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9-GATE Motor cycle maintenance/modefy

今さら聞けないエンジンオイルの話

2023.04.30 00:35

ここ2回、ピストンのお話を書きました。

出来ればピストンの話を完結して次の話題をと思ったのですが、

書いてるコチラの都合や事情もあり(笑)

今回はエンジンオイルの話を書きたいと思います。

と言うのも、どうもオイルと言うものに対してご認識(私も含めて)があるなぁと感じたからです。

と言うわけで、自分も含めて備忘録的な感じでエンジンオイルの事を書きたいと思います。


まず、エンジンオイルですが、その役割は多岐にわたります。

1:潤滑作用

当たり前の作用です。これがないと始まらない。

部品間の金属接触を防ぎ、摩擦を減らす。

2:密封作用

シリンダーとピストンリングの間などからの吹き抜けを予防する作用。

燃焼作用でピストンを押し下げるときの力が逃げないようにする。

3:洗浄作用

エンジン内部で発生した汚れをオイル内に取り込んで、エンジン内部をキレイに保つ。

また、エンジン内部で発生する水分なども取り込む。

4:防錆作用

エンジン内部の金属部品を錆びさせないようにする作用

5:冷却作用

エンジン内部で発生する熱を吸収して冷却する作用


これらの仕事を担っているエンジンオイル。種類は各メーカーから様々なものが販売されていて、そのどれもがグレードや品質に応じて価格も様々。

結論を書いてしまえば、オイルはそのユーザーの使い方に応じた適切なものを使えばよいと言う答えになりますが

これが単純なようで実は非常に難しかったりもします。

良いオイルを使えばよいかと言われれば、半分正解で半分間違いでもあります。

もうちょっと掘り下げてみます。

オイルにはグループと言うものが存在しています。


グループ1:鉱物油 原油から不純物をある程度取り除いた物。安価。

不純物が多く(リンや硫黄など)劣化しやすい。


グループ2:グループ1のベースオイルを精製したもの。不純物はグループ1に比べて少ない。部分剛性油や半合成油などともいわれる


グループ3:科学合成油 ベースオイルは鉱物油だが、水素化仕上げと言う工程を経てほとんどの不純物を取り除いた物。粘度指数は120以上と高性能。

3+や3++などさらに種類がある。


グループ4:100%化学合成油

mPAOと呼ばれる最新のベースオイルだと粘度指数は200以上。

熱に対して強く、蒸発しにくいことからトラブルを回避しやすい。

低温流動性が非常に高く、-60℃ぐらいまでは問題なく使用できる。

(昔、バナナで釘が打てる状況でも、オイルは普通ですよみたいなCMありましたね)

弱点は、PAO自体は潤滑性能は無い事。これは添加剤を混ぜることでリカバーできます。

それと、シール類への攻撃性があります。(シールが縮む傾向にある)


グループ5:100%化学合成油

エステルなどが分類されるグループ。

植物油系エステルや、合成エステル・また、1~4に属さない物は全てグループ5となる。

ひまし油じゃけん!で有名なひまし油もエステル。

そういう意味ではごま油もエステル。

金属となじみがよく、潤滑作用がとても高い。

但し、植物系エステルは劣化も早い。(1000kmも乗ったらシフトタッチが非常に悪くなるなんてのはコレかもしれない)

油膜強度は非常に高いので、過酷な状況でも耐えてくれます。

添加剤との相性がある。グループ4と違い、用いる添加剤を阻害してしまう物もある。

シールへの攻撃性がある。

加水分解しやすい。


私はオイル屋ではないし、オイル設計者ではないので、ざっくり説明しましたが、各々の特徴はこんな感じ。

つまり、ベースオイルの性能でそのオイルのキャラクターは決まってしまう。


空冷大排気量車輛や油冷エンジンへどのベースオイルを用いたオイルを選択するのがよいのか。

SRの様な単気筒ビックシングルへ、どのオイルを用いるか。

ショートストロークのマルチエンジンは、どんな性能を引き出させるか。

また、バイク(一部除く)の場合は、ミッションやクラッチなどの駆動系も同時に潤滑させるため、極圧性能も要求される。

そのユーザーのバイクの使い方で、選択するベースオイル自体を検討しないと

せっかく良いオイルを入れても勿体ないと言う結論になることもあります。


例えば、新聞配達のカブに、エステル系のオイルを入れたらどうでしょう?

彼らは早朝もしくは夕方にGO⇔ストップを繰り返して各家へ新聞を配達します。

低いギアで(ギアチェンジ操作をほぼせず)止まっては走り出すを繰り返します。

一日に何キロ走るかはわかりませんが、結構過酷な環境です。

そこに劣化の早いエステル系のオイルは合うとはいえるのか。

熱に強いPAOが良いのか。

はたまたコスト重視で行くのか。

私なら多分、ホンダ純正G1もしくはG2です。G1・G2はグループ2(部分合成油に属します)

何よりコストパフォーマンスが高いし、耐久性もそれなりに、それなりなので

十分に使用環境に合っていると思います。

渋滞にはまることもないでしょうから、油温もさほど上がりませんでしょうし。

油温が上がれば酸化は促進してしまうので、不純物が多いとされるグループ2はスラッジなどの発生が懸念されます。

別にグループ2のオイルが低性能と言うわけではないのです。


新聞配達の様な過酷な環境にさらされてない、街中通勤のカブならどうでしょう?

プライベートで使うなら、エンジンは気持ち的にずっとキレイでいてほしいので

グループ3のワコーズのプロステージでも良いかもしれません。

コスパはG1・G2より悪いですが、グループ3の方が不純物が少ないベースオイルです。

不純物が少ないと言う事は耐久性もグループ2よりはあると言う事になります。


つまり、自分がどの環境で、どうマシンを使っていくかで選択するべきオイルが変わってくると言う事です。

安いオイルをマメに換えれば良いなんて言葉を昔聞いたことがありますが

安いオイル=ベースオイルが安いと考えるのであれば、これは半分正解。

ですが、オイルが劣化する前に交換頻度を上げたところでエンジン性能を担保できるかと言うのは、実際にはエンジンが稼働しているときの条件でのオイルの性能が確保できていればそうかもしれませんが、渋滞にはまって水温上昇・つられて油温上昇・油圧低下の環境はやはりPAOやエステル系の方が過酷な環境での金属表面保護の性能は高く

金属接触を一度でもしてしまえばさらに油温上昇・最悪エンジンブローとなりますので

マメに換えようが換えなかろうが、ベースオイルが悪ければダメと言う答えになるでしょう。したがって半分間違いとなります。


エンジンオイルはエンジンの性能を上げるものではなく、トルクや馬力はエンジンそのものの構成で成り立ちます。

オイルと言うのは、そのエンジンを壊さないように保護してくれるケミカルなのです。


深く掘り下げようと思えばいくらでも掘り下がってしまうので、今日はこの辺で。



こういう話は、オイルメーカーの営業さんでもきちんと説明できる人が少ないのが印象。

事実私自身、オイル屋さんにこういう質問をして、明確な回答をもらえたのは、一社だけでした。

なので、私はメインにそこのメーカーさんのオイルを使用しております。