外観/街へのメッセージ
北川裕記建築設計 一級建築士事務所
代表 北川裕記
私たちは実際にそのなかに入って内部空間を体験するより、はるかに多くの建築物の外観を見ながら日々を過ごしています。
また、外国のカリカチュアでしばしば建築物のファサードが人の顔にたとえられて描かれることがあるように、建築物の外観は、まわりに向かってメッセージを発しているのだと捉えることもできます。
自分の外見にまったくこだわっていない(様に見える)人もいるのと同様、どう見えるかまるで意識していない建物もあるようです。
ところで、建築物の外観の印象を決める要素には、形や仕上げ材料等いろいろありますが、窓(開口部)の占める割合はかなり大きいのではないでしょうか?
私は建築物、これまでその多くは住宅でしたが、その外観を設計する際には、外からの視線に対して必要なプライバシーを確保した上で、例えば窓からもれる光を通して、内側にいる人の気配を伝え、そこで暮らしが営まれているんだというメッセージを届けられないかな、といつも考えてきました。
この建築はどんな風に街と関わろうとしているのかな。街にどんなメッセージを伝えようとしているんだろう。これからは、そんなことを感じとる気持ちも持ちながら、建築を眺めてみてはいかがでしょうか。
日中は道路からの視線を遮るよう設けられた2階の高窓とスリット窓。夜になればLDKの明かりがもれてきます。
(写真:平井広行)
2階手前角は、店舗吹抜け上部の窓。間接照明の灯りが、道行く人に控えめに店舗の存在をアピールします。
(写真:平井広行)
ガレージ奥の開口からは、LDKに囲まれた中庭の光がもれてきて、内側の生活の気配を街の人々に伝えます。
(写真:喜多章)
角地に建つ住宅。視線が遠くまで抜ける2階の交差点寄りに大きな窓を設けました。日が暮れ始めた時間の表情です。
(写真:平井広行)