VS.(2人台本)
『VS.』(ブイエス)
【ジャンル:バトル/煽り合い】
【所要時間:20分程度】
●こちらの台本は、「叫びアリ」バージョンと「叫びナシ」バージョンがあります。
環境的に叫べないけど、バトル風味を味わってみたい方は、「叫ばない」バージョンをお使いください。台本は、後半の方にあります。
●台本をご使用の際は、利用規約をご一読下さい。
●ページトップの画像は、ツイキャスで生声劇する際のキャス画にお使い頂いても構いません。(配役等の文字入れ可)
【人物紹介】
・ギル(不問)
稀代の殺人鬼。基本的にはローテンション。
ある目的のために「博士」を探している。
・ヴィニー(不問)
「ヒーロー狩り」の異名を持つヴィラン。
無邪気。戦闘を楽しむタイプ。
※発音は「ビニー」です。
【演じる際の注意点】
どちらも不問キャラなので、一人称の変更は可です。
デフォルトではどちらも男性っぽいので、女性が演じる場合は語尾の変更も可です。
↓生声劇等でご使用の際の張り付け用
――――――――
「VS.」
作:レイフロ
ギル:
ヴィニー:
https://reifuro12daihon.amebaownd.com/posts/42231394
――――――――
※叫びアリかナシか、演者様間で話し合い、必ずどちらかに合わせてください。
片方だけ「叫びアリ」等はNGです。
以下は、『 叫びアリ 』バージョンの台本です。
ヴィニー:
うーん…コイツ、なんて名前のヒーローだっけなぁ?
最近ニュースで話題になってたから顔は覚えてたんだけどぉ…
ギル:
…手に持ってんのは誰の首だ?
ヴィニー:
だからそれを今思い出そうと…
って、嘘、待って、その殺気、まさか…
まさかまさかまさかまさかまさか!!
ギル:
うるせぇ野郎だ。
ヴィニー:
深くフードを被ってたって僕にはわかるよ!
わぁ、ほんとに本物?!わぁ!わぁあ!
ギル:
首を振り回すな。汚ぇ液が飛び散る。
ヴィニー:
あぁごめん!
こんな名前も思い出せないクソみたいなヒーローなんてポイだよ!ポイっ!
ギル:
いいのか?戦利品なんじゃねぇのかよ?
ヴィニー:
そうだったけど、アンタを前にしたらそんなことどうでもよくなった。
まさかこんなところで伝説の人物に逢えるなんて…!
「稀代(きだい)の殺人鬼」…ギル・カーター!!
ギル:
謙遜すんなよ、今世間を騒がせてんのはお前の方だろ?
「ヒーロー狩りのヴィニー」。
お前に聞きたいことがある。
ヴィニー:
んはーっ!僕の名前を知ってくれてるなんて光栄すぎて血が沸騰しそう!
ヒーロー殺し回っててよかったー!
ギル:
さっきの生首でもなけりゃあ、お前みたいな奴が本当にヒーローどもを
殺して回ってるなんて信じらんねぇとこだぜ。
ヴィニー:
んふふ、よく言われるぅ。
でも見た目で油断するなんてそれこそ弱い奴がやることじゃない?
現にアンタからは、すごい殺気を感じる。
ギル:
俺はこれがフラットだ。
ヴィニー:
かーっ!痺れるーっ!
さすがは生ける伝説!
ねぇお願いっ、そのフードを取って顔を見せてよ!
ギル:
俺の顔が見たきゃお前が力づくでフードを剥がすしかねぇな?
ヴィニー:
…言ったね?
ハアッッ!!!
(SE:剣劇の音)
ギル:
お…?速いじゃねぇか。普通のヤツならこの一撃だけで首が飛ぶな。
ヴィニー:
さっすがぁ!
僕の初速を見切れるかどうかで上級かどうかが分かるってもんだよ。
ギル:
ガキは少し褒めただけですぐに図に乗りやがる。
ヴィニー:
はぁ??ガキぃ??
ギル:
「ヒーロー狩り」なんて大層な二つ名、
まだお前には早いんじゃねぇか?
ヴィニー:
何言って…
って、あれ?僕の特殊合金の刃が、欠けてる…?
ギル:
相手の懐に潜り込むことに注力しすぎて、角度が甘ぇからそうなる。
ヴィニー:
ふ、はははっ!
