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GS650G 1981

2018.05.22 07:05

GS650G 1981y

(リード)

バイクデザインに大センセーションをもたらし、いまでも熱狂的なファンが少なくないカタナ。カタナと聞けばすぐにGSX1100S/750S(および後に登場した400S/250S)の勇姿が思い浮かぶはずだ。ただし、市販モデルとしてのカタナの先陣を切ったのは、この独特のカラーリングを持つ650ccモデル・GS650Gになる。


(本文)

 カタナのネーミングは冠せられていないものの、このデザインはまぎれもなくカタナの系統であり、スズキのバイクデザインに大きな影響を与えたモデルなのである。もちろん、デザインはGSX1100Sと同じくハンス・ムートの手による。

 エラの張った巨大な23リッタータンクとそれにつながるサイドカバー、黒とオレンジの大胆な塗り分けが鮮烈なシート、各部に配されたブラック、オレンジ、シルバーのカラーリングの美しさなど、インパクト満点のルックスを問うたGS650Gは、残念ながら国内ではさほどの人気を獲得できないままに終わってしまう。前年に発表されたショーモデルのカタナが強烈すぎたため、どうしても亜流のデザインに見えてしまうのは運が悪いのだが、もっと明確な人気薄の原因は、バイクのアピールポイントがマスマーケットを向いていなかったためであった。 

 GS650Gは、基本的に日本で言うところの中間排気量マシン、つまり、中型免許で乗れる最大排気量である400ccと、国内販売最大排気量の750ccの中間に当たるモデルで、上級指向が強い日本のライダーには、もとからまったく引き合いが少なかったのだ。しかし、なぜこのような人気薄の排気量を選んだのか、それは実際にこのバイクにまたがり、走り出してみればよくわかる。

 エンジンを見てもらうとおわかりいただけると思うが、GS650Gのベースになったのは、これも中間排気量マシンのGS550E。4バルブヘッドを持つTSCCエンジンではなく、過剰品質と讃えられた初代GS直系のエンジンだ。このエンジンのボアを6mmオーバーサイズ化し、673ccの排気量と65psのパワーを得ている。つまり、750に比べてコンパクトなボディながら、750cc並みに滑らかでパワフルな4気筒エンジンを搭載し、バランスがよく軽快なマシンに仕上げる、というGS550Eのコンセプトを大幅に進化させたマシンなのだ。

 現に、中間排気量というクラス分けのないヨーロッパシーンでは好評を博し、販売台数的にも文句なしの数値を達成している。パッと見には250ccクラスにも見えてしまうほどギュッと締まったボディは、乾燥重量こそ210kgと、GS550Eより大幅にアップしてしまっている。しかし、1、440mmという短いホイールベースとコンパクトなボディ、フロント19インチ/リア17インチの細身のホイール、しっとりしたフィールに追い込まれたサスペンション、強力なトリプルディスクブレーキなどで750ccをものともしないフットワークを見せてくれたし、1100S/750Sのようなハンドリングのクセもなく、街中から高速までオールラウンドに走り回ることができた。

 さらに、GS650「G」というネーミングからも明らかなように、駆動方式にはシャフトドライブを採用し、ツーリングマシンへの適性も高めている。バイク自体の出来はかなりなものだっただけに、もう少しより多くの注目を集めてもバチは当たらないはずだ。

 翌1982年には、カラーリングをやや変更するとともに、使いやすいチョークノブと燃料計を装備、よりツーリング向きにチェンジが図られた、さらに1983年には、独特なデザインを持つミニカウルを装着。このモデルでは、ブラックフィニッシュとなったエンジンや新型のキャストホイール、より疲れにくいシートやセミエアフロントフォーク、新型ブレーキマスターシリンダーなどが与えられ、完成度もデザインインパクトもかなり向上している。


GS650G 1982y

 初のマイナーチェンジモデル。基本構成やスペックに変更なく、チョークノブの操作性の向上と、メーターパネルに新たにフューエルメーターを装備している。動力性能はGSX7 50Sカタナ(1982y.2)と同等の魅力を合わせ持ちながらも、GSX1100Sに代表された外観のインパクトに押され、ややマイナーな印象を持たれてしまった。しかし、好みはともあれ、シルバーとレッド、ホイールのホワイトという鮮やかな配色は、多くのユーザーの目を引きつけるに十分なものだった。パワーユニットはTSCCではなく、2バルブながら走りは一級品。


GS650G 1983y

 ハンドルマウントのセミカウルを新たに装着。XN85と同じデザインのキャストホイールを採用している点も大きな特徴。マイナーチェンジにより、スタイルの一新を図ったGS65 0Gだったが、残念ながらこれが最終モデルということになる。セミカウルは取って付けたようなところがなくもないが、風防効果は見た目以上に高く、ミドルツアラーとしての走りにもさらに磨きがかかった印象だ。実際、コンパクトな車体に750ccクラスの出力値を得て、ヨーロッパでは非常に高い評価を受けていた。が、日本においては、シャフトドライブのスポーツ性に焦点が置かれ、評価はあまり好ましいものとはならなかった。しかし、ある意味では最も個性的な“カタナ”とは言えないだろうか。意外性はこのモデルの方が多く与えられている。