Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

東京第二陸軍造兵廠荒尾製造所 平和資料館

ほんとうに終わった??・・・戦争!

2018.05.03 01:30


「わたしが一番きれいだったとき」      作者 : 詩人・エッセイスト 茨木のりこ


 わたしが一番きれいだったとき 

街々はがらがらと崩れていって 

とんでもないところから 青空なんかが見えたりした  

わたしが一番きれいだったとき

 まわりの人達が沢山死んだ 

 工場で  海で 名もない島で

 わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった

 わたしが一番きれいだったとき 

誰もやさしい贈り物を捧げてはくれなかった 

男たちは挙手の礼しか知らなくて きれいな眼差だけを残し皆(みな)発っていった  

わたしが一番きれいだったとき 

わたしの頭はからっぽで  

わたしの心はかたくなで 手足ばかりが栗色に光った  

わたしが一番きれいだったとき 

わたしの国は戦争で負けた  そんな馬鹿なことってあるものか 

ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた

 わたしが一番きれいだったとき 

ラジオからはジャズが溢れた 禁煙を破ったときのようにくらくらしながら 

わたしは異国の甘い音楽をむさぼった

 わたしが一番きれいだったとき 

わたしはとてもふしあわせ わたしはとてもとんちんかん

 わたしはめっぽうさびしかった 

だから決めた  できれば長生きすることに

 年とってから凄く美しい絵を描いた フランスのルオー爺さんのように ね 

(茨木のり子さん 15歳から19歳に戦争経験。1926~2006・79才没)

                         荒尾市対岸の多良岳に沈む太陽(友人撮影)


これから、始まる、復興への長い道のり