博士、聴こえるぅ?!
すごいよ、これが本物の生ける伝説!ギル・カーターだ!!
ギル:
フン、「博士」か。
やはり裏に誰か居やがるな?
ヴィニー:
博士の計算は甘いってさぁ!
初手こそ最も大事だって、完璧に計算した攻撃だったのに
刃が欠けちゃうなんて凄すぎー!
ギル:
博士とは誰のことだ。そいつは、お前の何だ?
噂が本当であれば、お前の強さは「造られたもの」なんじゃないのか?
知っていることを全て言え。
ヴィニー:
急に饒舌になったねー?
寂しいなぁ、僕より博士のことが気になるなんてさぁ?
ギル:
当然だ。強さってのは積み重ねだ。
漫画のように、ある日突然覚醒したりしねぇ。
なのにお前は、文字通り「ある日突然」ヒーローどもを殺し回った。
そんな強さを持つ者が今まで隠れてたなんてありえねぇ。
ヴィニー:
あ~。ヒーローは強さを測るメーターみたいな機械持ってるもんねー。
強いヤツがいれば必ずそれに引っかかるって言いたいんだ?
ギル:
そうだ。政府はそれを参考にヒーローの素質を持つ者、
もしくはヴィランになる可能性がある者をリストアップしてる。
お前はそれにも引っかからず…
ヴィニー:(さえぎるように)
夢がないなぁ、本物のヒーローは流星の如く現れる!
って方がかっこいいじゃん!
ギル:
どうあってもはぐらかす気か。
ヴィニー:
違うよ?
聞きたいことがあるなら力づくで聞いてみろってこと。
おらああっ!
(SE:剣撃の音)
ギル:
ぐっ!!
さっきのは小手調べってか?重みが全く違う…っ
ヴィニー:
あっは!フードが取れちゃったよギルぅ?
めちゃめちゃいい目してる…本物の闇だ…ッ!
ギル:
がっ…!体格に全くそぐわないそのパワー。
ますます怪しいぜ。博士にどんなイタズラされてやが、るッ!!
(SE:剣撃の音)
ヴィニー:
また弾き返されちゃった…やっぱりすごい…!
ねぇギル!僕たちの仲間になりなよ!
一緒にヒーロー狩りに行ってさ、任務以外はずっと僕と殺し合うっていうのはどぉ?
めちゃくちゃ楽しい毎日になるよ!
ギル:
まるでガキだな。お気に入りのオモチャを見つけたって顔だ。
…お断りだね。
ヴィニー:
えぇーなんでー!
ギル:
「ヒーロー狩り」と呼ばれてはいるが、
お前は別にヒーローにこだわってるわけじゃない。
強けりゃ誰でもいいんだろ?
ヴィニー:
そうなんだよ!
言わなくても僕の本意をすぐ理解してくれるなんて、
さすがは稀代(きだい)の殺人鬼っ!
ギル:
「ヒーロー」という称号は、一定数のヴィランを討伐しなければ名乗れない。
つまり、「ヒーロー」というだけで最低限の強さは保障された人間だということ。
ヴィニー:
そそ!強いヤツを探すのってそれだけで大変だから
僕にとってはありがたい称号なんだよねぇ。
ギル:
ヴィランだと、そういった基準がないから
下手すりゃチンピラレベルの奴も多いしな。
強い相手を探すにはヒーローをターゲットにする方が早い、
ってのは必然か。
ヴィニー:(斬りかかりながら)
そういうことだよッ!
僕をドウニカ出来たら!博士に、会えるんじゃないッ?!
だから本気出してよッ!
ギル:(攻撃を受けながら)
その様子だと通信は博士と常時繋がってるようだなぁ!
それでも無言ってことは、俺とは話す気がないってことか…?
チッ、不遜(ふそん)な奴だッ!
ヴィニー:
そうだなぁ。もし僕が博士の元に帰れない程のダメージを負えば、
或いは回収しに来てくれるかもね…?
ギル:
なら話は早ぇな。
お前を今から半殺しにしてやる。
ヴィニー:
そうこなくっちゃあ!
ギル:
ここで帰ると言ったところで、元よりお前は逃がす気なんかねぇようだしなァ!
