚染土壌の掘削除去は、真に必要な場合を除いては、人の健康リスクの低減という観点から見て必要以上の措置と言えるのみならず、措置の過程で温室効果ガスの排出が多くなりやすいという点で、脱炭素社会を推進する観点からも望ましくなく、『サステイナブル・レメディエーション』の考え方などを、どのように広めていくのかも課題となると考えています。さらに、汚染土壌の運搬・処理の際に用いる管理票について、手続のデジタル化・省資源化等を進める観点で、電子化に向けて引き続き取り組むことも必要です」
◆2023年度内に1,4-ジオキサン調査手法、六価クロムの土壌環境基準の見直しで一定の方向性を◆
◆PFOS等は水環境の目標値等について2023年早々に専門家会議設置へ◆
――PFOSなど新たな課題も話題になっています。今年度予算では、「1,4-ジオキサンの調査方法の検討、PFOS、PFOA等に関する調査・対策方法の検討」、「生活環境の保全に係るリスク管理の検討」などを盛り込まれましたが、現在、どのような状況でしょうか。
「1,4ジオキサンは2017年に環境基準が施行されましたが、既存の土壌ガス調査方法ではうまく捕らえられないことから、中央環境審議会答申では『当面は特定有害物質には指定せず、汚染実態の把握に努め、併せて効率的かつ効果的な調査技術の開発を推進するとともに、合理的な土壌汚染調査手法が構築できた段階で、改めて特定有害物質への追加について検討することが適当である。』とされています。このため、調査手法の確立に向けて、専門家の助言等をいただきつつ、鋭意検討中です。2023年度中を目途に、一定の方向性を中央環境審議会等でお示しできるよう、取り組んでまいります。
また、六価クロムの水質環境基準が2022年4月に0.05 mg/Lから0.02 mg/Lに引き下げられ、現在、これを受けた六価クロムの土壌環境基準の見直しについて検討を進めています。1,4-ジオキサンと同様に、2023年度中を目途に、一定の方向性を中央環境審議会等でお示しできるよう、取り組んでまいります。 PFOS等の有機フッ素化合物については、その有害性からこれを懸念する声がある一方で、科学的知見が十分でないことから、国際的にも様々な議論が行われています。環境省では、2021年度から3カ年の計画で、環境研究総合推進費「土壌・水系における有機フッ素化合物類に関する挙動予測手法と効率的除去」(研究代表者:田中周平 京都大学大学院准教授)を進めており、土壌におけるPFOS/PFOAの測定方法の確立に向けて、検討を加速化しています。また、関係自治体や地元住民からはその影響に関する不安や、目標値や基準値の検討等の対策を求める声が上がっています。環境省では、有機フッ素化合物をめぐる国際動向や、こうした国民の声を受けて、2023年早々にも専門家会議を設置し、水環境の目標値等の検討、さらにはPFOS等の総合的な対応の検討を進め、国民の安全・安心のための取組を全力で進めていきます。
この他、土壌中のマイクロプラスチックの挙動等に関する情報収集を継続するとともに、これまで、環境省では必ずしも十分な情報収集等が行えていなかった土壌の多面的な機能に着目し、炭素の貯留能力、栄養塩類の存在状況、健全な水循環の維持に果たす役割等について、基礎情報の収集を進めていく予定です」
※この記事は、業界向け電子専門紙「Geo Value」2023年新年号(2023年1月10日付)で掲載した記事から一部抜粋したものです。
※「Geo Value」は土壌汚染対策法に基づく指定調査機関や技術管理者など土壌汚染調査・対策を行う専門事業者向けの電子専門紙です。
※このインタビューを掲載している「Geo Value」の試読をご希望の方は、ECO SEEDサイト(https://ecoseedplan-japan.themedia.jp/)のお問い合わせフォームをご利用ください。
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