建築の軒や庇について考える ~夏至のひかりから~
5’st 一級建築士事務所(ゴダッシュエスティ)
代表 久保田恵子
今年も暑い・熱い!夏がやってきました。
空を見上げれば、ほぼ頭の真上にぎらぎらと太陽が照りつけています。
そんな日の外出には、つばのついた帽子や日傘はかかせないし、
大きな樹の下の木陰、町中の建物の陰はうれしい涼みポイントだ。
そんな日常にあたりまえに存在する陰(影)のことを改めて考えてみたいと思います。
昨月、6月22日は、2015年の『夏至』でした。
1年で一番陽が長い日で、南中時の太陽高度が一番高くなる日。
前述の頭上に太陽が照りつけている状態です。
その反対は『冬至』、1年で一番陽が短い日で、南中時の太陽高度が一番低くなる日。
なぜこんなことが起こるかというと、地球が公転と自転をしているからというのは、周知の事実ですが、その日の影をじっくり見るという機会は少ないのではないでしょうか?
下の写真は、今年の夏至の正午に撮影したものです。
太陽高度は78度くらいあり、ほぼ真上から照らされているため、
砂浜に建っている流木の影がほとんど出ていません。
これを、建築に置き換えてみます。
下の模型写真は、南側に軒が出ている建築です。
軒の影が落ちていて、窓部分に陽があたっていませんね。
暑い日も家の中に涼の陰を生み出しているのです。
そして下の写真は、12月で14時に近い時間です。
冬至近くなると、太陽の高度が低くなり、南中時でも32度くらい。
軒に遮られることなく暖かい日差しは、建物の中へ差込んできています。
太陽高度と軒の関係を図解するとこうなります。
夏の暑い日中の太陽の光は、高い高度から照りつけていて、軒に遮られています。
軒が太陽の熱をコントロールしているともいえます。
改めて影の写真と一緒にみると、興味深いですよね。
日々の暮らしの中にあたりまえに存在する太陽ですが、
太陽の動きを知り、建築に取り入れることで、夏涼しく、冬暖かい家の大きな助けとなり、心地よい暮らしをつくり出したり、省エネルギーにつながっていくのです。
最近はエコという言葉が叫ばれ、建築業界でも色々な商品が開発され、販売されています。
それに頼りきるのではなく、地球の自然と建築の関係を今一度見直してみませんか?