ヴィニー:
これ以上ない獲物を目の前にして黙って行かせるようなバカじゃあない。
ギル:
獲物がどっちか把握してない時点で十分馬鹿だけどな。
ヴィニー:
アンタを殺せば、僕は伝説になれるッ!
だあああっ!!
ギル:
くだらねぇ。どう呼ばれるかなんて、俺にはクソほど興味がねぇんだよッ!!
ヴィニー:
すっごい!僕があのギルの剣を受けてる!斬り合ってるっ!
ギル:
(手数(てかず)も多いが、どれも的確に急所を狙ってきやがる…)
ヴィニー:
ねぇ、どうしてアンタは人を殺すのぉ?!
相手が誰だろうが関係なく殺すっていうから
もっとトチ狂った奴を想像してたのにぃ!
ギル:
別に理由なんざねぇさ。
俺は誰でも殺す。
俺の前に立ちはだかる者は全員。平等にだ。
ヴィニー:
平等ぉ?
あっははは!ヒーローもよく言ってるよねぇ、
「平等な世界を築くために」、とかなんとか…
ギル:
あぁ。だから俺もそれに倣(なら)ってやろうと思ってな。
パンピーだろうが女だろうが子供だろうが関係ねぇ。
全員、平等に、死ねばいいッ!!
(SE:剣劇の音)
ヴィニー:
ッうそぉ!!剣が折れ…っ、
ギル:
遊びは終わりだ。クソガキ。
(SE:斬られる音)
ヴィニー:
あああ゛っあっぶなぁぁぁ!!
ギル:
(咄嗟に反転して深手を避けたか。なんて瞬発力…。
常人の動きとは思えねぇ…)
ヴィニー:
危なく胴体真っ二つになるとこだったー!
でも痛ったぁ!お腹切れちゃってるぅ!
ギル:
(コイツの身体能力を「博士」とやらが改造してんだとしたら…)
ヴィニー:(囁くように)
…ねぇ、考え事ぉ?
ギル:
(…ッ!!コイツ、いつの間に懐に…っ!)
ヴィニー:
これはお返しね?
(SE:刺さる音)
ギル:
ぐ、ぎ…っ!!
ヴィニー:
さすが腹筋固いねー?小型のアーミーナイフとは言え、
全然深く刺さらな…
ギル:
ど、けッ!!(蹴る)
ヴィニー:
ぐふぁっ!!
ギル:
(なんだ…?ナイフを扱う手が見えなかったかと思えば、
蹴りは簡単に受ける…。
コイツ、攻撃に特化しすぎて防御に弱いのか…?)
ヴィニー:
いってぇ!斬ったところ蹴るとかドSなんですけどぉ!
でも、僕とここまでやり合える相手なんて初めてだ!
博士、今日は沢山データが取れるから期待しててよねぇ??
ギル:
チッ、めんどくせぇヤローだ…。
ヴィニー:
ねぇ教えてよ!なんでアンタはそんなにヒーローを憎んでるのさッ!
ギル:
ぐっ!…さぁな。
ただ、ヒーローたちが宣(のたま)う綺麗事にうんざりしてるだけだッ!
ヴィニー:
わかるなぁ。
「みんなが幸せに」?「世界平和」?
そんなの人間には無理に決まってるじゃんね!
ギル:
まさかお前と同意見とは、今すぐ死にたくなってきた、ぜッ!
(SE:剣撃の音)
ヴィニー:
わぁっ!そんなこと言いながら僕の首を狙ったその太刀筋!
恐すぎるから!ギルってメンヘラちゃんなの?!
ギル:
生首振り回してたお前にだけは言われたくねぇよッ!
ヴィニー:
あれは博士へのお土産だよ!僕の趣味じゃなァい!
ギル:
フッ、そうかよ。死ね。
ヴィニー:
がはっ!!
ギル:(ぼやく)
「ヒーローがヴィランを殺すのは正義」って概念がなくならない限り、
この世に平和は一生来ねぇ…。
ヴィニー:
……ふーん、そういうことか。
ふふふふふ!(笑う)
ギル:
何が可笑しい。
ヴィニー:
今博士が教えてくれたんだぁ、ギルの過去のこと。
小さい時に、孤児院から弟と逃げたんだってぇ?
