逃げてしまって情けない
こんにちは、
精神科医の諸藤えみりです。
わたしの外来に
40代の女性が訪れました。
(特定されないよう配慮しています。)
職場で新しい仕事を
任されたみたいです。
しかし、
苦手な分野とのこと。
「週末も仕事をしていて
ずっと何かに追われています。
心の休息がありません。
出勤しようとしたら
涙が溢れて止まらなくなったので、
カウンセリングに来ました。」
この方の場合、
感情を我慢して我慢して
ついに溢れてしまいました。
感情は我慢してもなくなりません。
コップに水がたまるように、
いずれ溢れてしまいます。
心がSOSを出している。
このままの働き方を続けたら
破綻してしまうと説明しました。
わたしは言います。
「苦手なことを必死になって
克服しなくてもいいと思うんですよ。
そんな時代じゃないです。
それよりも、
〇〇さんの得意なことを
した方がいい。
苦手なことはほかの人に任せる。
〇〇さんは、
自分でのできる仕事をする。
これでいいと思うんです。」
彼女は納得したものの
「上司から頼まれた仕事なのに、
逃げてしまって自分が情けない。」
と、悲しんでいます。
わたしは続けます。
「責任を持って仕事を遂行する。
素晴らしいことだと思います。
でも、
『上司の期待に応えなければ
わたしに価値はない。』
という考えはないですか?
優先順位を考えましょう。
〇〇さんにはご家族がいる。
優しいご主人と子どもたちがいる。
お家での〇〇さんはどうですか?
笑顔でいますか?」
この質問に、彼女は
「そういえば家で笑ってないです…」
と答えました。
わたしは言います。
「家内安全の言葉がありますよね。
まず自分や家族が大切です。
そのあとに友人や会社での人間関係。
優先順位があります。
今の状況はどうですか?
自分やご家族を
ないがしろにしていませんか?
1番最初に大切にするのは
自分と家族ですよ。」
この言葉に彼女はハッとし、
「このあと職場に電話します。
上司に今の状況を伝えて、
仕事内容が何とかならないか
相談してみます。」
と言ってくれました。
責任感の強い彼女は
愚痴も言わず、
1人でため込んでいたようです。
第三者に話を聞いてもらうだけで
楽になったと涙を流しました。
大事なのは
優先順位を考えること。
自分にとって何が1番大切なのか。
これが分かるだけでも
何をすべきかがクリアになります。
上司の期待に応えることが
人生の目的ではありません。
あなたの
大切にすべき人は誰ですか?