5巻
5巻
B6版 p192
吉家と平良は、伊豆へお泊りデートに。伊豆はかつて平良の実家があった故郷だった。素敵なホテル、美味しいお料理、どれも吉家が経験しないような事ばかり。嬉しい反面、平良との経済的格差や、考え方の違いを強く感じていく吉家。平良はこの旅行を機に、自分の過去も含めて気持ちを伝えるつもりだったが、2人の間に暗雲が立ちこめて…!?
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集英社マーガレットコミックス 2022年7月発売 桃森ミヨシ
5巻の感想
今回はとってもしっとりしたカバーです。着物姿は初ですね。相変わらず表紙には3人がしっかりいますので、平良さんと真霜くんはどちらが当て馬とかはなく、両方をメインとして描かれているという作者の意思表示な気がします。
この5巻はまるまる平良さんときっかのお泊まりデートで、真霜くんは1コマしかでてきません…!(しかも高校時代の回想)でもこれだけページを使ったお泊まりデートの内容はかなりリアルかつ内容が濃く、とくに平良さんの過去が明らかになるという大事な話もあり、読み応えはバッチリでした。
アルカナ・イズという実在するオーベルジュが舞台になっていることもあり、背景やシチュエーションがとってもリアル!そこで平良さんがいかに男として理想的なデートをしてきた人なのかっていうのが垣間見えました。逆にきっかは経済格差に萎縮してしまう。格差カップルのあるあるですね。
ただこれ、年代の差もありますね。平良さんは30台後半、きっかは20代後半。男性がリードしてデート代も負担するのが当たり前世代と、男女平等割り勘当然の世代。もし2人がカップルになるならそこを擦り合わせていく必要があるんだけど、わりときっかが柔軟なので平良さんの気持ちにすぐ寄り添えていたのはよかったな。
そして真霜くんは高校時代に割り勘を断られていて、その時から「きっかとは対等に」の意識が大きかったのかもしれない。家事はもともとしていたにしろ、仕事や生活においても真霜くんはきっかを「庇護する対象」ではなく、仕事人としてちゃんと平等に見てきた気がするのね。それもこれも全部、きっかの言葉が元になっているのだとしたら、なんて一途で健気なんだろう…!と思いました。
しかし5巻のハイライトは平良さんの過去話。かなりダークでしたが、「ああ、だから結婚しなかったんだ。っていうか出来なかったんだ。」と納得できました。ずっと家族への飢えた思いがあって、最後は裏切られている。自分の家族を持つどころではなく結婚もせず、家族に尽くして生きてきた結果がこれなら、まあ病むよね。そしてお姉さんとのビジュアルの差もすごいけど、平良さん自身はそこに何ひとつ見下しや哀れみはないのが印象的。まさに外見はどうでもいい、ってこう言う人をいうのかも。自分があまりにも気にしないからこそ、お姉さんの卑屈さやコンプレックスに気がつけなかったのが大元の原因じゃないかなと思いました。お姉さんの性格は、容姿の格差からくる心の歪みが大きいと思う。外見にも才能にも恵まれてきた弟から搾取することで、姉弟の人生のバランスを取ろうとしていたように思います。でないとここまで酷いことはできない。少しでも自分が自分に満足できていれば、せめて母親似ならここまでの裏切りはしなかったんじゃないかな。
けどお姉さん視点は漫画ではまったく描かれていないので、よけいに平良さんの純粋さとお姉さんの歪みが感じられる描き方になっていてうまいなと思いました。
ただ平良さんがひきこもった理由はまだ明かされていないので、さらに何があるのか、まだ次巻に続く過去編が楽しみです。