汎用
おはようございます。
高槻市にある、民藝の器、暮らしの道具、食
に関する古書のセレクトショップ、発酵食品
中心のカフェ、テマヒマ
火曜日水曜日は定休日!
プロデューサー、バイヤーの太田 準です。
日本経済新聞で、3/26、4/2、2週に渡って、
民藝と建築という特集が掲載されていて興味
深く読みました。テマヒマ店内1番奥の障子は
河井寛次郎記念館、日本民藝館で採用されて
いる朝鮮風の切り落とし組子を参考に、また
床の朝鮮張りも河井寛次郎記念館を参考にし
てリノベーションしたということはテマヒマ
ブログでも書いてきましたが、民藝(運動)は、
単にモノだけでなく、思想も含め、暮らし全
般、ライフスタイルを提案することでもあり
、テマヒマでもお店の空間自体からお越しに
なった皆様に何かを感じて頂ければと考えて
います。特にテマヒマの物件は本当に普通の
古いお家をリノベーションしたものなので、
参考になる、取り入れられることも多いかも
しれません。
第1週目は、柳宗悦(日本民藝館本館・西館)、
河井寛次郎、濱田庄司、式場隆三郎邸などを
取り上げています。建築史の川島智生・京都
華頂大学教授によると「和風と洋風と朝鮮な
どの東洋風と、その混在が戦前に民藝運動の
同人らが手掛けた建築の特徴」としています
。蒐集も洋の東西を問わず選ばれたモノです
ので、民藝の先人達にはそれこそ「直観」力
があり、組み合わせるセンスがあったのでし
ょうね。共通する意匠も多いので既に様式化
してきる面もあるように思います。三國荘、
日本民藝館を経て建てられた式場隆三郎邸は
川島さん曰く、多様な意匠を巧みに積み上げ
て調和のとれた空間を構成する手法の頂点、
として評価していますが、現在非公開の建物
なのでいつか文化財に指定されるなどして見
れるようになるとよいですね。
民藝運動の生み出した戦前の建築に対して、
当時風靡していた、機能的・合理的な造形理念に基づくモダニズム建築とは対照的で、美学美術史の藤田治彦大阪大学名誉教授は、「
歴史的な住環境や景観といった環境との調和
を志向する建築の日本でのモデルとなった」
と指摘しています。
戦前「用の美」による空間形成に熱心だった
柳、河井、濱田たちが戦後自ら建築を手掛け
る機会は少なくなり、代わって建築家の伊東
安兵衛と宮地米三が牽引し、現在の「民芸建
築」のイメージを形成していった、のが第2
週目。敢えて民藝ではなく民芸と表記してみ
ました。商業化と大衆化が進む中で繊細さが
失われ、囲炉裏や自在鉤に象徴される和風の
古民家のイメージが固着してしまった。「当
初の精神が薄れて様式化してしまった」と
川島教授は話していて、ブームが終わると淘
汰され、次々と姿を消していった。
濱田琢司(関西学院大学教授・文化地理学)は
汎用化と捉えて、商業建築においては幅広い
層が利用し使いやすさも重要な為、当然起こ
る転換だと比較的好意的に書いてらっしゃい
ますが、民芸品がお土産物のように捉えられ
るようになってしまった同様、どこか野暮っ
い、田舎臭い、古臭いものになってしまった
面は否めないと思います。
「用の美」という言葉について、工藝風向の
高木さんによれば柳自身は使ってないのでは
?ということですが、この「用」についての
濱田琢司さんの説明が分かりやすいです。
「柳たちが唱えた用の美とは何かを使うため
の造形か゛美しいと捉えた思想だ。必ずしも
使いやすいという意味ではない」
一方、山本為三郎(三國荘の主でもある実業家)
が初代社長をつとめたリーガロイヤルホテル
内にあるリーチバーは、バーナードリーチが
創案し、建築家吉田五十八が具現化して1965
年に開業したものですが、川島教授は初期の
民藝運動が宿していたような洋風のバタ臭い
要素を、民藝建築も本来は備えていたことを
再認識させられると語っていて、民藝建築、
様式の歩み得たもう一つの道を示しているの
かもしれないと締めています。
とても卑近な話ですが、サラリーマン時代、
ヒット商品が出た時にそれをヒントに次の商品開発をすると劣化コピーになってしまうの
で、売れた理由を考えてそこから商品開発を
すべし、とよく部下の人に伝えてたのを思い
出しました。言わば、花の部分ではなく根の
部分。汎用化、様式化の中で、表面的なところだけで、根の大事なことがこぼれ落ちてし
まったのかもしれませんね。これはそれ以外
のことにもよく起こることに思いますが。。
またリーチバーに行きたくなったな。
テマヒマの古民家リノベーション空間の中に
何か民藝運動の根の部分や精神のようなものが継承されていればよいのですが。。。お越
しになった方が空間も含めて何か感じて頂ければ幸いです。
テマヒマは昨日今日は火曜日水曜日で定休日
です。明日4/6(木)11時オープンで皆様のお越
しをお待ちしております。
それでは今日も好い一日を!