「星落ちて、なお」澤田瞳子
少し前のプログ記事でご紹介した北海道の
名付け親である松浦武四郎の本「がいなもん」
に武四郎の話し相手などで何かとよく登場
するおとよちゃん(河鍋暁翠)の生涯に焦点が
あてられた本です。おとよちゃんの父親は
幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師で
日本画家の河鍋暁斎。
「がいなもん」にレギュラー出演的に出て
くるからすごく気になってきて調べたら、
明治から昭和初期の日本画家・浮世絵師の
河鍋暁翠とわかって益々興味が湧いた私。
それで探しあてた本がこちら「星落ちて、
なお」。
父親 河鍋暁斎が亡くなった直後から話が
始まる。偉大過ぎる父やその作風を存分
に受け継ぐ兄の存在にずっと葛藤を抱き
つつ、そして西洋からの影響で絵への
解釈や周りの画家たちの作風が大きく
変化していくなか、それらに惑わされず
自分自身の考えをしっかり持ち貫いて
いこうとする女性に感じました。
「がいなもん」に出てくる武四郎に
振り回されっぱなしのおとよちゃん
とはまた全然違う、サバサバして
中心にしっかり筋が通っている
強いおとよちゃんがいた。
ちなみに「がいなもん」によると
おとよちゃんの暁辰だった雅号を
暁翠がいいやんと提案したのは
松浦武四郎だったそうな。
江戸時代が終わり、開国してきっと
目まぐるしい速さで色んな価値観や
なんかが変化していくなか、世間
とは逆行しているように思えても
自分にとって真に大事なことは
何かを見失わずに流されていかない
河鍋暁翠の姿勢は今の自分を取り
巻く環境にも通じるものがあるなぁ
と思いました。
暁翠や彼女を取り巻く状況を本を
通して自分や自分の周りと重ね
合わせたりして。新しいことは
全て称賛されるべきものなのか。
古いと捉えられていることはもう
続けていくべきじゃないのか。
そうじゃないやろとか。お互いの
よいところを掛け合わせてより
良いものにしていったらいいのに
と思いつつ、でもそれって伝統
を重んじる人にとってはそのやり方
さえ流されやすい根無し草みたいに
みえるのかなとか。
この本を読んで、自分は何を軸に
してどんな考えで自分の仕事を
やっていきたいのか?を考えさせ
られる良い機会となりました。