ギル:
おいやめろ…
ヴィニー:
まだ少年だったギルと、もっと小さな弟と。
二人で手を取り合って必死に逃げていた…
ギル:
それ以上言うな…
ヴィニー:
その道中で、ヒーローとヴィランの戦いに巻き込まれて
ギルの弟は…
ギル:
黙れええええ!!!!
(SE:斬る音)
ヴィニー:
速…、ぁ゛…(倒れる)
ギル:
はぁ、はぁ…くそ、殺っちまった…
半殺しに留めたかったってのによぉ…。
まぁでも通信は生きてるか…?
おい、聞こえるか、「博士」とやら。
お前のオモチャは死んで…
ヴィニー:
死んでないよぉ?
ギル:
何っ?!?
ヴィニー:
わぁすごーい、右肩から入って右腕まで全部飛んでっちゃったー。
博士ぇ、ラボにスペアあったっけー?
ギル:
お前…っ
ヴィニー:
博士に何を聞きたいか当てようか?
死んじゃった弟さんのことでしょお?
ギル:
お前は…、人間じゃないのか?
ヴィニー:
「人間」の定義って何?
息して心臓動いてるのが「人間」っていうなら、僕は「人間」だよ?
ギル:
さっき斬った切り口が…いや、その中身が…
腐ってるじゃねぇか…
ヴィニー:
何回も死んでるからねぇ。
でも今だって息して心臓も動いてるよ?「人間」じゃん?
ギル:
ふ…、ふふ…あははは!
噂はホンモンだったってことか!
死体を生き返らせることが出来る「博士」…!
「ヒーロー狩りのヴィニー」はその「博士」の作品ってか!
ヴィニー:
ギルは、弟さんを生き返らせたいんだね…?
ギル:
あぁそうだ…。
弟は死ぬはずじゃなかった…!
弟はアイツらが戦ってる間に崩れてきた瓦礫に挟まれてたんだ…。
すぐにヒーローが助けてくれさえすれば、弟は死なずにすんだ…!!
ヴィニー:
ヴィランと戦うことに必死で気が付かなかったんじゃない?
ギル:
ふ…そうだったなら諦めも付いたさ…。
まだ力もなかった俺は、ヒーローに「助けてくれ」と叫んだ。
「たった一人の家族を、弟を助けてくれ」と…
あの時確かに、ヒーローと目が合った…
目が合ったんだッッ!!!
その上で、無視しやがったッッ!!!
ヴィニー:
ヴィランにトドメを刺す絶好のチャンスだったから?
ギル:
その通りだ。
ヒーローはそのままトドメの一撃を放って、その余波で瓦礫は崩れた。
俺の目の前で、弟は泣き叫びながら無残に潰れたよ。
骨が砕け、肉が潰れて、目玉がおもちゃみてぇに飛び出した。
まだ小さかった弟の体から出たとは思えない量の血が、俺にかかった…。
ヴィニー:
周りの人たちもヒーローに夢中で助けてはくれなかった?
ギル:
間近で放たれる必殺技の迫力と、倒される悪。
大歓声と歓喜に包まれてたさ。
誰も俺たち兄弟を気に留める奴なんていなかった。
ヴィニー:
さっき殺ったヒーローもさ、
「争いからは何も生まれない!」とか言って、
僕が攻撃するより先に必殺技撃ってきたんだよ?
この世界は矛盾してるよね?破綻してるよね?不公平だよね?
ギル:
…ヒーローなんて、まやかしだ。
ヴィニー:
ねぇギル!僕と一緒にヒーローを片っ端からやっつけに行こうよ!
ギル:
無理だね。俺は誰も信じない。
ヴィニー:
…自分自身さえも?
弟さんを助けられなかったのは、アンタのせいじゃないよ。
ギル:
……グチャグチャうるせぇな。
「博士」が存在すると分かった以上、お前ももう用済みだ。
今すぐブチ死ね。
ヴィニー:
フフフ、やっぱり気が合うなぁ!
僕もアンタをぶっ殺したいよ!
二人で笑う:
あはははははッ!!
(一拍、間をあける)
ギル:
それじゃそろそろ始めるか…
ヴィニー:
だね。アンタが勝ったら、博士も弟さんを「造って」くれるかもしれないよ?
ギル:
お前が再起不能になった後のことなんざ、お前にはどうでもいい事だ。
ヴィニー:
どうでも良くはないよぅ。
アンタが弟さんを生き返らせて、この世界をどうしたいのか興味がある!
