【切ない話】「父ちゃん母ちゃんがお金送ってくれた」てっいうのは、嘘だったんだ・・
2016.01.03 01:34
腹が減ったと泣けば
弁当や菓子パンを食わせてくれた。
電気がつかない真っ暗な夜、
ずっと歌を歌って励ましてくれた。
寒くてこごえていれば、
ありったけの毛布や服をかぶせてくれた。
何人もの男が怒号をあげて部屋に入ってきたときは、
押し入れに隠してかばってくれた。
兄ちゃんは俺の神様で、ヒーローだった。
いつだって体を張って俺を守ってくれてた。
だから2人きりでもいつだって安心できた。
だから全然気付かなかった。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
俺に食わすために毎日万引きしてたんだってな。
父ちゃんと母ちゃんが、
お金送ってくれたとか全部うそだったんだな。
2人とも借金でどうしようもなくなったあげく、
俺たちを置き去りにして消えちゃって。
でも借金取りの追跡が怖くて、
「すぐに帰ってくるから、いないことは誰にも言うな」
なんて言い残したもんだから、
兄ちゃん誰にも助けを求められなかったんだってな。
泣きわめく俺を抱えて
どんなに怖かったか不安だったか。
だけど見捨てもせず、
怒りもせず最後まで面倒見てくれたんだな。
結局兄ちゃんが万引きで捕まって、
家に警察が来て、
呼び出された親戚は兄ちゃんを怒ったけど、
たとえほめられた方法じゃなくても、
親との約束を守って俺を守った兄ちゃんは、
かっこよかったって今でも思ってる。
それから1週間くらい後だったかな。
兄ちゃんが父方、
俺が母方の親戚に引き取られた日が、
兄ちゃんを見た最後だった。
今どこにいるんだよ。
元気でやってるのか。
会いたいよ、
会ってありがとうって言いたいよ。
大好きだって言いたいよ。
普通の兄弟みたいに遊んだり喧嘩したりしたいよ。
あのころは大変だったな、
なんてかっこつけて語る兄貴の武勇伝聞いて笑いたいよ。
いつか会えるよな、絶対。