【2023春特集】4:土壌汚染最初に行う地歴調査をプロに聞く~トランスバリュー・リアルエステートサービス㈱安田社長インタビュー
◆◆トランスバリュー・リアルエステートサービス㈱代表取締役・安田晃氏インタビュー◆◆
土壌汚染調査には、資料等から汚染の可能性(おそれ)を判断する地歴調査や実際に土壌試料を採取して分析するサンプリング調査があり、これから土壌汚染調査を行おうと考えている方はまず、地歴調査から行うことになります。この地歴調査の精度によっては汚染の可能性の見落としや逆に過剰な対策にも繋がる可能性があり、地歴調査の質は依頼主にとっても重要なものになります。地歴調査とはどのようなものか、専業で取り組むトランスバリュー・リアルエステートサービス代表取締役の安田晃氏に、地歴調査の概要や重要性などを聞いてみました。(エコビジネスライター・名古屋悟)
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◆地歴調査とは◆
――御社は地歴を専業としていますが、地歴調査とはどのようなものですか?
「地歴調査は、閉鎖登記簿謄本や過去の住宅地図・航空写真等からその土地がどのように使われ、どの場所に、どのような有害物質による土壌汚染の可能性があるのかを示すもので、土壌汚染に関わる調査の一連の流れで最初に行うものになります。
当初は制度的な位置づけのないものでしたが、2010年の土壌汚染対策法改正で3,000㎡以上の土地の形質変更時届出制度が創設された際に、ガイドラインでも法的にも位置付けられ、広く行われるようになってきています。
当社では一般に公表されている地図資料を収集したり、事業者が所有している私的資料や行政への届出資料の確認に加え、関係者へのヒアリングから有害物質の使用履歴や使われていた場所、地下配管の位置等を特定し、汚染リスクのある個所を絞り込み、次に行われるサンプリング(試料採取)調査計画の策定などに役立てていただいています。場合によっては、その土地の昔を知る人物へのヒアリング等も行い、汚染の可能性がある個所を洗い出しています」
◆地歴調査の重要性◆
――地歴調査を行う重要性はどんな点ですか?
「行政側としても、試料採取等調査の計画の妥当性の確認を行う際には、地歴調査の確認が重要です。しっかりした地歴調査を行うことで、サンプリング調査を実施する物質数や地点数を絞り込んで減らすことができますし、場合によっては不要と判断できることもあります。丁寧な地歴調査は土地所有者や有害物質使用事業者にとってメリットとなることが少なくありません。
しかし、地歴調査の質によってはデメリットになることもあります。行政側の試料採取等調査の計画の妥当性の確認に時間がかかったり、資料調査・聴取調査の不足を求められたりすることも実際に生じています。最低限の資料を集めただけで地歴調査報告が行われるケースも見聞きしますが、それでは状況をあいまいにしか把握できず、結果的にサンプリング調査計画を立てる際に調査地点が多くなるなど土地所有者や有害物質使用事業者にとって不利益になる場合もあるようです。
ですので、やはり丁寧な地歴調査が重要なのだと考えています」
◆地歴調査の結果の内容次第でサンプリング調査や浄化対策に影響も◆
――土壌汚染調査というと国の制度に基づく土壌汚染調査技術管理者があり、地歴調査も行っていますが、地歴調査を巡る課題は何か感じていますか?