ギル:
やることなんて一つだ。
ヒーローが言うように誰もが平等な命なんだとしたら、
悪もヒーローも男も女も老人も子供も、
全員。
平等に。
惨めに泣き叫んで、助けを乞いながら。
弟と同じように、死ねばいい――――。
ヴィニー:
あはは!弟さんが生き返ろうが何だろうが結局アンタは全員殺すんだ!?
狂ってる、狂ってるよ!
ギル:
お遊びは終わりだ。来い。
ヴィニー:
稀代の殺人鬼は一体どんな断末魔を聞かせてくれるのかなぁ?
ギル:
内臓をえぐり出されてもそんな口がきけるといいけどな。
ヴィニー:
さぁ!!
ギル:
死力を尽して!!
二人で:
殺し合おう!!
叫ぶバージョン end.
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
以下は、『 叫びナシ 』バージョンの台本です。
ヴィニー:
うーん…コイツ、なんて名前のヒーローだっけなぁ?
最近ニュースで話題になってたから顔は覚えてたんだけどぉ…
ギル:
…手に持ってんのは誰の首だ?
ヴィニー:
だからそれを今思い出そうと…
って、嘘、待って、その殺気、まさか…
まさかまさかまさかまさか…
ギル:
うっとうしい野郎だ。
ヴィニー:
深くフードを被ってたって僕にはわかるよ。
ほんとに本物?!
ギル:
首を振り回すな。汚ぇ液が飛び散る。
ヴィニー:
あぁごめん。
こんな名前も思い出せないクソみたいなヒーローなんてポイだよ、ポイ。
ギル:
いいのか?戦利品なんじゃねぇのかよ?
ヴィニー:
そうだったけど、アンタを前にしたらそんなことどうでもよくなった。
まさかこんなところで伝説の人物に逢えるなんて…。
「稀代(きだい)の殺人鬼」…ギル・カーター。
ギル:
謙遜すんなよ、今世間を騒がせてんのはお前の方だろ?
「ヒーロー狩りのヴィニー」。
お前に聞きたいことがある。
ヴィニー:
ふふ、僕の名前を知ってくれてるなんて光栄すぎて血が沸騰しそうだ。
ヒーロー殺し回っててよかった。
ギル:
さっきの生首でもなけりゃあ、お前みたいな奴が本当にヒーローどもを
殺して回ってるなんて信じらんねぇとこだぜ。
ヴィニー:
んふふ、よく言われるぅ。
でも見た目で油断するなんてそれこそ弱い奴がやることじゃない?
現にアンタからは、すごい殺気を感じる。
ギル:
俺はこれがフラットだ。
ヴィニー:
痺れるね。さすがは生ける伝説…。
ねぇお願い、そのフードを取って顔を見せてよ?
ギル:
俺の顔が見たきゃお前が力づくでフードを剥がすしかねぇな?
ヴィニー:
…言ったね?フッ!(斬りかかる)
ギル:
お…?速いじゃねぇか。普通のヤツならこの一撃だけで首が飛ぶな。
ヴィニー:
さすが。
僕の初速を見切れるかどうかで上級かどうかが分かるってもんだよ。
ギル:
ガキは少し褒めただけですぐに図に乗りやがる。
ヴィニー:
はぁ??ガキぃ??
ギル:
「ヒーロー狩り」なんて大層な二つ名、
まだお前には早いんじゃねぇか?
ヴィニー:
何言って…
って、あれ?僕の特殊合金の刃が、欠けてる…?
ギル:
相手の懐に潜り込むことに注力しすぎて、角度が甘ぇからそうなる。
ヴィニー:
ふふふ…
博士、聴こえるぅ?
すごいよ、これが本物の生ける伝説、ギル・カーターだ。
ギル:
フン、「博士」か。
やはり裏に誰か居やがるな?
ヴィニー:
博士の計算は甘いってさぁ?
初手こそ最も大事だって、完璧に計算した攻撃だったのに
刃が欠けちゃうなんて凄すぎる。
ギル:
博士とは誰のことだ。そいつは、お前の何だ?
噂が本当であれば、お前の強さは「造られたもの」なんじゃないのか?
知っていることを全て言え。
ヴィニー:
急に饒舌になったねー?
