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不思議な夜

2023.04.04 11:52

長い夜はまだまだほんの入り口でした。


どの位時間が経ったのでしょうか。
不意に目が覚めると、突然廊下から大音量で警報が鳴ったのです。


命の危険を感じて 一気に目が覚めました。
慌てて廊下に飛び出すと、同じフロアに泊まっていた仲間たちも
血相を変えて廊下に出てきています。


とにかく一旦ホテルの外に避難しようと
着の身着のまま、取る物もとりあえず私たちはホテルの外に向かいました。


ところが、ホテルはしんとしていて
外に出ているのは私たち一行だけ。他の宿泊客もスタッフも見当たりません。


狐につままれたような気持ちで部屋に戻ると、
再びけたたましく警報が鳴り響きます。


また廊下で顔を合わせた私たちは互いに
「なんだろうね」「不思議だね」と口にはしつつも、


心の中では皆、昼間に体験した不気味なあの事が引っかかっていました。
けれども、その事を口に出してしまうと
気のせいで済まされない 揺るぎない事実になってしまいそうで
誰もそれ以上は言わずに各自部屋へと戻りました。


**********


そんな騒動のせいで私たちはもちろん寝不足、
すっきりしない朝を迎えました。


まずは昨日の警報騒ぎについて
ホテルに確認しようとフロントに向かいました。


ホテルのフロントマンは
まるで昨晩は何もなかったかのように
変わらない笑顔で応対し、


私たちの話を聞いたあとも
その笑顔をキープしたまま

「昨晩は警報なんて鳴ってないよ」
の一点張り。 いくら説明しても変わることはありませんでした。
今思い返しても不思議です。あれは何だったのでしょうか。 


(つづく)