「地歴調査は土壌汚染調査技術管理者を置く多くの指定調査機関で広く行われていますが、実際に土壌試料を採取して分析するサンプリング調査や浄化など措置の方に重きが置かれ、地歴調査に専門的に携わっている人材はとても少ないのが実情だと感じています。当社では、土壌汚染調査を受注した指定調査機関から地歴調査の依頼を受けることも少なくありません。
先ほども言いましたが、地歴調査は登記簿謄本や航空写真など過去に関する公表資料を集め、土壌汚染の可能性の有無を探るもので、資料を集めるだけなら比較的簡単にできます。
しかし、その資料から何を読み取り、どのように土壌汚染のおそれを区分し、報告書としてまとめていくのは一朝一夕でできるものではありません。資料だけでは汚染の可能性が分からなかったものの、昔の利用状況等を知る企業OBにヒアリングした結果、かつて有害物質を使用した可能性がある場所があることが分かったというケースもあります。
地歴調査は、結果の内容次第で、次のステップとなるサンプリング調査やさらに先の浄化対策等にも大きな影響を残しかねません。
また、地歴調査は資料が多ければそれだけ汚染の有無の判断を的確に行うことができますが、丁寧に資料を読み解くには2、3カ月程度必要になります。
しかし、土壌汚染対策法に基づく手続きにおいて届出(または調査義務発生日)から120日以内に調査を終わらせなければならないことなどから、実際には1~1.5カ月で終わらせなければならないケースが多く、この辺りは苦慮しています。
そのためにも情報を整理するには経験を積み、資料や情報の取捨選択を含めた優先順位をつける能力も問われることになります。そう考えても、地歴調査の人材育成は重要だと考えています」
◆丁寧な地歴調査を行える人材育成が課題◆
――丁寧な地歴調査を行える人材育成が課題とのことですが、今後どのようにして人材育成、人材確保をしていくべきだと考えますか?
「やはり魅力ある職業・職種にしていかなければならないと考えています。行政からは土壌汚染状況調査のために地歴調査が一番重要である、とのコメントをよく聞きますが、現実的にはサンプリング調査を行うために付属的に行われているケースも少なくなく、調査全体において軽く扱われているようにも感じます。
地歴調査は資料を読み解く時間、関係者から話を聞く時間など丁寧にやるとそれなりに時間と手間がかかるものですので、成果のウエートが軽ければ担当する人にとっては面倒な事務作業になってしまいます。これでは地歴調査を丁寧にしっかりやろうという人材を育成することはできないと感じています。
地歴調査は、適切なサンプリング調査・浄化のために重要なステップであり、そのために資料やヒアリングから何を紐解き、設計していくのか…自らが紡いだ成果がその後のシナリオ作りのベースとなるものであり、最終的に依頼主の形質変更工事の実施や工場廃止など依頼主の助けになることは大きなやりがいになります。また、さまざまな業種のビジネスモデルや事業内容について地歴調査を通じて確認できる点も、世の中の数ある職種では少ないと思いますので、その点は魅力だと感じます。
資料を集め、情報を読み解く能力だけでなく、依頼主からの聞き取り等もありますので、コミュニケーション能力も重要になってきますが、この辺りの魅力ももっと発信していかなければならないと思っています」
◆いずれ土地活用や廃業等考えている事業者は事前に地歴調査だけでも実施をおすすめ◆
――土地所有者や有害物質使用事業者は、将来の土地活用等を踏まえ、どのように臨めば良いと思いますか?
「3000㎡以上の土地の形質変更を行わないことから現状では土壌汚染対策法の届出対象になっていない土地を所有する企業も少なくないと思います。また、資金的に調査を先送りにしている企業も少なくないのではないでしょうか。
土壌汚染対策法に基づく調査の実施だけでなく近年では、土地取引でも土壌汚染調査が求められ、基準値を超える有害物質が見つかった場合、対策が求められるケースが少なくありません。
いざ土地活用しようとしてから対応を始めると、時間的な面などからいろいろな制約等も発生し、思うように進められないこともあります。
あらかじめリスクを把握し、将来的な土壌汚染対策を計画しておけば、実際に土地活用等を行うとき時、時間的余裕をもって土壌汚染対策を行うことが可能になります。ですので、いずれ土地の活用や売却、廃業等を行う可能性があるのでしたら、事前に地歴調査だけでも実施しておくことをおすすめします。
地歴調査を専業とする当社では業務に精通したスタッフが依頼のあった土地の土壌汚染リスクを丁寧に精査しています。
これまでに全国5,000件以上の実績があり、数多くの指定調査機関からのアウトソーシングも受けております。
将来に向け、地歴だけでも確認しておきたいという方は、お気軽にご相談ください」
(インタビュー終わり)
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