寂しいなぁ、僕より博士のことが気になるなんてさぁ?
ギル:
当然だ。強さってのは積み重ねだ。
漫画のように、ある日突然覚醒したりしねぇ。
なのにお前は、文字通り「ある日突然」ヒーローどもを殺し回った。
そんな強さを持つ者が今まで隠れてたなんてありえねぇ。
ヴィニー:
あ~。ヒーローは強さを測るメーターみたいな機械持ってるもんねー。
強いヤツがいれば必ずそれに引っかかるって言いたいんだ?
ギル:
そうだ。政府はそれを参考にヒーローの素質を持つ者、
もしくはヴィランになる可能性がある者をリストアップしてる。
お前はそれにも引っかからず…
ヴィニー:(さえぎるように)
夢がないなぁ、本物のヒーローは流星の如く現れる、
って方がかっこいいじゃん?
ギル:
どうあってもはぐらかす気か。
ヴィニー:
違うよ?
聞きたいことがあるなら力づくで聞いてみろってこと。
行くよ…!
ギル:
ぐっ…
さっきのは小手調べってか?重みが全く違う…っ
ヴィニー:
はは、フードが取れちゃったよギルぅ?
めちゃめちゃいい目してる…本物の闇だ…
ギル:
がっ…!体格に全くそぐわないそのパワー。
ますます怪しいぜ。博士にどんなイタズラされてやがる?
ヴィニー:
また弾き返されちゃった…やっぱりすごい…。
ねぇギル、僕たちの仲間になりなよ?
一緒にヒーロー狩りに行ってさ、任務以外はずっと僕と殺し合うっていうのはどぉ?
めちゃくちゃ楽しい毎日になるよ。
ギル:
まるでガキだな。お気に入りのオモチャを見つけたって顔だ。
…お断りだね。
ヴィニー:
えぇーなんで?
ギル:
「ヒーロー狩り」と呼ばれてはいるが、
お前は別にヒーローにこだわってるわけじゃない。
強けりゃ誰でもいいんだろ?
ヴィニー:
そうなんだよ。
言わなくても僕の本意をすぐ理解してくれるなんて、
さすがは稀代(きだい)の殺人鬼。
ギル:
「ヒーロー」という称号は、一定数のヴィランを討伐しなければ名乗れない。
つまり、「ヒーロー」というだけで最低限の強さは保障された人間だということ。
ヴィニー:
そ。強いヤツを探すのってそれだけで大変だから
僕にとってはありがたい称号なんだよねぇ。
ギル:
ヴィランだと、そういった基準がないから
下手すりゃチンピラレベルの奴も多いしな。
強い相手を探すにはヒーローをターゲットにする方が早い、
ってのは必然か。
ヴィニー:
そういうことだよ。
僕をドウニカ出来たら博士に会えるんじゃない?
だから本気出してよ?
ギル:
その様子だと通信は博士と常時繋がってるようだなぁ。
それでも無言ってことは、俺とは話す気がないってことか…?
チッ、不遜(ふそん)な奴だ。
ヴィニー:
そうだなぁ。もし僕が博士の元に帰れない程のダメージを負えば、
或いは回収しに来てくれるかもね…?
ギル:
なら話は早ぇな。
お前を今から半殺しにしてやる。
ヴィニー:
そうこなくっちゃ。
ギル:
ここで帰ると言ったところで、元よりお前は逃がす気なんかねぇようだしなぁ。
ヴィニー:
これ以上ない獲物を目の前にして黙って行かせるようなバカじゃあない。
ギル:
獲物がどっちか把握してない時点で十分馬鹿だけどな。
ヴィニー:
アンタを殺せば、僕は伝説になれる…
フッ!(斬りかかる)
ギル:
くだらねぇ。どう呼ばれるかなんて、俺にはクソほど興味がねぇんだよ。
ヴィニー:
すごい…僕があのギルの剣を受けて、斬り合ってるなんて…!
ギル:
(手数(てかず)も多いが、どれも的確に急所を狙ってきやがる…)
ヴィニー:
ねぇ、どうしてアンタは人を殺すのぉ?
相手が誰だろうが関係なく殺すっていうから
もっとトチ狂った奴を想像してたのにぃ。
ギル:
別に理由なんざねぇさ。
俺は誰でも殺す。
俺の前に立ちはだかる者は全員。平等にだ。
ヴィニー:
平等ぉ?
