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大矢英代|Hanayo Oya

最新ドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」完成、全国劇場公開!

2018.05.24 06:16

昨年から撮影を続けてきましたドキュメンタリー映画が、この度無事完成を迎えました。「標的の村」「戦場ぬ止み」「標的の島 風かたか」などの作品で知られ、沖縄の今を追い続けてきたドキュメンタリー映画監督・三上智恵さんとの共同監督作品です。

今年7月下旬、沖縄・東京などで劇場公開です!


ドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」劇場公開スケジュール


2018年7月21日(土)〜

 沖縄・桜坂劇場


2018年7月28日(土)〜 

東京・ポレポレ東中野



実は私にとって三上智恵さんは沖縄・琉球朝日放送で勤めていた時の先輩で

同じ報道フロアで私たちは2年間一緒にニュースを伝え続けてきました。

(ニュースの「二」の字もわからなかった、原稿の書き方もわからなかった新米記者の私を支えてくださった日々をまるで昨日のことのように思い出します)

  

このドキュメンタリー映画のテーマは「沖縄戦」。

なぜ戦後73年もたった今、沖縄戦なのか?

過去の過ぎ去った戦争をなぜ、伝え続けるのか?

 

誰もがそう疑問を抱くと思います。

それは私自身もずっと、それこそ8年前、沖縄戦のドキュメンタリーを作ろうと初めて沖縄の地を踏んだ学生の頃から自問し続けてきました。


でもこのドキュメンタリーを撮り続ける中で

多くの戦争体験者たちと向き合う中で

答えは明確になりました。

 

「沖縄戦の一番大事な教訓を私たちは未だに学んでいないから」

 

私たちは戦後73年の今を生きる者として

それを伝える使命があると信じこの映画を完成させました。

 

今回の映画には戦闘機や砲弾や爆撃などによる破壊や死

それら私たちが一般的に抱く「地上戦」イメージとは違う

ある意味で地上戦の本当の姿が描かれています。

   

映画に登場するのは、沖縄戦で「スパイ」「テロ」をさせられた沖縄の少年兵たち。

軍命による強制移住でマラリア地獄に閉じ込められた子どもやお年寄りたち。

そしてスパイ虐殺、同じ住民同士が互いを監視しスパイ探しをした地上戦の末路。

  

それらの悲劇を生んだ特務機関「陸軍中野学校」の秘密戦に迫り

軍隊の論理・作戦、政府の方針を数々の資料で明らかにする中で

戦後73年間語られてこなかった沖縄戦の実像を描きました。

 

私にとってはフリーランスになって初めての映画制作。大学院生時代に1年間住み込んでドキュメンタリーを撮っていた沖縄・波照間島の「戦争マラリア」を8年ぶりに取材しました。

  

1945年、波照間島では、米軍上陸も地上戦もなかったのに

人口の3分の1にあたる約500人が亡くなった。

 

私にとっては家族のように愛おしい島のじいちゃんばあちゃんたちとの再会で

「あぁ、やっぱり島は変わらないね」と言いたかった

でも

8年間で、戦争マラリアを経験した島の人たちは

多くが亡くなってしまった。

 

「証言の最後の時代」というものは以前から言われてきたけれども

2018年のいま

それが本当に本当の最後なのだと

悲しいほど思い知らされる日々になった。

  

「でも」

と私は思う。

 

命の灯火は、いずれ消える日がくる。

誰もがその生涯を終える。

  

それはつまり戦争体験者がこの世からいなくなること

それ自体が「問題」じゃないということだ。

 

「問題」は今を生きる私たち自身にある。

沖縄という凄惨な地上戦を経験した地の教訓を

その地獄を生き抜いた人々の知恵を

きちんと学んでこなかった私たち自身だ。


それは31歳、無論「戦争を知らない世代」の私自身への自戒でもある。

  

過去を学ばないから

またあの頃と同じ過ちを犯し

また同じ論理に絡め取られて

また同じ戦争への道をまんまと歩んでしまう。


なんとなく周囲に同調しながら

戦争の片棒をあれよあれよと担いでしまう。


戦争を引き起こす為政者の責任はもちろんだが

いつの時代も

それを支えてしまう市民の責任は非常に重い。

市民の情報源となる報道の責任はそれ以上に重い。

 

だからこそ、私はジャーナリストの一人として

報道の使命は過去の過ちを心に刻み

教訓を学び

それを人類の叡智として

二度と同じ過ちを繰り返さない、繰り返させないことだと信じている。

  

だからこそ

「いまさらなんで沖縄戦の映画なの?」と思う多くの人々にこそ

この映画を観て頂きたいのです。

沖縄戦は昔話じゃないことを。

沖縄戦を知れば知るほど、私たちが生きている「今」という時代が浮き彫りになってくることを。

  

私たちがこのドキュメンタリー映画を作れるのは

私たちと同じく、沖縄を思い

また私たちの思いに共感し

応援し支えてくださるみなさんひとりひとりのお陰です。


劇場公開に向けてイベントも続々開催していきます。

引き続き、宜しくお願い致します。

  

この映画を「一緒にやろう」と声をかけてくださった三上智恵さん

志を共にし一緒に作り上げてくださったスタッフ、プロデューサーのみなさん

そして苦しい話、思い出したくない壮絶な体験を

カメラの前で語ってくれた約30人の 私たちの愛する沖縄のおじいさんおばあさんたち

命の灯火の最後に、私たちへバトンを手渡してくれた戦争体験者たち

全員に 心からの感謝と敬意を込めて。

 

大矢英代