普通の良さ
2013.09.10 00:13
栗原正明建築設計室一級建築士事務所
代表 栗原 正明
最近のテレビや雑誌で見掛ける「こだわり」と言う言葉は、大抵良い意味で使われているようです。
建築家が建物を設計する時にこだわると言えば、妥協せず良いものを追求すると言うような事になるでしょうか。
でも私はどうしても、この言葉を好きになれません。
こだわると言うのはさしさわる、或いは拘泥すると言う事ですから、王様や貴族が贅を尽くして別荘を建てるような場合ででもない限り、そんな事をしないと良いものができないと言うのでは困るのです。
良い建物を建てる為には、当然それに見合う努力や熱意が必要ですが、私達が日常的に使い、暮らすような建物を設計する時には、こだわりの無い、素直な気持ちと考えを持って仕事を進め、出来上がる建物は、何か特別なものではなく、普通に良いものであって欲しいと思います。
残念ながら、現実にはそれがなかなか難しく、今まで充分に思いを実現できたとは言えないのですが、理想的な姿を他に探すとすると、かつて日本中に有った民家がそれに近いのではないかと思っています。
民家そのものを今新しく建てる事は不可能でしょうが、何かそれに近い事はできるのではないかと、希望を持ち続けて仕事をしています。
三渓園に移築された旧矢箆原(やないはら)家住宅