はは、ヒーローもよく言ってるよねぇ、
「平等な世界を築くために」、とかなんとか…
ギル:
あぁ。だから俺もそれに倣(なら)ってやろうと思ってな。
パンピーだろうが女だろうが子供だろうが関係ねぇ。
全員、平等に、死ねばいい。
(SE:剣劇の音)
ヴィニー:
うそっ…剣が折れ…っ、
ギル:
遊びは終わりだ。クソガキ。
ヴィニー:
アっ…ぐぅ…(斬られる)
ギル:
(咄嗟に反転して深手を避けたか。なんて瞬発力…。
常人の動きとは思えねぇ…)
ヴィニー:
危なく胴体真っ二つになるとこだった…
でも痛ぁ…お腹切れちゃってる…
ギル:
(コイツの身体能力を「博士」とやらが改造してんだとしたら…)
ヴィニー:(囁くように)
…ねぇ、考え事ぉ?
ギル:
(…ッ!!コイツ、いつの間に懐に…っ)
ヴィニー:
これはお返しね?
ギル:
ぐ、ぎ…っ!(刺される)
ヴィニー:
さすが腹筋固いねー?小型のアーミーナイフとは言え、
全然深く刺さらな…
ギル:
ど、けッ(蹴る)
ヴィニー:
ぐふっ
ギル:
(なんだ…?ナイフを扱う手が見えなかったかと思えば、
蹴りは簡単に受ける…。
コイツ、攻撃に特化しすぎて防御に弱いのか…?)
ヴィニー:
いってぇ…斬ったところ蹴るとかドSなんですけど。
でも、僕とここまでやり合える相手なんて初めてだ。
博士、今日は沢山データが取れるから期待しててよねぇ?
ギル:
チッ、めんどくせぇヤローだ…。
ヴィニー:
ねぇ教えてよ、なんでアンタはそんなにヒーローを憎んでるのさ。
ギル:
…さぁな。
ただ、ヒーローたちが宣(のたま)う綺麗事にうんざりしてるだけだ。
ヴィニー:
わかるなぁ。
「みんなが幸せに」?「世界平和」?
そんなの人間には無理に決まってるじゃんね?
ギル:
まさかお前と同意見とは、今すぐ死にたくなってきた、ぜっ(斬りかかる)
ヴィニー:
わっ…そんなこと言いながら僕の首を狙ったその太刀筋、恐すぎる…
ギルってメンヘラちゃんなの?
ギル:
生首振り回してたお前にだけは言われたくねぇよ。
ヴィニー:
あれは博士へのお土産だよ?僕の趣味じゃない。
ギル:
フッ、そうかよ。死ね。
ヴィニー:
がはっ…
ギル:(ぼやく)
「ヒーローがヴィランを殺すのは正義」って概念がなくならない限り、
この世に平和は一生来ねぇ…。
ヴィニー:
……ふーん、そういうことか。
ふふふふふ(笑う)
ギル:
何が可笑しい。
ヴィニー:
今博士が教えてくれたんだぁ、ギルの過去のこと。
小さい時に、孤児院から弟と逃げたんだってぇ?
ギル:
おいやめろ…
ヴィニー:
まだ少年だったギルと、もっと小さな弟と。
二人で手を取り合って必死に逃げていた…
ギル:
それ以上言うな…
ヴィニー:
その道中で、ヒーローとヴィランの戦いに巻き込まれて
ギルの弟は…
ギル:
黙れ。
ヴィニー:
速…、ぁ゛…(斬られて倒れる)
ギル:
はぁ、はぁ…くそ、殺っちまった…
半殺しに留めたかったってのによぉ…。
まぁでも通信は生きてるか…?
おい、聞こえるか、「博士」とやら。
お前のオモチャは死んで…
ヴィニー:
死んでないよぉ?
ギル:
何っ…?
ヴィニー:
わぁすごーい、右肩から入って右腕まで全部飛んでっちゃったー。
博士ぇ、ラボにスペアあったっけー?
ギル:
お前…っ
ヴィニー:
博士に何を聞きたいか当てようか?
死んじゃった弟さんのことでしょお?
ギル:
お前は…、人間じゃないのか?
ヴィニー:
「人間」の定義って何?
息して心臓動いてるのが「人間」っていうなら、僕は「人間」だよ?
ギル:
さっき斬った切り口が…いや、その中身が…
腐ってるじゃねぇか…
ヴィニー:
何回も死んでるからねぇ。
でも今だって息して心臓も動いてるよ?「人間」じゃん?
ギル:
ふ…、ふふ…はは、
噂はホンモンだったってことか。
死体を生き返らせることが出来る「博士」は実在する…。
「ヒーロー狩りのヴィニー」はその「博士」の作品か。
ヴィニー:
ギルは、弟さんを生き返らせたいんだね…?
ギル:
あぁそうだ…。
弟は死ぬはずじゃなかった…。
弟はアイツらが戦ってる間に崩れてきた瓦礫に挟まれて…。
すぐにヒーローが助けてくれれば弟は死なずにすんだ…
ヴィニー:
ヴィランと戦うことに必死で気が付かなかったんじゃない?
ギル:
ふ…そうだったなら諦めも付いたさ…。
俺は叫んだ、ヒーローに、助けてくれって…
たった一人の家族を、弟を助けてくれ、と…
あの時確かにヒーローと目が合った…
目が合ったんだ。
その上で、無視しやがった…。
ヴィニー:
ヴィランにトドメを刺す絶好のチャンスだったから?
ギル:
その通りだ…
ヒーローはトドメの一撃を放って、その余波で瓦礫は崩れた…。
俺の目の前で、弟は泣き叫びながら無残に潰れたよ。
骨が砕け、肉が潰れて、目玉がおもちゃみてぇに飛び出した。
まだ小さかった弟の体から出たとは思えない量の血が、俺にかかった…。
ヴィニー:
周りの人たちもヒーローに夢中で助けてはくれなかった?
ギル:
間近で放たれる必殺技の迫力と、倒される悪…。
大歓声と歓喜に包まれてたさ。
誰も俺たち兄弟を気に留める奴なんていなかった。
ヴィニー:
さっき殺ったヒーローもさ、
「争いからは何も生まれない」とか言って、
僕が攻撃するより先に必殺技撃ってきたんだよ?
この世界は矛盾してるよね?破綻してるよね?不公平だよね?
ギル:
…ヒーローなんて、まやかしだ。
ヴィニー:
ねぇギル、僕と一緒にヒーローを片っ端からやっつけに行こうよ?
ギル:
無理だね。俺は誰も信じない。
ヴィニー:
…自分自身さえも?
弟さんを助けられなかったのは、アンタのせいじゃないよ。
ギル:
……グチャグチャうるせぇな。
「博士」が存在すると分かった以上、お前ももう用済みだ。
今すぐブチ死ね。
ヴィニー:
フフフ、やっぱり気が合うなぁ。
僕もアンタをぶっ殺したいよ。
(一拍、間をあけて)
ギル:
それじゃそろそろ始めるか…
ヴィニー:
だね。アンタが勝ったら、博士も弟さんを「造って」くれるかもしれないよ?
ギル:
お前が再起不能になった後のことなんざ、お前にはどうでもいい事だ。
ヴィニー:
どうでも良くはないよぅ。
アンタが弟さんを生き返らせて、この世界をどうしたいのか興味がある。
ギル:
やることなんて一つだ。
ヒーローが言うように誰もが平等な命なんだとしたら、
悪もヒーローも男も女も老人も子供も、
全員。平等に。惨めに泣き叫んで、助けを乞いながら。
弟と同じように、死ねばいい――――。
ヴィニー:
はは、弟さんが生き返ろうが何だろうが結局アンタは全員殺すんだ?
狂ってる、狂ってるよ。
ギル:
お遊びは終わりだ。来い。
ヴィニー:
稀代の殺人鬼は一体どんな断末魔を聞かせてくれるのかなぁ?
ギル:
内臓をえぐり出されてもそんな口がきけるといいけどな。
ヴィニー:
さぁ、死力を尽して。
ギル:
殺し合おう。
『叫びナシ』バージョン end.
※こちらの台本は、nanaというアプリで、僕が短い声劇台本を書いてた時に投稿した『kill each other』という台本が原作です。
今でも検索したら出てきますので、nanaを入れている方で興味のある方はぜひ見てみてください。
投稿したの2018年とかだった…懐かしいw